[医師監修・作成]特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の検査について | MEDLEY(メドレー)
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特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
出血を止めるために必要な血小板が免疫の異常によって減少し、出血しやすくなる病気
9人の医師がチェック 121回の改訂 最終更新: 2021.08.24

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の検査について

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の検査の目的は「出血による症状の確認」と、その「原因を明らかにすること」です。ITPの診断には、血小板減少を起こす他の病気ではないことの確認(除外診断といいます)が必要なので、さまざまな診察や検査を受けることになります。このページではITPに関連する診察や検査について詳しく説明していきます。

1. 問診

問診とは患者さんとお医者さんの対話による診察のことです。患者さんは困っている症状を伝えて、お医者さんからは症状、飲んでいる薬、今までかかったことのある病気などについて詳しい質問を受けます。次は問診でよく聞かれる質問の例です。

  • どのような症状があるのか
  • ウイルス細菌感染症にかかっていないか
  • 飲んでいる薬やサプリメントはあるか
  • 自己免疫疾患免疫機能の異常で免疫が自分自身の細胞などを攻撃してしまう病気)にかかったことはないか
  • 家族に出血の止まりにくい人はいないか

次にそれぞれの質問について詳しく説明します。

どのような症状があるのか

問診では最初に患者さんが困っている症状について聞かれます。どのような症状か、いつからその症状があるかなど詳しく伝えてください。

皮膚にあざ(紫斑)ができやすい、鼻血が止まりにくいなどの出血に関わる症状がある時は、その他にも出血に関わる症状がないかを詳しく聞かれることがあります。具体的には、口内出血がないか、血便血尿はないか、月経の時の過度の出血はないかなどです。この他にも気になる症状があれば、遠慮なくお医者さんに伝えるようにしてください。

最近ウイルスや細菌感染症にかかっていないか

ITPが疑われた人は、最近風邪をひいてないかを確認されます。またピロリ菌に関する質問もされます。これらについて詳しく説明します。

■最近風邪を引いたか

ITPは感染症がきっかけとなって起こることが知られています。このため、症状を自覚する数週間前までの間に風邪を引いたかどうかの質問を受けます。咳や喉の痛み、下痢といった症状があったかどうか思い出せる範囲で答えてください。風邪などの後にITPが起こるのは大人より子どものほうが多いので、子どもの場合は特に重要な質問です。

■ピロリ菌に感染しているか、または調べたことがあるか

大人では、ピロリ菌の感染によってITPが起こることが知られています。ピロリ菌は胃がんや胃炎の原因として耳にしたことがある人も多いかも知れません。具体的には「ピロリ菌を除菌したことがあるか」、「ピロリ菌を調べたことがあるか」や「胃炎や胃潰瘍になったことがあるか」といった質問を受けます。

飲んでいる薬やサプリメントはあるか

イブプロフェンなどの痛み止めや抗菌薬抗生物質)が原因で出血が止まりにくくなることがあります。問診では現在飲んでいる薬、サプリメントについて伝えてください。お薬手帳を使うと処方されている薬についてもらさずに伝えることができるので、受診時に持っていくとよいです。

自己免疫疾患(免疫機能の異常で免疫が自分自身の細胞などを攻撃してしまう病気)にかかったことはないか

免疫機能はウイルスや細菌などの外敵や、異物を排除する役割を担っています。免疫機能が本来の役割ではなく、自分自身を攻撃してしまう病気を自己免疫疾患といいます。出血が止まりにくくなることがある(血小板が減少する)自己免疫疾患の例として、全身性エリテマトーデスがあります。自己免疫性疾患は血小板減少の原因になるので、問診で当てはまる病気がないかが聞かれます。

家族に出血の止まりにくい人はいないか

出血が止まりにくい病気の中には血友病などの遺伝が関わる病気もあります。家族に血友病の人がいたり、家族に出血が止まりにくい人がいる時はお医者さんに伝えるようにしてください。

2. 身体診察

身体診察とはくまなく身体を調べることをいいます。具体的には次のようなことが行われます。

  • バイタルサイン(脈拍数、体温、血圧など)の確認
  • 視診
  • 触診

ここではそれぞれの診察事項について詳しく説明します。

バイタルサイン(脈拍数、体温、血圧など)の確認

身体診察ではまずバイタルサインを確認されることが多いです。バイタルサインは日本語に直訳すると「生命兆候」となります。主に次の6つを確認します。

【バイタルサイン】

  • 脈拍数
  • 呼吸数
  • 体温
  • 血圧
  • 意識状態
  • 酸素飽和度(血液中に含むことができる酸素の最大量に対して、実際に含まれている酸素の割合)

バイタルサインを確認することで身体の変化を早く見つけることができます。出血が疑われる時は特に血圧と脈拍の値が大事です。出血の量が多いと血圧低下、脈拍上昇といった変化が見られることがあります。

視診

視診とは身体の様子を見た目で判断するものです。出血による症状は見た目で判断できることが少なくありません。一方で当然のことですが、変化があっても見なければわかりません。身体のどこにあざがあるかなど、自分で気がついたことを伝えて、しっかりと観察してもらうようにしてください。

触診

触診は身体を触って異常がないかを確かめることです。触診では2種類の「あざ」を区別することができます。一般的に「あざ」といわれるものには「紫斑」と「紅斑」の2種類があります。「紫斑」は血管から血液が漏れ出て(いわゆる出血)できるのに対し、「紅斑」は血管の拡張でできるあざです。紫斑はITPなどの出血しやすい病気が原因となりますが、紅斑は感染やアレルギーなどさまざまな原因で起こります。

