2016.03.28 | コラム

切るか、結ぶか、硬めるか?いぼ痔の治療法について解説

痔核の治療法

切るか、結ぶか、硬めるか?いぼ痔の治療法について解説の写真
1. いぼ痔の治療はどんな種類があるの?
2. 症状の重さによっていぼ痔の治療は違います

いぼ痔(痔核)にはいくつかの治療法がありますが、どのような状態にどのような治療法が使われているのでしょうか?いぼ痔の治療法について解説します。

◆いぼ痔の治療はどんな種類があるの?

いぼ痔(痔核)の治療と言うと、軟膏を塗ったり、座薬を入れたりといったことを思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、他にも手術や生活習慣の改善など様々な治療法があります。

まず、いぼ痔の治療法は大きく分けると、保存療法と手術療法になります。保存療法の中には、薬を使った治療(薬物治療)と生活習慣の指導が含まれます。以下にそれぞれについて説明していきます。

  • 生活習慣の指導
    • 生活習慣がいぼ痔の原因となることを防ぐ狙いで、長時間同じ姿勢でいること、排便時に力むことの他、体が冷えること、ストレス、疲労、飲酒などを避ける指導が行われます。食生活では、十分な水分や食物繊維が勧められます。排便に関しては、短い時間で済ませること(長い時間力むことを避ける)が勧められます。
    • 『肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)診療ガイドライン2014年版』(日本大腸肛門学会)では、「日常生活の指導は痔核の保存的治療法として有用である」と推奨されています。
  • 薬を使った治療
    • 薬を使った治療は、症状を緩和させることには役立ちますが、根治させるものではありません。
    • 使われる薬には内服薬と外用薬があります。
    • 妊婦に対しては、薬が子宮収縮を誘発して早産などにつながる危険性を考慮したうえ、治療が検討されます。

一方、手術療法には痔核結紮切除術、ゴム輪結紮療法、硬化療法などが含まれます。

これらの手術方法の選択には、症状の分類が指標とされる場合があります。

いぼ痔の分類は、以下のようにI度〜IV度に分ける方法があります。

  • I度:排便時に肛門管内で痔核は膨隆するが、脱出はしない
  • II度:排便時に肛門外に脱出するが、排便が終わると自然に還納する
  • III度:排便時に脱出し、用手的な還納が必要である
  • IV度:常に肛門外に脱出し、還納が不可能である

グレードによって推奨される手術方法が変わります。

 

◆症状の重さによっていぼ痔の治療は違います

それでは、手術方法について説明していきます。

  • 痔核結紮切除術
    • いぼ痔の根元を縛り、その上部分を切除する手術方法です。
    • III度またはIV度の内痔核(肛門の歯状線より上にいぼ痔ができた状態)、外痔核(肛門の歯状線より下にいぼ痔ができた状態)に有効であり推奨されている方法です。
  • ゴム輪結紮療法
    • いぼ痔の根元をゴム輪で縛り、いぼ痔への血流を止め壊死させることで、自然に脱落するのを待つ治療法です。「手術」という言葉のイメージとは違うかもしれませんが、外科的治療法のひとつとして捉えられています。
    • この治療法は、III度までの内痔核に有効であると言われています。
    • 特にII度の治療法としては優先することが推奨されています。
  • 硬化療法
    • 痔核に薬を注入し、いぼ痔の中に流れ込む血液量を減らすことで痔を硬くする手術方法です。硬くなった痔は、粘膜に定着することになります。
    • 用いる薬として、フェノールアーモンドオイルと硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸があります。
    • フェノールアーモンドオイルを用いる場合は、III度までの内痔核に有効であるとされています
    • 硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸を用いる場合は、II度からIV度の内痔核の脱出に有効であるとされています。
      • 副作用として、発熱、直腸潰瘍、下腹部痛などが現れることがあります。

これらの治療法以外にも、PPH(Procedure for prolapse and hemorrhoids)と呼ばれる切除術や、分離結紮法(ゴム輪結紮療法と類似した方法)などの手術法があります。

症状は治療法を選ぶための重要な判断材料ですが、術後の痛み、入院期間、社会復帰までの期間など、考えられる点はさまざまです。どの方法を選ぶかよく主治医と相談することが必要です。手術後は前述のように生活習慣にも注意しながら、回復を待ちましょう。

手術は保険診療で行うことができます。その費用は入院か日帰りか、入院日数、薬の量などでも変わってきます。手術だけで言いますと、平成28年の段階では、結紮術が1,390点、結紮切除術を含む根治療法が5,190点、硬化療法が1,380点または4,010点、PPHが11,260点です。この点数に10を掛けた値が医療費になり、その医療費に3割負担の方は0.3を、1割負担の方は0.1を掛けた値が支払う金額になります。詳しくは、通われる医療機関にお問い合わせください。

 

今回は、いぼ痔の治療法について解説してきました。手術だけではなく、保存療法が選択されることもありますし、手術の中でも症状などによって適応が変わります。よく医師と相談して、納得して医療を受けるようにしましょう。

 

参考文献:肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)診療ガイドライン2014年版、日本大腸肛門学会

注:このコラムは2016年3月28日に公開されましたが、2018年2月6日に編集部(大脇)が更新しました。

執筆者

Shuhei Fujimoto

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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