かんぞうがん
肝臓がん
肝臓にできた悪性腫瘍のこと
1人の医師がチェック 122回の改訂 最終更新: 2025.06.25

肝臓がん(肝細胞がん)のカテーテル治療:肝動脈化学塞栓療法(TACE)

肝動脈化学塞栓療法(TACE(テイス))は肝臓の血管に抗がん剤を流し込んだうえで詰め物をして、がんに流れる血流を止める治療方法です。肝臓がんに栄養を運ぶ血流を遮断する効果と抗がん剤の効果が期待できます。

1. TACE(テイス)が向いている人

肝動脈化学塞栓療法TACE(テイス)

根治(すべてのがんを取り除くこと)の可能性が高いのは、肝臓がんを切除する手術や、がんの部分を焼き切る焼灼療法です。肝臓がんの個数が多かったりして、手術や焼灼療法が難しい人にはTACEが選択されます。

肝臓がんの治療では肝臓の機能が重要になります。肝臓の機能は肝障害度やChild-Pugh分類で判断されます。

肝臓の機能を評価して肝障害度(またはChild-Pugh分類)がA、BであればTACEが選択できます。肝臓の機能が肝障害度(またはChild-Pugh分類)でCの場合は原則としてTACEで治療ができません。治療によって肝臓の機能が落ちてしまい命に危険が及ぶこともあるからです。

治療によって肝障害度(またはChild-Pugh分類)が改善した場合や、肝障害度(またはChild-Pugh分類)がBに近い場合はTACEが考慮されます。例外的にTACEを選択する場合は、想定される治療による利益が不利益を上回る場合です。医師と利益、不利益についてしっかりと相談しておくことが大事です。

参考文献:日本肝臓学会, 肝癌診療ガイドライン 2021年版

2. TACEができる条件

TACEの治療ができるのは原則的に以下の条件をすべて満たす場合です。

  • 肝障害度(Child-Pugh分類)がAかB 
  • がんの数が3個以内であれば3cmを超えたもの 
  • がんの数が4個以上であれば大きさは問わない

TACEの位置付けは手術やラジオ波焼灼療法(RFA)での効果が得られにくいと考えられる人が対象になります。ただし、この条件は絶対的なものではないので例外もあります。

また、上の条件に当てはまっていても、門脈の本幹が閉塞している場合はTACEが適していません。門脈は腸で吸収した栄養を含む血液を肝臓に運ぶ血管です。肝臓は門脈と肝動脈から栄養を受けています。このためにTACEで肝動脈を閉塞しても肝臓は門脈から栄養が受けられるので組織が栄養不足になることはありません。しかし、門脈の一番太い部分(本幹)が閉塞しているにも関わらず肝動脈を閉塞してしまうと、肝臓の正常な組織に栄養が行かずに組織が栄養不足に陥るので危険です。

転移がある場合はTACEはしない

原則として、肝臓の外に転移をしている場合はTACEの適応とはならないことが多いです。しかし、肝臓の外に転移があっても肝臓の病変が大きくなりすぎると破裂の危険性などが高まります。この場合は肝臓のがんを小さくすることなどを目的にしてTACEも選択肢にあがります。

3. TACEと手術はどちらがいいか

TACEと手術では対象になる患者さんが異なりますので、どちらがいいとはなかなか言えません。つまり、患者さんの状態に応じて、手術が適していると考えられたりTACEが適していると判断されたりします。

手術が適している場面

手術が適している人は以下のすべてに当てはまる人です。

  • 肝障害度(Child-Pugh分類):A(Bの一部)
  • 肝臓にあるがんが3個以内

手術の優れている点は、がんが一つであれば、大きなものに対しても効果が期待できるところです。焼灼療法やTACEでは、病変が大きくなると焼灼が不十分になったり、抗がん剤がすみずみまで行き届かなかったりして、その治療効果が下がると考えられます。手術ではがんの周りの正常な部分と合わせて広く切除することができるので、腫瘍が大きくても高い治療効果が期待できます。

正常な部分をがんとともに切り取るのにはもう一つの狙いがあります。肝臓がんは大きくなると血管の中に入り込み、目に見えないような小さな転移を肝臓の中で作ります。がんが大きくなればなるほどその危険性は高まります。手術では目で確認できるがんを取り除くとともに、その周りの正常にみえるけれども目に見えない転移が起きている可能性がある部分も含めて一緒に取り除くことができます。つまり、一見正常な組織の中に小さな転移が隠れていたとしても取り除けることになります。これは焼灼療法やTACEではできないことです。

