2019.04.12 | コラム

鼻血はなぜ出る?どう止める?:家庭での適切な対処方法と、受診が必要なケースについて

首トントンは不要です

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ほとんどの人は一度は鼻血を出したことがあると思います。鼻血が出たら、とっさに「首の後ろを叩く」、「上を向く」、「ティッシュを詰める」といった対応をしたくなるかもしれませんが、実はこれらはあまりお勧めできません。ではどのようにすると良いのか?このコラムで鼻血が出た時の適切な対処方法を説明します。

1. 鼻血(鼻出血)はなぜ出る?

ほとんどの鼻血は鼻をほじったりして鼻の中が傷つくことが原因です。他にも、風邪をひいて鼻をかんだ拍子に鼻血が出る経験をした人も多いと思います。高血圧の影響で鼻血が出るのではないかと心配する人がいますが、今のところ鼻血と高血圧の関連ははっきりとはわかっていません。

 

【鼻出血の主な原因】

  • 鼻をほじる、さわる
  • 鼻の粘膜の荒れ
  • 鼻の粘膜の乾燥

 

鼻の入り口付近(キーゼルバッハ部位)には細かな血管がたくさん走っています。血管は粘膜表面のすぐ近くにあるので、鼻をほじると血管に傷がついて出血しやすくなります。風邪やアレルギー性鼻炎で鼻の粘膜が荒れたり、鼻の粘膜が乾燥したりすると、鼻の中を直接触らなくても出血することがあります。

 

【キーゼルバッハ部位】

子どもでは、鼻が痒くてこすったりほじったりしているうちに出血を起こすことが多いです。頻繁に鼻をいじって鼻血を繰り返す場合には、その原因としてアレルギー性鼻炎が隠れていることがあります。アレルギー性鼻炎を改善すれば鼻血の回数は減りますので、耳鼻咽喉科で相談してみてください。

一方、大人では内服薬が鼻血の原因になることがあります。不整脈、心筋梗塞、脳梗塞などの持病がある人は、抗凝固薬や抗血小板薬といったいわゆる「血液をサラサラにする薬」が処方されます。このような薬を飲んでいる人は鼻血が出やすく、また出た時に止まりにくいことがあります。後述する方法で止血をしてみて止まらない場合には、早めの受診を検討してください。

その他に、鼻血が出やすくなる病気があります。

 

  • 血友病や血小板減少症などの血液の病気
  • 肝硬変などの肝臓の病気
  • オスラー病
  • 鼻の腫瘍

 

血友病や血小板減少症は出血しやすくなる病気です。肝臓の病気がある人も、血が固まりにくくなって出血しやすくなります。これらの病気では、鼻血だけでなく、全身のあざや歯茎からの出血など他の症状も合わせて起こします。

オスラー病は血管に異常が起きる遺伝性の病気で鼻出血を繰り返します。

一部の鼻の腫瘍では、悪性か良性かに関わらず鼻出血を繰り返すことがあります。

 

ほとんどの鼻血の原因は鼻をさわることですが、なかには上記のような病気が隠れていることもあります。特にきっかけのない鼻血を繰り返す場合や、鼻血以外の出血の症状がある場合には医療機関を受診して原因を調べてもらってください。

 

2. どこから鼻血が出る?

鼻血の90%はキーゼルバッハ部位で起こります。鼻の左右を分ける板のような構造を鼻中隔と呼びますが、鼻の入り口に近い鼻中隔の部分がキーゼルバッハ部位です。ここには細い血管ががたくさん走っていて、鼻をいじった時に指が届く範囲であることから出血をよく起こします。

キーゼルバッハ部位以外では、鼻の奥の動脈から出血することがあります。動脈が切れると血が勢いよく流れ出し、出血量が多くなりやすく血が止まりにくいという特徴があります。鼻血で入院や手術が必要になるケースのほとんどは鼻の奥の動脈からの出血です。

 

3. 鼻血の適切な対応方法は?

