3か月の抗生物質で治らなかった化膿性汗腺炎がヒュミラ®で改善

化膿性汗腺炎は、毛穴の周りに炎症が起こる病気です。一部の人は薬でもなかなか治りません。炎症を抑える作用があるアダリムマブ(商品名ヒュミラ)によって、症状が改善する効果が得られたことが報告されました。
化膿性汗腺炎に対するアダリムマブの効果
化膿性汗腺炎は皮膚に慢性の
ここで紹介する研究では、化膿性汗腺炎に対して90日以上の抗生物質の治療を受けたにもかかわらず、十分な改善が得られなかった人が対象とされました。
対象者はランダムに2グループに分けられ、アダリムマブを使って治療するグループ、偽薬を使うグループとされました。
治療の最初の12週では毎週アダリムマブを注射し、次の24週では2週ごとにアダリムマブを注射しました。
アダリムマブは、炎症を抑えるなどの作用がある薬です。関節リウマチなどの治療では一般的に使われています。
アダリムマブで改善あり
次の結果が得られました。
12週時点で、偽薬群よりもアダリムマブ毎週使用の群のほうが臨床的応答率が
有意 に高かった。PIONEER I試験では41.8% vs 26.0%(P=0.003)、PIONEER II試験では58.9% vs 27.6%(P<0.001)だった。
アダリムマブを毎週注射したグループでは、偽薬のグループよりも多くの割合で、12週後に
副作用について次の結果がありました。
研究第1期において、深刻な有害事象(併存症の悪化を除く)は、PIONEER I試験でアダリムマブ群の患者の1.3%、偽薬群の1.3%に、PIONEER II試験ではアダリムマブ群の患者の1.8%、偽薬群の3.7%に発生した。研究第2期においては、どちらの試験でも深刻な有害事象の率は4.6%以下であり、群間の差はなかった。
深刻な副作用の可能性がある症状などが、偽薬よりも統計的に多いとは言えませんでした。
アダリムマブの出番は?
アダリムマブ(商品名:ヒュミラ®)は、日本では関節リウマチのほか、ほかの治療で効果不十分な場合に乾癬・クローン病・潰瘍性大腸炎などで使われています。化膿性汗腺炎に対しても効果があるかもしれません。
アダリムマブは、生物学的製剤と呼ばれる薬の中では比較的歴史が長く、10年以上にわたる治療の効果を調べた報告もあります。多くの使用例から、効果や副作用についての情報が積み重ねられています。
2016年9月には、既存薬のヒュミラと同等・同質とされる「バイオシミラー」の製品が米食品医薬品局(FDA)に承認されたことも話題になりました。
アダリムマブやそのバイオシミラーには、これからの医療でも重要な役割を担う期待がかかります。
執筆者
Two Phase 3 Trials of Adalimumab for Hidradenitis Suppurativa.
N Engl J Med. 2016 Aug 4.
[PMID: 27518661]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。