TACEが適している場面

では、手術よりTACEが適しているのはどういう状態かを考えてみます。

まず、がんが多発している場合です。一般的にはがんの個数が4個以上の場合には手術ではなくTACEが選ばれることが多いです。がんが多発している時は、肝臓の他の部分もがんができやすい状態であると考えます。つまり、手術で今確認できるがんを取り除いても、また他の場所にがんができる可能性が考えられます。その状態であれば、TACEのほうが繰り返して治療が可能な点で優れていると言えます。

また、手術では肝臓を切り取るので肝臓の機能が低下します。TACEも治療後には肝臓の機能が低下することはありますが、手術に比べるとその影響は小さいです。このために、TACEでは手術に比べて少し肝臓の機能が低下している人に対しても治療が可能なことがあります。

4. TACEはどんな治療か

TACEが行われる実際の様子を解説します。病院によって経過などが異なることがあるのであくまでも一つの例として読み進めてもらえればと思います。

TACEはカテーテル治療です。カテーテルとは細い管状のものです。細い管を肝動脈に挿入して、がんに抗がん剤を効果的に流し込めるような位置を探してそこから抗がん剤を注入します。

TACEの治療前にやること

TACEの治療前日は入院することが多いです。治療して血液検査などで肝臓の機能が悪くなっていないかを確認します。食事や入浴には制限がありません。

治療当日には食事を摂らないように指示がでることが多いです。治療中に気持ちが悪くなる人もいるので、胃の中身を少なくしておいたほうが嘔吐した時に気管などに吐物が入り込むことがないと思われるためです。

治療する部屋に入室すると、心電図や脈拍を持続的にはかる機械を取りつけ、排尿のための管を挿入します。

TACEはどんな場所で行われるのか

TACEは透視室または血管造影室と呼ばれる場所で行われることが多いです。透視室もしくは血管造影室はX線を出す設備が整っています。X線は、カテーテルの位置を確認するために使うので、TACEをするときには欠かすことができません。

TACEに痛みはあるか

TACEは手術に比べると治療後の傷の痛みはわずかです。TACEでは、右足の付け根に局所麻酔をしたうえでカテーテルを入れるための太い針を刺します。局所麻酔に使う針は細いので痛みは少しです。麻酔が効いている間は痛みがほとんどありません。局所麻酔の効果が十分なことを確認してから太い針を刺します。麻酔は局所麻酔だけで行う場合と、意識がぼんやりするような麻酔薬を使うことがあります。治療中は意識があり、医師と会話することも可能なことがあります。

TACEで使うカテーテルをどうやって肝動脈へ運ぶか

TACEはカテーテルを使った治療法です。TACEで使うカテーテルは血管の中に入るほど細い管です。カテーテルをがんの近くまで運ぶことで抗がん剤を注入したり、塞栓物質(詰め物)を送りこむことができます。

カテーテルを挿入するには、X線で体の中を継続的に撮影する方法(透視)を使い、カテーテルの位置をリアルタイムで確認しながら操作します。

  1. まず、右足の付け根に局所麻酔を行います。
  2. 右足の付け根の血管に太い針を刺します。針は二重構造になっていて、中針の外に、血管の中に残る筒が被せられています。これを外筒(がいとう)といいます。
  3. 外筒を残して針を抜き、代わりに外筒に細い針金を通します。
  4. 針金は血管の中に入っていきます。針金をガイドワイヤーといいます。
  5. ガイドワイヤーに沿って太い管(シース)を挿入します。
  6. シースの中を通すことで血管の中にカテーテルなどを自由に出し入れできます。
  7. 続いてガイドワイヤーにカテーテルを被せて、ガイドワイヤーと一緒にカテーテルを送り込んで行きます。

挿入したカテーテルの先からは造影剤を注入できます。造影剤はX線で白く写ります。造影剤を注入すると血管の形がわかります。また造影剤を使うことでがんの位置を確認できます。確認には何回か造影を繰り返すこともあります。造影剤を使うと体が熱くなったりすることがあります。

TACEでは病変にできるだけ近い血管から薬を注入することで正常な組織への影響を最小限に抑えます。カテーテルからさらに細いカテーテル(マイクロカテーテル)を挿入することがあります。

TACEではどんな薬を使うか

TACEでは、抗がん剤を注入した後、塞栓物質を注入して肝動脈の血流を途絶えさせます。抗がん剤はがんを攻撃する効果とともに、がんに栄養を送り込む血管を塞ぐことによる治療効果が期待できます。

