[医師監修・作成]特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の人に知っておいてほしいこと | MEDLEY(メドレー)
とくはつせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう(アイティーピー)
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
出血を止めるために必要な血小板が免疫の異常によって減少し、出血しやすくなる病気
9人の医師がチェック 121回の改訂 最終更新: 2021.08.24

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の人に知っておいてほしいこと

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は指定難病に該当し、医療費助成を受けられる場合があります。また、妊娠や出産、日常生活で気をつけることなど、ITPの人に知っておいてほしいことについて説明します。

1. ITPの医療費助成はあるのか

ITPは難病に指定されています。国が定める重症度分類StageII以上の人と高額な医療の継続が必要な人が医療費助成の対象となります。ここでは医療費助成の申請方法についても説明します。

指定難病とは

厚生労働省では、原因がわかっておらず治療方法が確立していない病気を難病と分類しています。難病の治療は長くなることが多いので、患者の負担を減らすために医療費助成が受けられる指定難病があります。2019年4月現在、300以上の病気が医療費助成の対象となる難病に指定されており、ITPもそのひとつです。ITPの人の中で、以下の条件に当てはまる人が医療費助成を受けることができます。

  • 重症度分類StageII以上の人
  • 重症度分類がStageII以上に該当しないが、高額な医療の継続が必要な人

重症度分類は以下のような基準で判断されます。

  臨床症状
血小板
(×万/μL)
無症状 皮下出血※1 粘膜出血※2 重症出血※3
5≦ <10 I I II IV
2≦ <5 II III IV V
<2 III IV IV V

※1 皮下出血:点状出血、紫斑
※2 粘膜出血:歯肉出血、鼻出血、月経過多、血尿など
※3 重症出血:生命を脅かす危険のある脳出血や重症の消化管出血(食べ物の通り道の出血)など

指定難病の医療費助成の申請

指定難病の医療費助成の申請はおおまかに以下の手順で行います。自治体ごとに準備書類が異なるので、詳しくは住んでいる都道府県の保健所に問い合わせてください。

  • 医療費助成に必要な以下の書類を準備します
    • 診断書(臨床調査個人票)
    • 特定医療費の支給認定申請書
    • 健康保険証の写し
    • 世帯の所得を確認できる書類(市町村民税課税証明書など)
    • 世帯全員の住民票
    • 同意書(医療保険の所得区分確認のために必要)
    • その他の必要な書類
  • 臨床調査個人票の記入を医師(※)に依頼します。臨床調査票は難病であることの証明(診断書)でもあるので医師による記入が必要になります
  • 上記の書類をそろえて、住んでいる市町村窓口に提出します。指定難病として認定されると医療受給者証が発行されます。条件が満たされないと判断された場合には不認定通知が発行されます。認定の決定は指定難病審査会で行われ、結果が出るまで3ヶ月程度かかります

※臨床個人調査票の記入は都道府県知事から認定された医師しかできません。この医師を「指定医」と呼びます。主治医が指定医であるかは主治医に直接問い合わせるか、各自治体の福祉保健局のホームページなどにある一覧でも確認できます。

2. ITPは治るのか

自分の病気が治るのかどうかが分からないと、心配は大きくなってしまいます。子どものITPでは、過半数の人が半年以内に自然に治る(急性型)といわれていますが、それ以外では治療が長く続く(慢性型)ことが多いです。2019年現在の医学の力では、ITPを根本的に治療することは難しいですが、うまく付き合っていくことは可能です。

ITPの治療では出血のリスクをできるだけ少なくし、できるだけ安全に日常生活を送れるようにします。基本的には健康な人と変わらない生活が可能ですが、状況次第では、出血の危険から激しいスポーツなどを控えた方が良いこともあります。もしも日常生活に関して疑問がある場合にはお医者さんに相談してください。

3. ITPの人の寿命とは

ITPの人や家族にとって、寿命に関する心配は少なくないかもしれません。ピロリ菌除菌やステロイド薬などの治療を適切に行えば、寿命はほぼ健常者と変わらないと考えられています。ITPが原因で寿命が短くなることは少なくなっているので、健康な人と同様、高血圧、糖尿病など生活習慣病の長期的な管理などが重要です。

4. 妊娠、出産はできるのか

ITPの女性の中には、妊娠に関する心配をしている人も多いと思います。ここでは妊娠中の治療や子どもへの影響について説明します。

妊娠、出産の時のITPの治療

ITPの人が妊娠した時の治療で大事なことは「出血を予防しながら、安全に妊娠、出産をすること」です。以下で詳しく説明します。

■安全な妊娠、出産に必要な血小板数

特に問題になるのは出産の時の出血です。出産の時は、膣を経由して出産する経膣分娩なのか、または手術で出産する帝王切開を予定するのかによって必要な血小板の数が異なります。施設によって基準が違いますが、経膣分娩であれば5万/μL以上、帝王切開であれば8万/μL以上が必要とされています。

■妊娠中に使える治療薬

いくつかある治療の中で妊娠中に安全に使うことができるのは次の薬です。

ステロイド薬にはいくつかの種類がありますが、ITPによく使われるステロイド薬の飲み薬にはプレドニゾロン、デキサメサゾンの2種類があります。

プレドニゾロンは胎盤(母親と赤ちゃんをつないでいるもの)を通過しないため、赤ちゃんに対する影響を考慮する必要なく使用することができます。

一方、デキサメサゾンはITPに限らず、早産(赤ちゃんが出産予定日より早く生まれてしまうこと)が予想される赤ちゃんの治療のために、妊婦に使われることがあります。デキサメサゾンは胎盤を通過して、赤ちゃんの肺などの臓器の成長を促す作用があります。このような理由から、早産の可能性があるのときには、デキサメサゾンを使うことで、母親のITPの治療と赤ちゃんの成長を促す治療を同時に行うことがあります。

