2019.11.12 | コラム

痔に悩む人に知ってほしい7つの習慣

普段の生活の見直しが、痔の悪化を遠ざけます
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成人の半数以上が痔(じ)を患っているといわれています。痔の中でも「いぼ痔(痔核)」、「切れ痔(裂孔)」、「あな痔(痔瘻)」の3つがよくあるタイプで、痔の三大疾患ともいわれます。いずれのタイプも排便時の癖や生活スタイルから引き起こされることが多いため、これらを見直すことが治療の第一歩となります。 本コラムでは、日頃痔の患者さんに伝えている、日常生活で気をつけたい習慣について説明します。

◆ 痔の症状を改善するための7つの習慣

痔の治療法には、塗り薬や手術などさまざまあります。いぼ痔の人はとくに、手術で切り取らなければ治らないのではないかと心配に思うかもしれません。しかし、痔の治療で手術が必要となるのはごく限られた人のみで、普段の生活習慣を変えるだけで症状が改善することは十分あります。逆に、お尻にあまり良くない生活習慣が続くと、いったん症状がおさまったとしても再び悪化してしまうので注意が必要です。

 

では、痔で困っている人に取り入れて欲しい7つの習慣を以下にあげます。

 

  • 排便に関して特に気をつけること
    • 習慣1:便秘や下痢になりにくい生活をする
    • 習慣2:トイレでいきむのは3分以内にする
    • 習慣3:お尻の清潔を保つ
  • その他の生活習慣で気をつけること
    • 習慣4:身体の疲れや精神的なストレスをできるだけ取り除く
    • 習慣5:長時間座らない
    • 習慣6:身体を冷やさない
    • 習慣7:飲酒を控える

 

ここではわかりやすくするために、排便とそれ以外の生活習慣に大別しています。それぞれについて気をつけて欲しいポイントを中心に説明します。

 

◆ 排便に関して特に気をつけること

痔を悪化させないために、ぜひとも見直していきたいのが排便に関する習慣です。特に、便秘や下痢にならないようにすることが重要です。

 

習慣1:便秘や下痢になりにくい生活をする

便秘や下痢が日常的に起こると、肛門に強い負荷がかかるため、痔になりやすく悪化しやすい環境が作られます。後述する他の生活習慣をいくら改善しても、便秘や下痢が頻繁にある状態で痔を良くしていくのは難しいと思ってください。

腸の調子を整えるためには、規則正しい生活を心がけ、水分をしっかり摂って、食物繊維を意識的に摂り入れるのが効果的です。便秘解消法についてのより具体的な内容はこちらのコラムで詳しく説明しています。また、こちらのコラムでは過敏性腸症候群の人に対する食事の注意点について説明しています。下痢がちな人にも役に立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてみてください。

また、便秘や下痢が長引く時は、医療機関への受診をおすすめします。

 

習慣2:トイレでいきむのは3分以内にする

トイレで長時間いきみをかけ続けると、肛門に負担がかかって痔ができやすくなります。便秘がちな人はトイレで長くいきむのが癖になっていることが多いです。また、いぼ痔の人はいぼがあるせいで排便後も便がまだ残っているような感覚(残便感)を覚えやすく、必要以上にいきみがちです。目安として1回のトイレでいきむ時間は3分以内におさめ、たとえ便が全て出切らなかったとしても、いったん切り上げるようにしてみてください。

 

習慣3:お尻の清潔を保つ

肛門を紙でふくだけでは、便の汚れを落としきれないことがあります。排便後は温水洗浄器(ウォシュレット)などで肛門を洗浄して、できるだけ清潔に保ってください。ただし、長時間洗浄し続けたり、皮膚を強くこすりすぎたりすると皮膚炎を引き起こすことがあるので、やりすぎないように気をつけてください。(なお、洗浄とは別の話ですが、温水洗浄器の温水を肛門の中に注入して浣腸代わりとして排便している人は、癖になるとそれ無しでは排便できなくなるので、極力止めるようにしてください。)

 

◆ その他の生活習慣で気をつけること

排便に関する習慣に加えて、以下の習慣を取り入れることで、より痔の症状を軽くする効果が高まります。普段忘れがちな項目から重点的に取り入れていくよう心がけてみてください。

 

習慣4:身体の疲れや精神的なストレスをできるだけ取り除く

身体の疲れと精神的なストレスのどちらが溜まっても、痔の症状が悪化する可能性が高まります。精神的なストレスはそれほど感じていなくても、睡眠不足や長時間労働などの肉体的な疲労があると痔にとってよくありません。逆に身体の疲れはそれほど溜まっていなくても、新しい仕事を始めたり人間関係がうまくいかなかったりして精神的なストレスが重なる時期に、痔の出血や腫れがひどくなる人は少なからずいます。さらに、ストレスは排便にも影響を及ぼし、便秘や下痢になりやすくなるという悪循環に陥ります。

自分好みのリラックス方法などでストレスを取り除くことを心がけ、痔の症状が思わしくない時は睡眠をしっかりとり、身体を休めることをおすすめします。

 

習慣5:長時間座らない

長時間座り続けると、肛門周りの血行が悪くなって痔が悪化しがちです。報告によりますと、座り仕事の人や重いものを持つ仕事の人はいぼ痔になりやすかったとのことです。また、旅行で長時間座って移動するなどでも痔が悪化することはあります。座りっぱなしにならないように定期的(できれば1時間ごと)に立ち上がって歩き回るなど、短くてもいいので身体を動かす時間をとることが大事です。

 

習慣6:身体を冷やさない

身体の冷えも痔にとってはよくありません。これも長時間座ることと同じで、肛門周りの血行が悪くなるため痔の悪化につながります。冬に防寒対策をとるのはもちろんですが、意外に見落としがちなのが夏場の冷房による身体の冷えです。足元や腰回りが冷えないように掛物をかけたり靴下を履いたりして対策を行うようにしてください。また、毎日入浴して、お尻を清潔に保つと同時にお湯に浸かって身体を温めることもおすすめです。

 

習慣7:飲酒を控える

お酒には炎症を引き起こす成分が含まれており、人によっては飲酒が痔を悪化させていることがあります。さらに、お酒を飲むと下痢をしやすくなったり、睡眠が浅くなって生活リズムも乱れやすくなったりするため、知らず知らずお尻に負担がかかっています。痔の中でも「あな痔(痔瘻)」は、下痢しがちな人に起こりやすいことがわかっていますので、特に注意が必要です(痔瘻の原因についてはこちらのコラムを参考にしてください)。お尻の症状が気になる時は、できるだけ飲酒を控えるようにしてください。

 

◆ まとめ

本コラムでは、痔の症状で困っている人が自分でできる対策として、7つの習慣を紹介しました。

生活習慣の改善は痔の治療の基本ですので、症状が軽いうちからぜひ取り組んでみてください。本コラムを参考に、痔に悩む人が少しでも楽になることを願っています。

 

執筆者

池田 飛鳥

参考文献

・日本大腸肛門病学会編:肛門疾患(痔核・痔痩・裂肛)診療ガイドライン 2014年版 南江堂

・肛門疾患診療のすべて:臨床外科 vol.63 No.11, 2008 医学書院

・佐原力三郎:痔痩の病因,分類、外科77:644-647, 2015

・Prasad GC, et al. Studies on etiopathogenesis of hemorrhoids. Am J Proctol. 1976 Jun;27(3):33-41.

・Acheson RM. Haemorrhoids in the adult male; a small epidemiological study. Guys Hosp Rep. 1960;109:184-95.

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。