特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の症状について
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は出血を止める働きを担う
1. 特発性血小板減少性紫斑病になっても症状がないことがある
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は血小板が少なくなることで出血が止まりにくくなる病気です。血小板の減少の程度は一人ひとりで異なり、その程度によって症状も異なります。
軽症の人(血小板数 2-3万/μL以上)は日常生活の中では特に症状がないことが多いです。一方で、重症の人は出血による症状(後述します)を自覚することがあるので、出血の予防のために怪我をしないように特に気をつけることが大事です。また、手術をしたときには出血が止まりにくくなることがあるので、もし手術を受けることになったときには、自分がITPと診断されていることをお医者さんに伝えるようにしてください。
2. さまざまな出血による症状
軽症の人は症状を自覚することは少ない病気ですが、病状が進行して血小板が減少すると、出血による症状がみられます。代表的なものは次の通りです。
- 皮膚のあざ(
紫斑 ) - 鼻血
- 口内の出血
血便 や黒色便血尿 - 月経の時の出血過多
- 手足の運動障害、手足の感覚の異常、呂律障害など
これらの症状はITP以外の病気でも起こる可能性があるので注意が必要です。上にあげた症状をもう少し詳しく説明します。
皮膚のあざ(紫斑)
皮膚の下で出血が起こり(内出血)、あざ(紫斑)ができることがあります。内出血や紫斑は健康な人でも身体を強くぶつけた時にできやすいです。しかし、血小板の数がとても少ない人は、ぶつけた自覚がないにも関わらず内出血や紫斑ができることがあります。
紫斑は数センチ大の大きいものもあれば、数ミリ大の赤い点状の小さいもの(点状出血といいます)までさまざまです。できてしまった紫斑はしばらく残ってしまいますが、時間が経てば自然に吸収されてなくなります。
鼻血
出血が止まりにくい状態が続くと、鼻血が出やすくなります。鼻血が出たら鼻の両側を強くつまむと早く止まると考えられています。このように止血を試みても30分以上出血が続く場合や、出血の量が多い場合は医療機関を受診してください。(鼻血の止め方はこちらのコラムを参照。)
口内の出血
硬い食べものが歯茎に当たったときや歯磨きをしたときなど、普段血が出ないような刺激でも出血することがあります。口の中の出血が目立つ人は、柔らかめの歯ブラシを使うなど、歯茎への刺激を避けるような工夫をしてください。
歯茎からの出血は歯肉炎や歯周病などでも起こります。これらの症状が続く人は、医療機関で調べてもらってください。
血便や黒色便
食べたものが通る刺激で
血尿
腎臓、膀胱などの尿の通り道(尿路)からの出血が起こると、血尿がみられます。血尿を起こす病気はITP以外にも膀胱炎、尿路結石、がんなどがあります。血尿がみられた時には、原因を詳しく調べる必要があるので、医療機関を受診してください。
月経(生理)の時の出血過多
女性特有の症状として、月経(生理)のときの出血量が増えることがあります。ITPの人は出血が止まりにくく月経量が多くなりやすいので、健康な人よりも貧血になりやすく、立ちくらみや息切れなどの症状を伴う場合があります。
また、月経時に過度の出血を起こす病気はITP以外に子宮筋腫、ポリープ、がんなどさまざまな病気があります。もし、月経量が多い状態が長く続くときは医療機関を受診し相談してください。
手足の運動障害や感覚異常、呂律障害など
まれなことですが、血小板が非常に少ない人は、通常問題とならないような頭への軽い衝撃で頭蓋内出血(頭の中の出血)を起こす可能性があります。頭蓋内出血が起こると、出血の影響が及ぶ部位が司っている機能に応じて手足の運動障害や感覚異常、呂律障害などさまざまな症状がみられます。もしもこのような症状が見られた時は緊急の検査、治療が必要なので、すぐに医療機関を受診してください。