2016.11.01 | ニュース

3か月の抗生物質で治らなかった化膿性汗腺炎がヒュミラ®で改善

2件の臨床試験の結果

from The New England journal of medicine

3か月の抗生物質で治らなかった化膿性汗腺炎がヒュミラ®で改善の写真

化膿性汗腺炎は、毛穴の周りに炎症が起こる病気です。一部の人は薬でもなかなか治りません。炎症を抑える作用があるアダリムマブ(商品名ヒュミラ)によって、症状が改善する効果が得られたことが報告されました。

化膿性汗腺炎は皮膚に慢性の炎症を起こします。原因の一部は細菌の感染と言われています。治療には抗菌薬(抗生物質、抗生剤)も使われます。しかし、細菌だけでは完全に説明がつきません。抗生物質を使っても治らない人がいます。

ここで紹介する研究では、化膿性汗腺炎に対して90日以上の抗生物質の治療を受けたにもかかわらず、十分な改善が得られなかった人が対象とされました。

対象者はランダムに2グループに分けられ、アダリムマブを使って治療するグループ、偽薬を使うグループとされました。

治療の最初の12週では毎週アダリムマブを注射し、次の24週では2週ごとにアダリムマブを注射しました。

アダリムマブは、炎症を抑えるなどの作用がある薬です。関節リウマチなどの治療では一般的に使われています。

 

次の結果が得られました。

12週時点で、偽薬群よりもアダリムマブ毎週使用の群のほうが臨床的応答率が有意に高かった。PIONEER I試験では41.8% vs 26.0%(P=0.003)、PIONEER II試験では58.9% vs 27.6%(P<0.001)だった。

アダリムマブを毎週注射したグループでは、偽薬のグループよりも多くの割合で、12週後に症状の改善が見られました

副作用について次の結果がありました。

研究第1期において、深刻な有害事象(併存症の悪化を除く)は、PIONEER I試験でアダリムマブ群の患者の1.3%、偽薬群の1.3%に、PIONEER II試験ではアダリムマブ群の患者の1.8%、偽薬群の3.7%に発生した。研究第2期においては、どちらの試験でも深刻な有害事象の率は4.6%以下であり、群間の差はなかった。

深刻な副作用の可能性がある症状などが、偽薬よりも統計的に多いとは言えませんでした。

 

アダリムマブ(商品名:ヒュミラ®)は、日本では関節リウマチのほか、ほかの治療で効果不十分な場合に乾癬・クローン病・潰瘍性大腸炎などで使われています。化膿性汗腺炎に対しても効果があるかもしれません。

アダリムマブは、生物学的製剤と呼ばれる薬の中では比較的歴史が長く、10年以上にわたる治療の効果を調べた報告もあります。多くの使用例から、効果や副作用についての情報が積み重ねられています。

2016年9月には、既存薬のヒュミラと同等・同質とされる「バイオシミラー」の製品が米食品医薬品局(FDA)に承認されたことも話題になりました。

アダリムマブやそのバイオシミラーには、これからの医療でも重要な役割を担う期待がかかります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Two Phase 3 Trials of Adalimumab for Hidradenitis Suppurativa.

N Engl J Med. 2016 Aug 4.

[PMID: 27518661]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る