鼻血が出た時には「上を向く」、「首の後ろをトントンと叩く」、「鼻を冷やす」などの方法を聞いたことがあるかもしれませんが、いずれも適切ではありません。

鼻血が垂れるのを避けるために上を向きたくなりますが、上を向くと血が喉に回って気持ち悪くなることがあります。また、首を叩いたり鼻を冷やしたりしても鼻血が止まりやすくなるわけではありません。

鼻血を止めるのに最も効果的なのは、ほとんどの鼻血の原因となるキーゼルバッハ部位をしっかり押さえることです。このことも踏まえて、鼻血の適切な対処方法を紹介します。

 

【鼻血の対処方法】

1. 落ち着いて椅子に座ります
2. あごを引いて少し下を向きます
3. 指で小鼻のあたりを両脇からつまんで、15-20分間押さえます
4. 喉に回った血液は飲み込まないで、口から出します

 

下を向くのは血液を飲み込まないようにするためです。横になる(寝る)のも、上を向くのと同様、喉に血液がまわるのであまり勧められません。そうはいっても子どもの場合はじっと座っているのが難しく、寝かせることがあると思います。寝かせる時は、枕や布団を重ねて頭を高くして仰向けにするか、横向きにしてください。このような姿勢をとるのは、血液を飲み込んで気持ち悪くなって嘔吐した時に、窒息するのを防ぐためです。

指で小鼻押さえる時には、鼻の中にティッシュを詰めないでください。詰め物を入れると、血が止まって抜いた時に、鼻の粘膜を傷つけて再度出血することがあります。どうしても詰めたい時には、ティッシュよりも柔らかく粘膜にやさしいコットンなどを小さくちぎって丸めて入れてください。この時、奥に入れすぎないように注意してください。

 

4. 医療機関を受診したほうが良い鼻血とは

大半の鼻血は自分で対応して止めることができますが、以下のようなケースでは医療機関を受診してください。

 

  • 鼻の圧迫(15-20分間)を2回繰り返しても出血が止まらない
  • やや下を向いた状態で鼻の穴から出るより、喉の奥に流れる血の方が多い
  • 頭や顔面を強くぶつけてから鼻血が止まらない

 

鼻の圧迫を2回繰り返しても出血が続く場合や、喉の奥に流れる血が多い場合は、キーゼルバッハ部位からの出血であっても勢いが強く止まらないか、奥の動脈からの出血が考えられます。

頭や顔面を強く打って鼻血が出た時は、顔の骨や頭蓋骨が折れるなど鼻の血管以外に傷ができている可能性があります。すぐに血が止まって見た目で鼻の変形がない場合は受診する必要はありませんが、ぶつけた後から鼻出血が止まらない場合には早めに受診をしてください。

なお、顔色や唇の色が悪くなってきたり、呼びかけへの反応が鈍い、手足が冷たい、呼吸が弱いなどの様子が見られたら、急いで医療機関に連れていってください。

 

子どもが鼻血を出した時には、驚いて落ち着かなくなってしまうことが多く、周りの大人が声かけをして安心させてあげることが大切です。一旦落ち着かせてから、出血の様子をよく観察するとともに、鼻血が出た経緯を確認して対応してあげてください。

 

5. 鼻血が止まったのにまた出てきた・・・。そんなときの注意点

せっかく鼻血が止まっても、すぐにまたポタポタと出てきてしまうことがあります。再出血を予防するために、次のことに注意してください。

 

  • 鼻をかまない
  • 鼻をいじらない
  • 長風呂を控える
  • 運動を控える
  • 飲酒を控える

 

鼻に刺激が加わると、血が固まってかさぶたになった部分がはがれて再度出血してしまいます。気になるかもしれませんが、しばらくは鼻を触らないようにしてください。再出血とはっきりした関連性はわかっていませんが、全身の血流がよくなることも避けた方が良いと考えられます。そのため、長風呂、運動、飲酒などは数日間は控えることをお勧めします。

食べ物に関しては特に避けた方が良いものはありません。チョコレートや香辛料などは鼻血が出やすくなると言われることがありますが、健康な人にはとくに関係ありません。しかし、身体が暑くなるほど香辛料を摂ることは、血流がよくなるので避けたほうがよいかもしれません。

 

今回は、鼻血の原因から対処方法、止血後の生活の注意点について説明しました。鼻血は多くの人が経験することです。さまざまな対処方法を聞いたことがあるかもしれませんが、小鼻を押さえて止血するのが最も効果的です。鼻血が出ると驚きますが、このコラムを参考に落ち着いて対処してみてください。

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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