抗がん剤は、がんに長く留まるように油性の造影剤と混ぜて注入します。抗がん剤の注入が終わった後に塞栓物質を注入して治療は終了になります。

TACE後に気をつけること

TACEでは太い管を1時間から2時間ほど血管内に留置します。そのため、管を抜いた後にはしっかりと止血をする必要があります。止血は圧迫で行います。止血が十分ではないと大出血に至ることがあるので、圧迫は大事な作業です。止血が確認されたあとも、重りをのせたり、テープで押さえたりなどして圧迫を継続します。

圧迫止血が終了した後には、病棟に帰って安静を保ちます。基本的には4-6時間程度ベッド上で安静にすることが多いです。排尿に関しては、治療前に尿道に管を挿入しているので心配はいりません。足を真っ直ぐにして安静に努めることが大事です。その後、医師が止血を確認して制限がなくなります。治療が午後の場合は翌朝まで安静を継続する指示がでることもあります。

TACEにかかる時間

TACEにかかる時間は1-2時間が多いと思われます。治療時間は治療の対象になるがんの数や位置によって決まります。治療の対象になるがんが多く、離れた位置にある場合は、その分だけ治療時間が長くなります。

TACEをすると決まったら、どの程度の時間がかかるかを聞いておくとよいと思います。

5. TACEの効果

TACEの効果は多くの研究で確かめられています。

TACEと従来の治療との間で生存率を比較した研究の結果を表に示します。対象となった人は肝臓の機能がChild-Pugh分類でAまたはBの人で、手術などの治療ができないと考えられた人々です。

この研究では抗がん剤を使用しないTAE(肝動脈塞栓療法)の効果も試されています。

  TACE TAE 保存的治療
1年生存率 82% 75% 63%
2年生存率 63% 50% 27%

保存的治療には抗がん剤治療などは含まれていません。この研究以降もTACEの効果が確認されており、TACEは主に肝臓がんの数が多くて手術が難しい場合などの標準治療とみなされています。

参考文献:Lancet . 2002 May 18;359(9319):1734-9.

実際の効果

日本での治療結果は「第22回 全国原発性肝癌調査報告書」をもとに説明します。1998−2013年に診断された人の生存率は以下の通りでした。TACEは腫瘍の個数が多くても効果が期待できることが、手術や焼灼療法と異なる点と考えられています。ここで紹介する結果はTACEとTAE(肝動脈塞栓療法)とを合わせた数字になります。

腫瘍の個数 1年生存率 2年生存率 5年生存率
1個 87.3% 75.1% 44.0%
2個 86.3% 70.5% 33.3%
3個 84.9% 66.6% 26.7%
4個 85.6% 65.5% 23.6%
5個以上 69.4% 46.7% 18.0%

6. TACEで使う薬

TACEに使う薬はいくつかあります。施設によっては使用する抗がん剤が異なることがあります。ここでは代表的な薬をいくつか紹介します。

エピルビシン

エピルビシンはアントラサイクリン系と呼ばれ、もともと土壌などに含まれる微生物を由来とした抗がん性抗生物質(あるいは抗腫瘍性抗生物質、抗悪性腫瘍性抗生物質など)に分類される抗がん剤です。「抗生物質」という名前がついていますが、感染症の治療に使う抗生物質(抗菌薬)とは違う薬です。エピルビシンは腫瘍細胞のDNAと結合し核酸(DNA、RNA)の合成を抑制することで抗腫瘍効果をあらわします。

もともと肝臓がん(肝細胞がん)に対して承認されていた抗がん剤ですが、2013年に従来の肝臓がんの用法・用量に加え、TACE(肝動脈化学塞栓療法)の用法・用量が追加で承認されました。肝臓がん以外では、乳がん(CEF療法など)、造血器腫瘍、膀胱がんの膀胱内注入療法などで使われることがあります。

注意すべき副作用の中でも特に心機能障害には注意が必要です。またTACE実施の際、エピルビシンを投与時にショック、血圧低下、徐脈などの症状があらわれる可能性もあり、投与中や投与直後は特に注意を必要とします。他に消化器症状、皮膚症状、肝機能障害などにも注意は必要です。

またTACEではエピルビシンの乳濁液にヨード化合物(ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル)を含むため持病に甲状腺疾患があったりヨード系の薬剤に対して過敏症がある場合には医師への事前申告がとても大切です。