「あざ」の部分を指で圧迫して色が消えなければ紫斑、消えれば紅斑です。「あざ」を心配して病院を受診する人もいると思いますが、触診により原因を絞り込むことができます。

3. 血液検査

ITPが疑われる人は血液検査で以下のことを確認されます。

  • 血算(血小板の数などを測定する)
  • 血液像(顕微鏡で血液をみる)
  • 感染症の検査
  • 凝固検査(血小板以外の出血しやすい原因がないかの確認)
  • 血小板表面免疫グロブリン(血小板に対する抗体
  • その他(ビタミンなど)

それぞれの検査について詳しく説明します。

血算(血小板の数などを測定する)

血算では血小板の数に加え、ヘモグロビンの値(貧血があるかどうか)、白血球(免疫に関わる細胞)の数を機械で計測できます。血小板の数は通常は15-35万/mm3程度で、15万/mm3を下回る場合に血小板減少といいます。ITPでは、血小板の減少がみられるのみで、ヘモグロビンや白血球の値に問題がないことが特徴です。

血液像(顕微鏡で血液をみる)

血小板は減っていないにもかかわらず、血算で血小板の数が少なく出る「偽性血小板減少」という現象があります。これは血小板が集まり塊を作ること(凝集といいます)で機械が血小板の数を正しく計算できなくなるために起こります。血小板が凝集していないかを調べるために血液を顕微鏡で観察します。

感染症の検査

血液検査で全ての感染症を調べることはできませんが、HIVC型肝炎ウイルスは調べることができます。HIVやC型肝炎ウイルスの感染は非常にまれですが、血小板減少の原因となることがあるので確認します。

凝固検査(血小板の減少以外に出血しやすい原因がないかの確認)

出血による症状が見られ、ITPが疑われる人は、血小板の減少以外に出血しやすい原因がないかを調べることがあります。具体的には、血の止まりやすさの指標であるPT(プロトロンビン時間)、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)などを確認します。

血小板表面免疫グロブリン(抗体)

血小板を壊す抗体が体内で作られることで、ITPを発症するといわれています。血液検査では血小板の表面にくっついている抗体の値を測定することができます。しかし、この抗体の値が高いからといってITPと診断できるわけではありません。一方で、低いからITPではないともいいきれません。このような理由で、抗体の値はITPの診断では最重要の検査とはなっていませんが、参考として測定することがあります。

その他(ビタミンなど)

血小板の減少の原因にさまざまで、ビタミンB12や葉酸が不足している人に起こることがあります。ビタミンB12と葉酸は食べ物に含まれていて、消化管(食べ物の通り道)から吸収されます。今まで消化管の手術(胃の手術など)を受けたことがある人は手術の影響でビタミンなどの吸収が悪くなっている可能性があるのでお医者さんに伝えてください。

4. ピロリ菌の検査

ピロリ菌は胃に感染する細菌で、慢性胃炎胃潰瘍胃がんの原因として有名です。しかし、ITPとも関連していることはあまり知られていないかもしれません。ITPの人でピロリ菌に感染している場合は、除菌によって改善することがあるので、ピロリ菌に感染しているかどうかの確認はとても大事です。検査方法は下記のように複数あります。

  • 尿素呼気試験
  • 便中ピロリ菌抗原検査
  • 抗ピロリ菌抗体検査
  • 胃カメラを用いた検査

「尿素呼気試験」、「便中ピロリ菌抗原検査」、「抗ピロリ菌抗体」は身体への負担が比較的少ない検査のため、出血しやすい人でも安全に行うことができます。一方、胃カメラによる検査は出血のおそれがあるのであまり行われません。ここではよく行われる尿素呼気試験、便中ピロリ菌抗原検査、ピロリ菌に対する抗体の検査について説明します。

尿素呼気試験

検査用の薬を飲み、一定時間たってから吐き出した息を調べることでピロリ菌に感染しているかどうかがわかります。身体への負担が少なく精度も高いので行われることが多いです。

便中ピロリ菌抗原検査

便の中にピロリ菌が存在するかを調べる検査です。この検査も身体への負担が少なく、精度も高いのでよく行われます。

抗ピロリ菌抗体検査

ピロリ菌に感染すると、身体の免疫反応によりピロリ菌に対する抗体(抗ピロリ菌抗体)が作られます。この検査は血液中の抗ピロリ菌抗体を測定する検査です。

5. 骨髄検査:骨に針を指して中の成分を抜き出して調べる検査

ITPなどの病気が疑われるときに行う検査として骨髄検査があります。骨髄検査について聞いたことのない人が多いと思うので、ここで詳しく説明します。

骨髄検査の目的

骨髄検査の目的はITP以外の病気の有無を確認することです。血液の成分は骨の中の骨髄という場所で作られます。骨髄検査では、白血球、赤血球、血小板が骨髄できちんと作られているかどうかを確認することができます。血小板が十分作られているかどうかは、骨髄の中にある巨核球の数でわかります。ITPでは血小板が作られる過程には異常がないので、巨核球の減少はみられません。

骨髄検査の具体的な方法

血液が作られている腸骨(おしりの骨)または胸骨(胸の骨)の中の骨髄を、専用の針を使って取り出します。胸骨は薄く、心臓などが近くにあるので、安全のため腸骨で行われることが多いです。骨髄検査には穿刺吸引検査と生検検査の2種類があります。穿刺吸引検査は骨髄液を採取し顕微鏡で観察する検査です。生検検査は骨髄の一部を1cm程度その形を保ったまま採取する検査です。

どちらの検査も局所麻酔を使うので、痛みは最小限に抑えることができます。また、針を刺すので出血は多少ありますが大出血となることは非常にまれで、比較的安全な検査です。