また、ステロイド薬による治療は効果がでるまで1週間程度かかるのに対し、免疫グロブリンの効果は数日で現れます。出産予定日に合わせて急いで血小板数を上げたいときには免疫グロブリンを使います。

このように妊娠、出産の時に使うことができる治療法は妊娠していないときよりも少なくなります。安全に妊娠、出産をするためには、妊娠前から血小板数が安定していることが必要です。そのために妊娠のタイミングなどについては医師とよく相談するようにしてください。

ITPは子どもへ影響するのか

ITPの子どもに対する影響が心配な人もいるかもしれませんが、ITPは遺伝しないことが知られています。つまり自分がITPであったとしても、子どもがITPになる確率が上がることはありません。

ただし、ITPの人が妊娠したとき、赤ちゃんに短期的な影響がでることがあります。

ITPは血小板を破壊してしまう抗体が体内で作られることが原因です。この抗体は母親の胎盤を通過するので、お腹の赤ちゃんに届いて赤ちゃんの血小板が減少することがあります。ITPの妊婦の赤ちゃんに血小板数の低下が起こる頻度は10%程度とそこまで多くありませんが、生まれたら血小板の数が確認されます。(へその緒に残っている血で測ることができます。)生まれた時の血小板が少ない場合でも、数日で抗体の効果はなくなり血小板数が上昇するので長期的な問題はありません。しかし、生まれたときの血小板の数がとても低い時は、血小板を増やすために治療を行うことがあります。治療は通常のITPと同じでステロイド薬や、免疫グロブリンが使われることが多いです。

5. 日常生活での注意点

ITPであっても基本的には健康な人と変わらない生活が可能です。日常生活では「出血の原因を避けること」と「出血による症状に早く気づくこと」が大事です。また、治療としてステロイド薬を使う人や脾臓摘出術(脾臓を取る手術)を受ける人の注意点もあるので、ここでお伝えします。

出血の原因を避けること

ピロリ菌除菌やステロイド薬などの適切な治療により出血をある程度予防できるとはいえ、日常生活では出血を予防するため普段からけがをしないように気を付けたり、激しいスポーツなどを控えるなどの心がけは大事です。具体的にどのような対応をすべきかは人によって異なるので、疑問点がある時はお医者さんと相談してください。

また、日常的に使われている痛み止めなどの薬が血小板を下げる原因となることがあります。ITPをみてもらっている医師以外の診察を受けるときは、自分がITPにかかっていることを伝えて、血小板を下げてしまう可能性がある薬の処方をなるべく避けてもらいましょう。また、市販薬であっても血小板減少の原因となることあるので、飲む前にお医者さんに相談するようにしてください。

出血による症状に早く気づくこと

出血の予防も大事ですが、出血したときに早く気づくことも大切です。出血による症状には以下のようなものがあります。

  • 皮膚のあざ(紫斑)
  • 鼻血
  • 口内の出血
  • 血便や黒色便
  • 血尿
  • 月経の時の出血過多
  • 手足の運動障害、手足の感覚の異常、呂律障害など

けがなどのきっかけがないにもかかわらず上記のような症状がみられた時は、血小板数の低下が進んでいる可能性が高いので、できるだけ早く医療機関で検査を受けたほうが良いと考えられます。これらの症状の中で、手足の運動障害、手足の感覚の異常、呂律障害がみられた時は、頭蓋内出血(頭の中の出血)の可能性があります。夜間、休日関係なく、その日のうちに速やかに医療機関を受診してください。

ステロイド薬を飲んでいる人の注意点

ステロイド薬にはいろいろな副作用があり、不安に思う人もいると思いますが、自己判断でステロイド薬を中止したり、減量することは避けなければいけません。ステロイドはもともと体内の副腎という臓器で作られています。しかし、長期間ステロイド薬を内服していると薬剤からのステロイドに身体が頼ってしまい、副腎でステロイドが作られなくなります。その状態で、急に自己判断でステロイド薬を中止すると、身体に必要なステロイドが不足し、発熱、倦怠感嘔気などが出現し、さらには意識を失ったり生死に関わることもあります。

ステロイド薬内服中に体調に何らかの変化が生じた時は、自分で判断せずにお医者さんに相談するようにしてください。

脾臓摘出術を受ける人の注意点

脾臓は細菌感染に対する防御に関わっているので、脾臓を取った後は細菌による感染症にかかりやすくなってしまいます。脾臓摘出術を予定している人は手術前から肺炎球菌インフルエンザ桿菌髄膜炎菌のワクチンを接種し、感染予防を行う必要があります。ワクチンを接種する以外には、手洗い、うがいなど感染の予防を日常的に行うことが大事です。

6. ITPかもしれないと思ったら

口の中が出血しやすい、鼻血が止まりにくい、あざができやすい、血が止まりにくいなどの症状がある時は、ITPに限らず出血しやすい病気の可能性があるため医療機関を受診して調べてもらうようにしてください。

ITPを専門に扱う診療科は血液内科です。近くに血液内科がない場合は、最初にかかる診療科は内科でも構わないので、まずは身近な医療機関に相談してみてください。かかりつけ医がいる場合には、いつも診てくれている先生に相談するのが良いです。

参考

・難病情報センターホームページ「特発性血小板減少性紫斑病」(2021.8.24閲覧)