ドキソルビシン

抗がん剤には土壌などに含まれる微生物を由来とした製剤があります。生物由来の抗がん剤を抗がん性抗生物質(あるいは抗腫瘍性抗生物質、抗悪性腫瘍性抗生物質など)と呼び、がん治療における選択肢の一つになっています。抗生物質と言っても感染症の治療に使う抗生物質(抗菌薬)とは異なる薬剤です。

ドキソルビシンはアントラサイクリン系という抗がん性抗生物質に分類され、細胞増殖に必要なDNAやRNAの生合成を抑えることで抗腫瘍効果をあらわします。

ドキソルビシンは肝臓がん(肝細胞がん)のTACE(肝動脈化学塞栓療法)の選択肢となる他、膀胱がんのM-VAC療法、乳がんへのAC療法や造血器腫瘍(非ホジキンリンパ腫におけるR-CHOP療法など)などのがんのレジメンで使われることもあります。

注意すべき副作用として心機能障害、骨髄抑制、消化器症状、皮膚症状などがあります。心機能障害は特に注意すべき副作用の一つで、動悸や息切れなどがあらわれた場合は放置せず医師や薬剤師などへの連絡するなど適切に対処することが大切です。

またTACEにおいてはドキソルビシンとヨード化合物(ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル)を混合した液剤を用いるため、持病に甲状腺疾患があったりヨード系の薬剤に対して過敏症がある場合には医師への事前申告がとても大切です。

ミリプラチン

ミリプラチンは化学構造中にプラチナ(白金:Pt)を含むことからプラチナ製剤という種類に分類される抗がん剤です。細胞増殖に必要な遺伝情報を持つDNAに結合することでDNA複製を阻害し、がん細胞の自滅(アポトーシス)を誘導することで抗腫瘍効果をあらわします。

ミリプラチンはヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステルという物質(液剤)への親和性が高いという性質を持ち、この液剤へ懸濁して肝動脈内へ投与する抗がん剤として開発された経緯を持ちます。

肝がん(肝細胞がん)のTACE(肝動脈化学塞栓療法)では専用のヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル懸濁用液(ミリプラ®用懸濁用液)に懸濁して使用します。TACEにおいては腫瘍局所に滞留して本剤成分が徐々に放出されるため、腫瘍局所の抗腫瘍効果が高まり全身性の副作用が軽減されるメリットが考えられます。

それでも副作用には注意が必要で、腎障害(急性腎障害など)、過敏症、骨髄抑制、感染症、肝機能障害、肝・胆道障害、間質性肺炎消化器症状、循環器症状などに注意が必要です。またほとんどの症例で発熱があらわれるため、発熱予防のための解熱薬の前投与が考慮される場合があります。その他、感染予防のために抗菌薬(抗生物質)の前投与が考慮される場合もあります。

治療中に水分を摂る量が減ると腎障害の悪化などがおこる可能性があります。医師から治療中の具体的な水分摂取量が指示された場合はしっかりと守ることも大切です。

なお、TACEにおいてミリプラチンと懸濁する液剤はヨード化合物のため、持病に甲状腺疾患があったりヨード系の薬剤に対して過敏症がある場合には医師への事前申告がとても大切です。

7. TACEの合併症

TACEは手術に比べると体への負担は小さいですが、それでもいくつかの合併症には気をつけなければなりません。合併症とは、治療が上手くいってもある一定の確率で起きてしまう、治療が原因の症状や病気です。以下では合併症について解説をしていますが、かなりまれなものも含まれています。

発熱、腹痛、悪心

TACE後には多くの人が一時的に発熱します。TACEでは肝臓の血管までカテーテルを入れ、直接がんに抗がん剤を送り込み、その後血管に詰め物をして血流を止めます。血流がなくなったがん細胞には栄養が行きとどきません。栄養が得られないがん細胞は、抗がん剤の効果も相まって、死滅したりして小さくなります。一方で、がん細胞以外の細胞にもこれらの影響が及びます。このために正常な肝臓にも炎症が起きたりします。炎症が起きると発熱、腹痛、悪心(吐き気)の原因になります。

治療後数日で症状は収まることが多いですが、症状が長引く場合には他にも原因が起きている可能性があります。症状が長引く時には詳しい検査をして他に原因がないかを調べることがあります。

肝機能障害(かんきのうしょうがい)、肝不全(かんふぜん)

TACEではカテーテルを使って直接肝臓に抗がん剤を流し込み、がん細胞への血流を絶つ目的で詰め物をします。治療の影響はがん細胞以外の正常な肝臓の部分にも及びます。肝臓へのダメージが大きいと肝機能障害やまれに肝臓が機能しなくなる肝不全が起きることもあります。

