[医師監修・作成]特発性血小板減少性紫斑病(ITP)とはどんな病気? | MEDLEY(メドレー)
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特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
出血を止めるために必要な血小板が免疫の異常によって減少し、出血しやすくなる病気
9人の医師がチェック 121回の改訂 最終更新: 2021.08.24

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)とはどんな病気?

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は出血を止める機能のある血小板という血液の成分が減少する病気です。多くの人がピロリ菌の除菌やステロイド薬での治療で改善しますが、これらの治療で治りにくい人は追加の治療を行うことがあります。このページではITPの概要として症状や原因、検査、治療について説明していきます。

1. ITPとはどんな病気?

ITPは出血をとめる働きのある血小板が減少する病気です。血小板が数が少ない状態が続くと出血しやすくなってさまざまな症状が現れます。血小板が減少するのは、血小板を標的とした「抗体」が体内でできて血小板が壊されることが原因と考えられています。しかし、なぜ抗体ができてしまうのかは明らかになっていません。

現代の医療では根本的な治療方法がなく、厚生労働省により難病に指定されていますが、適切な治療によって健康な人とほとんど変わらない生活を送ることができます。

ITPにかかる人の割合

日本で行われた研究によると、1年間で新たにITPを発症する人は、10万人に2.16人と推測されています。ITPにかかる人の年齢の中央値(小さい順に並べた時に真ん中にくる値)は女性で54歳、男性で60歳といわれています。

ITPは男性と女性のどちらに多いのか

ITPは女性に多いといわれています。日本で行われた研究では、ITPを発症した患者のうち男性が39%で女性が61%との報告もあります。

ITPは治るのか:短期間で治るものもあれば、長期間治療が必要な場合もある

ITPには急性型と慢性型の2種類があります。急性型は6か月以内に治るもの、慢性型は6か月以上症状が続くものです。急性型は子どもに多く、ウイルス感染をきっかけに発症することが多いといわれています。一方で、慢性型は大人に多く、長期にわたって治療を続けていく必要があることが多いです。

2. ITPの症状

軽症の人(血小板数が2-3万/μL以上)は症状を自覚することは少ないですが、病状が進行して血小板がさらに減少すると、下記のような出血による症状がみられます。

  • 紫斑(皮膚のあざ)
  • 鼻血
  • 口内の出血
  • 血便や黒色便
  • 血尿
  • 月経の時の出血過多
  • 手足の運動障害、手足の感覚の異常、呂律障害など

上記の症状を起こす原因はITPだけではないので、症状が続くときはお医者さんに相談してください。また、手足の運動障害、手足の感覚の異常、呂律障害などが見られた時には頭蓋内(頭の中)出血の可能性があるため、すぐに医療機関を受診してください。

ITPの症状に関してはこちらで詳しく説明しているので参考にしてください。

3. ITPの原因

ITPは、血小板を標的とする「抗体」が体内で作られてしまうことが原因だと考えられています。ITPの原因について全て明らかになっているわけではありませんが、ここでは現在知られている範囲で説明します。

血小板を破壊する抗体とは

抗体とは免疫機能に関わる物質で、身体の中に入ってきたウイルスや細菌などの外敵や異物にくっついて排除する役割があります。通常、抗体は体外から侵入したものを標的とし、自分自身を標的とすることはありません。

健康な人は自分自身の血小板を標的とする抗体は持っていませんが、ITPの人では免疫機能の異常により血小板に対する抗体が作られてしまいます。この抗体が原因で、脾臓(お腹の左側にある内臓)などで血小板が壊されるといわれています。

ピロリ菌の感染との関連

ピロリ菌は胃に感染する細菌で、慢性胃炎胃潰瘍(いかいよう)、胃がんなどの原因として有名ですが、ITPとの関連があるといわれています。しかし、具体的にピロリ菌がITPを引き起こすメカニズムに関してはわかっていないことが多いです。

4. ITPの検査

ITPが疑われたときには、次のような診察や検査が行われます。検査の目的は「出血による症状」と「症状の原因」を調べることです。

  • 問診
  • 身体診察
  • 血液検査
  • ピロリ菌の検査
  • 骨髄検査(骨の成分を調べる検査)

「出血による症状」を問診と身体診察で把握し、その「症状の原因」を血液検査などで明らかにしていきます。検査についてはこちらで詳しく説明しているので参考にしてください。

5. ITPの治療

ITPには下記のようにいくつかの治療があります。

【ITPの治療法】

  • ピロリ菌の除菌
  • ステロイド薬
  • 脾臓摘出術
  • トロンボポエチン受容体作動薬
  • ステロイド薬以外の免疫を抑える薬(リツキシマブなど)

さまざまな治療がありますが、行われる順番はだいたい決まっています。

まずピロリ菌に感染しているかどうか調べる検査を行い、感染している人は飲み薬による除菌を行います。ピロリ菌除菌が成功した人のうち60%の人で血小板の数が十分増えたとの報告があります。残り40%のピロリ菌除菌の効果が乏しい人や、ピロリ菌に感染していない人はステロイド薬による治療が行われることが多いです。ステロイド薬は効果的な薬である一方、長期的に飲むことによる副作用もあります。ステロイド薬による副作用が強く出た人やステロイド薬の治療効果が不十分な人には脾臓摘出術、トロンボポエチン受容体作動薬、リツキシマブなどを使った治療法が検討されます。

これらの治療についてはこちらのページでさらに詳しく説明しているので参考にしてください。

6. ITPの人に知っておいてほしいこと

原因が明らかになっておらず治療法が確立されていない病気は厚生労働省が指定難病に分類しています。ITPは指定難病の一つです。指定難病は国が定めた基準を満たせば医療費助成を受けることができます。

また、ITPの人の中には妊娠、出産について不安を抱えている人もいると思います。出産には出血を伴うので、止血機能がきちんと働くように計画的に治療を行い血小板数を安定させなくてはいけません。安全に妊娠、出産できるように、妊娠のタイミングなどについてお医者さんとよく相談しながら治療をすすめてください。

なお、医療費助成の具体的な申請方法や日常生活の注意点などについてはこちらで詳しく説明しています。

参考文献

Kurata Y, et al. Epidemiology of primary immune thrombocytopenia in children and adults in Japan: a population-based study and literature review. nt J Hematol. 2011 Mar;93(3):329-335. doi: 10.1007/s12185-011-0791-1.
Fujimura K, et al. Is eradication therapy useful as the first line of treatment in Helicobacter pylori-positive idiopathic thrombocytopenic purpura? Analysis of 207 eradicated chronic ITP cases in Japan. Int J Hematol. 2005 Feb;81(2):162-8. doi: 10.1532/ijh97.04146.