ぽんぺびょう
ポンペ病
ポンペ病は筋肉を中心に症状が見られる遺伝性の病気。酵素(α-グルコシダーゼ)の問題によって、筋肉に糖が過剰に蓄積することで起こる
最終更新: 2019.01.29

ポンペ病の基礎知識

POINT ポンペ病とは

酸性α-グルコシダーゼ(acid α-glucosidase:GAA)という酵素は体内で、ブドウ糖の集合体であるグリコーゲンなど糖分を分解する役割を持っています。 ポンペ病は遺伝的にGAAの働きが弱いため、分解できなかったグリコーゲンが主に筋肉に溜まる病気です。生後1年以内の赤ちゃんが発症した場合には症状が急速に進行し重症になりやすいですが、それ以降に発症した場合にははじめの症状が比較的軽いことが多いです。 筋肉に力が入りにくいなどのポンペ病を疑う症状が見られた人は、小児科あるいは神経内科を受診して検査をしてもらってください。また、ポンペ病の症状によって生活に支障が出ている人も、酵素を補充する治療や症状を和らげる治療を行うことで改善が期待できます。

ポンペ病について

  • 細胞中にあるライソゾームという器官に含まれる酵素に問題がある病気をライソゾーム病と総称し、ポンペ病はその一種である
  • グリコーゲンを分解してブドウ糖グルコース)にする酵素である酸性α-グルコシダーゼ(acid α-glucosidase:GAA)の働きが悪いため、分解できなかったグリコーゲンが筋肉に溜まる病気
    • そのため筋肉に問題が起こりやすい
    • 酵素の働きが全くない場合や酵素の働きが弱い場合など、その程度によって出現する症状の程度が変わってくる
  • 遺伝する病気である
    • 常染色体劣性遺伝という遺伝形式をとる
    • 常染色体劣性遺伝では、2本ある遺伝子の両方に異常が見られた場合に発症するが、遺伝子の片方だけが異常である場合には発症しない
  • 症状が現れる時期によって「乳児型」「小児型」「成人型」に分けられる
    • 乳児型
      • 酵素の働きがない場合に多い
      • 生後数ヶ月から1歳までの間に発症する
      • 次のような症状が見られることで気づかれることが多い
        • 筋緊張低下(フロッピーインファント)
        • 成長・運動発達の遅れ
        • 心臓の拡大
        • 不整脈
        • 呼吸障害
      • 進行が早く、治療を早く開始しないと、多くは1歳までに重症な心不全呼吸不全で亡くなってしまう
    • 小児型、成人型(合わせて遅発型ともいう)
      • 酵素の働きが少ないが残っている場合に多い
      • 小児型は1歳くらいの乳幼児に発症し、成人型は10-60歳代までと発症時期に幅がある
      • 次のような症状が見られることで気づかれることが多い
        • 近位筋(体の中心に近い筋肉)の筋力低下
        • 背骨が曲がる・腰が痛い
        • 早朝の頭痛
        • 運動発達の遅れ
        • 歩きにくさ(歩行障害)
        • 疲れやすさ(易疲労感)
      • 進行は比較的ゆっくりで、段々と筋肉が動かしにくくなったり呼吸しづらくなったりしてくる
      • 心臓に重度の問題が起こることは少ないが、心臓肥大が見られることがある
  • 患者数は少なく、日本においては数百人と推定されている
  • 特に自覚症状がない人が、血液検査でクレアチニンキナーゼ(CK)が高値であることをきっかけに見つかることもある
  • 発症前診断・早期治療介入を実現するには、新生児マススクリーニングに乳児型ポンペ病を組み入れる必要がある

ポンペ病の症状

  • 発症した時期によって見られやすい症状が異なる
    • 乳児型でよく見られる症状
      • 元気がない
      • 浮腫む(むくむ)
      • 息切れ(呼吸困難感)がする
      • 体重が増えない
      • 哺乳がうまくできない
      • 成長が遅い(寝返り、お座り、はいはい、つかまり立ちなどがなかなかできるようにならない)
      • 風邪を引きやすい
      • 舌が大きい など
    • 遅発型(小児型、成人型)でよく見られる症状
      • 疲れやすい
      • 力が入りにくい
      • 歩きにくい
      • 立ち上がるときに苦労する
        • まず床に膝をつき、おしりを上げてから膝に手を当てて立ち上がる特徴的な仕草(Gower's徴候)が見られることがある
        • 下半身の近位筋が低下する人に見られることが多く、デュシェンヌ型筋ジストロフィーが有名である
      • 風邪を引きやすい
      • 息切れ(呼吸困難感)がする
      • 頭が痛い(特に早朝)
      • 眠気を感じやすい
      • 運動が苦手である など
  • 特に遅発型の場合には、症状が軽く他の疾患と区別が難しい
    • 気になる自覚症状がある場合や似たような症状を持つ家族がいる場合には、医療者に伝えることが望ましい

ポンペ病の検査・診断

  • 症状からポンペ病が疑われた人はさまざまな検査を受けることになる
  • ポンペ病が疑われた場合には、乳児型と遅発型ではじめに行われる検査が少し異なる
    • 乳児型でまず最初に行われることの多い検査
      • ろ紙血を用いたスクリーニング検査
      • 血液検査(以下の検査項目が高値だと疑わしくなる)
        • クレアチニンキナーゼ(CK)
        • 肝逸脱酵素(AST、ALT)
        • BNP
      • 胸部X線検査レントゲン写真)
      • 心臓超音波エコー)検査
      • 心電図検査
    • 遅発型ではじめに行われることの多い検査
      • ろ紙血を用いたスクリーニング検査
      • 血液検査(以下の検査項目が高値だと疑わしくなる)
        • クレアチニンキナーゼ(CK)
        • 肝逸脱酵素(AST、ALT)
      • 呼吸機能検査スパイロメトリー
      • 筋電図検査
      • CT検査
    • 乳児型、遅発型のいずれでも確定診断のために行われる検査
      • 酸性α-グルコシダーゼの酵素活性測定
        • リンパ球培養線維芽細胞または凍結筋組織を使用する
      • 遺伝子検査
      • 生検
      • 尿検査 など
  • 特に遅発型では症状が似ている病気が多いため、問診や身体診察を踏まえて慎重に診断する必要がある

ポンペ病の治療法

  • 特定疾患治療研究助成制度による医療費の助成が受けられる
  • ポンペ病の治療には大きく2つの方法がある
    • 酵素を補充する(酵素補充療法)
      • α-グルコシダーゼ製剤を2週間に1度点滴投与する
      • 特に乳児型では酵素補充によって生存率の著しい改善が見込めるので、疑わしい症状がある場合には、早めに検査を受けることが重要である
      • 小児型や成人型でも、状況によって有効であると判断された場合には治療を受ける
    • 症状を和らげる(合併症の管理、疾患マネージメント)
      • 呼吸のサポート
        • 呼吸理学療法
        • 非侵襲的陽圧換気(NIPPV)
        • 排痰援助
      • 心臓のサポート
        • 心保護療法(利尿薬など)
        • 不整脈の治療
      • 食事療法(高タンパク食など)
      • 筋肉や骨格のサポート
        • 関節拘縮予防
        • 理学療法 など