子供の皮膚にポツポツ出血が…難病「ITP」にロミプロスチムの効果は?

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、免疫の異常により血液の中の血小板が破壊され、血が固まりにくくなる病気です。皮膚の下の点状出血で見つかることがあります。注射剤のロミプロスチムで子供の患者を治療する研究が行われました。
◆ロミプロスチムは子供にも使えるか?
ITPの治療には、
しかし、ロミプロスチムは従来、子供に対する効果と安全性が確認できていませんでした。
ここで紹介する研究は、慢性ITPがある18歳未満の患者を対象に、ロミプロスチムの効果と安全性を調べています。
◆62人の患者で効果あり
62人の患者が対象となりました。対象者はアメリカ、カナダ、オーストラリアから集められ、血小板の数が2回の検査で平均3万/μl以下、2回とも3万5千/μl以下が参加基準とされました(健康な人では14万/μlから40万/μl)。
対象者はランダムにグループに分けられ、ロミプロスチムを注射するグループ、偽薬を注射するグループとされました。どちらも24週間の治療を受けました。
治療効果の基準は、研究期間最後の8週のうち6週以上で、直前4週間緊急治療なしで血小板5万/μl以上の状態が続いていることとしました。基準を満たす場合を「持続する血小板応答」と定義しました。
持続する血小板応答はロミプロスチム群の患者22人(52%)に見られ、対して偽薬群では2人(10%)だった(P=0.002、オッズ比9.1、95%信頼区間1.9-43.2)。
治療の結果、ロミプロスチムを使ったグループで52%に持続する血小板応答があり、効果があったと見られました。
副作用については次の結果でした。
偽薬群の19人の患者のうち1人(5%)に深刻な有害事象があり、対してロミプロスチムでは42人の患者のうち10人(24%)だった。深刻な有害事象のうち、ロミプロスチム群で42人中1人の患者(2%)に現れた頭痛と血小板増多症は治療関連と考えられた。有害事象のために治療中止した患者はいなかった。
ロミプロスチムを使ったグループの10人に、副作用の可能性がある重い症状などが出ました。しかし、治療を続けられなくなるほどの副作用はありませんでした。
研究班は「慢性ITPのある小児において、ロミプロスチムは新たな安全性の懸念を呼び起こすことなく、高率に血小板応答を引き起こした」と結論しています。
ITPは治療の効果が現れない場合もある一方で、治療法は限られています。ロミプロスチムと似た作用の薬にエルトロンボパグオラミンがありますが、どちらも最近10年以内に登場した薬で、使用経験が限られています。
8月19日にはエルトロンボパグオラミンのリスク情報として「多価陽イオン含有製品との併用に関する注意」が医薬品医療機器総合機構の「使用上の注意の改訂等に繋がりうる注目しているリスク情報」に掲載されました。
今回紹介したような研究で、対象者を慎重に選んで安全性を確かめることが、リスクを最小限に抑えつつ多くの人を救うために必要です。
執筆者
Romiplostim in children with immune thrombocytopenia: a phase 3, randomised, double-blind, placebo-controlled study.
Lancet. 2016 Jul 2.
[PMID: 27103127]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。