2015.06.10 | ニュース

糖尿病に乾癬が合併すると血管病変のリスクが上がる

アメリカ1万2千人の糖尿病患者を調査

from Journal of the American Academy of Dermatology

糖尿病に乾癬が合併すると血管病変のリスクが上がるの写真

乾癬とは皮膚が慢性の炎症を起こし、赤く「がさがさ」した発疹ができる病気です。全身の炎症にも関係し、その炎症によりメタボリックシンドロームや心血管系の病気を引き起こすと言われています。実際に、乾癬がある人は糖尿病のリスクが高いことが知られています。ここで紹介する論文は、乾癬が糖尿病の症状をどのように変えるのかということに注目し、乾癬がある糖尿病患者には血管の病気が多かったと報告しています。

◆糖尿病患者に乾癬がある場合とない場合を比較

この論文では、糖尿病患者を乾癬の有無で2グループに分けて、小血管病変(毛細血管など非常に細かい血管の異常)と大血管病変(比較的大きい血管の異常)のリスクをそれぞれ比較しています。具体的には2000年〜2006年にかけて集められたMarketScan databasesという大規模研究のデータを利用し、6,164人の乾癬ありの糖尿病患者と、同じ6,164人の乾癬なしの糖尿病患者で比較をしています。年齢、性別、糖尿病の症状について、2グループ間では差がないように設定されています。

 

◆乾癬があるほうがリスク増

血管病変のリスクについて比較を行ったところ、乾癬のある糖尿病患者では小血管病変(ハザード比1.14、p < 0.001)、大血管病変(ハザード比1.13、p < 0.001)ともに乾癬のない糖尿病患者に比べてリスクが上がるという結果が得られました。

この研究を元にすると、乾癬が糖尿病に合併すると、小血管病変、大血管病変ともにリスクが上がるということになります。また、乾癬の重症度で軽症群(6,164人のうち73%)、中等症から重症群(27%)にわけて解析も行っていますが、重症度が上がると血管病変のリスクも上がるという結果は得られませんでした。

 

もしこの結果がいつでも当てはまるなら、糖尿病に乾癬が合併している患者では、乾癬のない糖尿病患者よりも慎重に心血管系病変のリスクを評価することが必要かもしれません。

執筆者

野田 真史

参考文献


Psoriasis and risk of diabetes-associated microvascular and macrovascular complications.


J Am Acad Dermatol. 2015 Jun

[PMID: 25791800]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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