肝機能障害への治療では肝臓を保護する薬などを使用します。そのまま様子を見ていると改善することが多いですが、入院期間が予定より少し長くなったりすることがあります。

胆嚢炎(たんのうえん)

TACEの後に胆嚢炎発症することがあります。胆嚢炎が起きると高い熱が出たり、右の脇腹からみぞおちにかけて痛みがでることがあります。胆嚢は肝臓の近くにある臓器です。胆嚢炎が起きる原因は、胆嚢動脈の流れが悪くなることが原因の一つとも考えられています。胆嚢炎が起きたら抗菌薬で治療します。

腎機能障害(じんきのうしょうがい)

TACEで腎機能障害が起きることがあります。腎臓は尿を作る働きがあります。腎臓の機能が大きく低下すると尿が作れなくなり体の中に毒素となる老廃物が溜まり続けていきます。この状態を「尿毒症」といいます。尿毒症になると透析治療などの治療が必要になります。

TACEでの腎機能障害では、尿毒症が起きるほど腎機能が悪くなることはほとんどありません。腎機能が低下したために薬などが使えずに治療の継続が難しくなることなどが主に問題になります。また、腎臓の機能が低下すると、足を中心とした浮腫むくみ)や腹水が悪化する原因になることがあります。

8. TACEの入院期間と費用

TACEの入院の様子について例を示します。

まず、TACEを行う前の日に入院して治療に備えます。食事や入浴などに制限はないことが多いです。治療日は治療後も安静にする時間が長いので、その日のうちはあまり無理はできません。

治療翌日には安静も解除されます。肝臓の機能などを確認し、肝臓の機能を保護するための注射(強力ネオミノファーゲンシー®)をしたりします。日常生活には特に制限はありません。治療後に肝臓の機能が低下している場合には、再び肝臓の機能を確認します。問題がないと判断された時点で退院になります。

治療費は気にかかるものの一つだと思います。TACEにかかる費用は20万円から30万円ほどです(3割負担)。高額療養費制度や限度額適用認定証などを使うことで負担金額が下がる場合があります。病院には医療費などの相談に乗ってくれる窓口があることが多いので相談してみることをオススメします。(2024年10月)

高額療養費制度とは

高額療養費制度とは、家計に応じて医療費の自己負担額に上限を決めている制度です。

医療機関の窓口において医療費の自己負担額を一度支払ったあとに、月ごとの支払いが自己負担限度額を超えた部分について、払い戻しがあります。払い戻しを受け取るまでに数か月かかることがあります。

たとえば70歳未満で標準報酬月額が28万円から50万円の人では、1か月の自己負担限度額が80,100円+(総医療費-267,000円)×1%と定められています。それを超える医療費は払い戻しの対象になります。

この人で医療費が1,000,000円かかったとします。窓口で払う自己負担額は300,000円になります。この場合の自己負担限度額は80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円となります。

払い戻される金額は300,000-87,430=212,570円となります。所得によって自己負担最高額は35,400円から252,600円+(総医療費-842,000円)×1%まで幅があります。

高額療養費制度については下記の厚生労働省のウェブサイトも参考にしてください。

限度額適用認定証(げんどがくてきようにんていしょう)とは

あらかじめ医療費が高額になることが見込まれる場合は「限度額適用認定証」を申請し、認定証を医療機関の窓口で提示することで、自己負担分の支払い額が一定額まで軽減されます。高額療養費制度で支払われる還付金の前払いといった位置づけになります。保険外の費用(入院中の差額ベッド代や食事代など)は対象外となります。

9. TACE後の通院について

TACE後は通院で治療効果などを確かめます。

治療の約1か月後にCT検査をすることが多いと思います。CT検査でTACEの治療効果や採血で肝臓の機能の変化を確認します。状況にもよりますが、その後も2-3か月に1回通院して、CT検査や超音波検査でがんが大きくなっていないかや、新しい病変ができていないかを確認していきます。

10. 再びTACEが必要になることはあるか

TACEではがんが大きくなるのを抑えることはできますが、がんが消えてなくなる人はかなり少ないです。TACE後にも再びがんが大きくなったり、新しいがんが出てくる人がほとんどです。つまり、またがんが大きくなってきたときがTACEでの再治療を考えるときです。

そのときには、再びがんや肝臓機能の状態を確認してTACEができると判断されればTACEが予定されます。TACEが難しいと判断された場合には、他の治療法などを検討します。