皮膚がんとはどんな病気なのか?種類・症状・検査・治療・生存率など
皮膚は全身を覆っている身近な存在です。肺や胃、大腸と同じように皮膚にも
目次
1. 皮膚がん(英語名:Skin Cancer)とはどんな病気なのか
皮膚にできるしみやできもののほとんどは、特に身体に影響しない
皮膚がんについて詳しく説明する前に、まず「皮膚」の構造についてみていきます。一見すると皮膚はただの一枚の皮に見えますが、実はミルフィーユのようにいくつもの層が重なってできています。表面から近い順に、表皮、真皮、皮下組織の3つに分かれ、表皮はさらに角質層、顆粒層(かりゅうそう)、有棘層(ゆきょくそう)、基底層(きていそう)の4つに分れます。
【皮膚の構造】
- 表皮
- 角質層
- 顆粒層(かりゅうそう)
- 有棘層(ゆうきょくそう)
- 基底層(きていそう)
- 真皮
- 皮下組織
皮膚がんの多くは表皮のいずれかの層から発生します。基底層から発生するのが、基底細胞がん、有棘層から発生するのが有棘細胞がん、基底層の中にある
2. 皮膚がんの種類について
皮膚がんにはいくつか種類がありますが、「有棘細胞がん」、「基底細胞がん」、「悪性黒色腫(メラノーマ)」の3つで全体の8割程度を占めます。
基底細胞がん
基底細胞がんは表皮の最も下の層にあたる基底層や毛包(毛を作り出す器官)から発生します。高齢者に多く、顔の中心付近にできやすい特徴があります。
有棘細胞がん
有棘細胞がんは表皮の中間に位置する有棘層から発生します。顔や下腿(膝から足首の間)、首、手の甲に多く見られます。基底細胞がんと比べて転移をしやすく、完治には早期発見・早期治療が重要です。
悪性黒色腫(メラノーマ)
表皮には紫外線を浴びると活性化してメラニン色素を作り出すメラノサイトという細胞があります。悪性黒色腫はメラノサイトや母斑細胞(ほくろの細胞)ががん化したものです。悪性黒色腫は足裏や足指に多く見られます。
3. 皮膚がんの症状について
皮膚がんは種類ごとに症状にも違いが現れます。基底細胞がん、有棘細胞がん、悪性黒色腫(メラノーマ)の3つについて「皮膚の変化」と「できやすい場所」を表で比較します。
基底細胞がん | 有棘細胞がん | 悪性黒色腫 (メラノーマ) | |
できものの特徴 |
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できやすい場所 |
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基底細胞がんと有棘細胞がんは、できものの特徴に共通がありますが、できやすい部位に若干の違いがあります。基底細胞がんは顔面にできやすいのに対して、有棘細胞がんは顔面だけでなく手足や頭部にもできます。
悪性黒色腫の色合いは基底細胞がんや有棘細胞がんと異なります。黒い色をしているためほくろと区別する必要があり、ダーモスコピー検査などで見分けられます。
症状についてさらに詳しく知りたい人は「こちらのページ」を参考にしてください。
4. 皮膚がんの原因ついて
皮膚がんの直接的な原因は完全には明らかにはなっていません。しかし、基底細胞がん、有棘細胞がん、悪性黒色腫の3つはいずれも紫外線の影響で発生しやすくなると考えられています。予防策として、日焼け止めを使うことや、日中に屋外での活動時間を少なくすることが考えられます。
5. 皮膚がんの検査について
皮膚がんが疑われる人には次のようなもので詳しく調べられます。
【皮膚がんの診察や検査】
問診 - 身体診察
- ダーモスコピー検査
- 病理検査
- 画像検査
超音波検査 CT 検査MRI 検査
皮膚は胃や腸などの臓器に比べて観察しやすい器官です。身体診察やダーモスコピー検査で症状のある部分を観察することで、「皮膚がんかどうか」のあたりをつけることができます。皮膚がんが疑わしければその部位を切り取って、病理検査でさらに詳しく状態を調べます。画像検査は、主に皮膚がんと診断された人に対し「皮膚がんの
6. 皮膚がんのステージについて
皮膚がんのステージはがんの広がり方をもとにして、IからIVの4つの段階に大別されます。ステージを調べることで、適した治療法を選びやすくなります。
ステージの詳しい説明は「こちらのページ」を参考にしてください。
7. 皮膚がんの治療について
皮膚がんの治療には次のものがあります。
- 手術(外科的治療)
抗がん剤治療 放射線治療 - 緩和治療
皮膚がんの治療は基本的には手術です。がんを取り切れれば治る可能性が高くなります。手術以外の治療には抗がん剤治療や、放射線治療、緩和治療があり、状況に応じて使い分けられます。例えば、転移がある人はがんが体中に広がっている可能性が高い考えられるので、全身に効果が現れる抗がん剤治療が主体になります。また、手術に身体が耐えられない人には代わりとして、放射線治療が行われます。
それぞれの治療の詳しい説明は「こちらのページ」を参考にしてください。
8. 皮膚がんについて知っておくとよいこと
知っておくとよい皮膚がんの知識として、ここでは「早期発見」と「生存率」について説明します。なお、患者さんからよく受ける質問は「こちらのページ」にもまとめているので、合わせて参考にしてください。
皮膚がんの早期発見について
がんの早期発見・治療を目的とした取り組みに「がん検診」があります。乳がんに対する
一方で、皮膚がんにはがん検診が確立されていません。現状、症状に早く気づくことが早期発見の有力な手段になります。皮膚に心配な症状が現れた人はすみやかに医療機関で相談してください。
皮膚がんの生存率について
皮膚がんには「基底細胞がん」「有棘細胞がん」「悪性黒色腫」などいくつか種類があります。種類によって悪性度が異なるため、生存率も種類によって違いが見られます。国内でのがんの生存率などの統計データをまとめたでは、悪性黒色腫だけが個別に集計されています。
国内では有棘細胞がんと基底細胞がんの生存率については、はっきりとしとした統計データがないのが現状です。
■悪性黒色腫の生存率
悪性黒色腫のステージごとの生存率は次のようになります(全国がんセンター協議会の生存率共同調査(2022年6月閲覧)による)。
【悪性黒色腫の病気別
ステージ | 5年相対生存率(%) |
I | 89.9 |
II | 60.6 |
III | 49.1 |
IV | 0.7 |
皮膚にがんがとどまっているステージIやIIの人々の生存率は比較的高いです。一方で、皮膚以外の臓器に転移があるステージIVでは生存率が低くなります。ステージIVの生存率は厳しい数字です。しかし、このデータは2009年から2013年に診断を受けた患者さんたちの経過を集計したものなので、今の患者さんたちにそのまま当てはまるとは限りません。また近年、悪性黒色腫のステージIVに対しては有効な
参考文献
・日本皮膚科学会ガイドライン作成委員会, 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版, 日皮会誌:125(1),5-75,2015
・「あたらしい皮膚科学 第2版」(清水 宏 / 著)、中山書店、2011年
・「がん診療レジデントマニュアル 第7版」(国立がん研究センター内科レジデント / 編)、医学書院、2016年
・「全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査 kapweb(2019年4月集計)による」