けっせんせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう(てぃーてぃーぴー)
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
全身の細い血管に血のかたまり(血栓)ができ、さまざまな臓器の機能が低下したり、血小板が足りなくなって出血しやすくなる病気
7人の医師がチェック 123回の改訂 最終更新: 2021.11.23

血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の治療について:血漿交換療法、ステロイド薬など

血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の治療の中心は血漿交換療法です。病院によってはステロイド薬を同時に使うこともあります。血小板の輸血はTTPを悪化させる可能性があるので、血小板の輸血は基本的には行いません。

1. 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の治療の原則

TTPの治療は以下のように行っていきます。

  • 治療の中心は血漿交換療法
  • ステロイド薬を同時に使うことがある
  • 血漿交換療法やステロイド薬で改善がみられなければリツキシマブを使う
  • 血小板の輸血は原則行わない

以下で詳しく説明していきます。

2. TTPの治療の中心、血漿交換療法はどのような治療法か

血漿(けっしょう)とは血液のうち、白血球赤血球、血小板といった血球成分を除いた液体成分のことをいます。血漿(けっしょう)にはADAMTS13インヒビターなどのTTPの原因物質が含まれています。そのため、TTPの患者さんの血漿を取り除いて、健康な人の血漿と入れ替えることで、TTPの原因物質を除去することができます。この治療法を血漿交換療法と呼びます。

血漿交換療法では通常の点滴で用いられるものより太い管を使う必要があります。首や足の付け根などにある太い血管に管を挿入して、血液の回収を行います。健康とはいえ他人の血漿を体内にいれるために、副作用として血漿に対するアレルギーが起こることがあります。また、管を挿入する際には、出血、管を介しての感染症気胸(肺に穴が開いてしまうこと)などに注意が必要です。

3. ステロイド薬はどのような薬か

TTPの治療法は病院によって多少異なりますが、ADAMTS13インヒビターの産生を抑えることを目的としてステロイド薬を使うことがあります。ステロイドパルス療法といって大量のステロイド薬を点滴で3日間投与し、そのあと飲み薬に切り替えを行うことが多いです。

ステロイドパルス療法には、メチルプレドニゾロン(商品名:メドロール®)を使うことが多く、1日1000mg点滴静注、3日間といった形で使用されます。副作用の一つに血圧上昇がありますが、メチルプレドニゾロンは血圧上昇が出にくい製剤であるため、ステロイドパルス療法など大量のステロイドが投与される場合に選択されます。

ステロイドパルス療法が終了後の飲み薬としてはプレドニゾロンを1日60mg前後の量で開始することが多いです。ステロイド薬は副作用が多い薬剤でもあるので、治療効果を見ながら少しずつ内服量を減らしていきます。

ステロイド薬(内服・注射薬)の副作用は?

点滴や内服薬として処方されるステロイド薬の副作用としては、以下のものがあります。

  • 感染症にかかりやすくなる
  • 血糖が上昇する
  • 血圧が上昇する
  • 体重が増加する
  • コレステロールが上昇する
  • 眠れなくなる
  • 気分の落ち込みや高ぶり
  • 骨がもろくなる

また、点滴静注するステロイドパルス療法では、これらの副作用が強く出ることがあります。例えば、ステロイドパルス療法では骨がもろくなる副作用が強く出る結果、大腿骨頭壊死という股関節の骨が壊れてしまう副作用がまれに報告されています。

そのため、種々の副作用を防ぐ目的で予防的に薬を飲むことがあります。例えば、感染症にかかりやすくなることへの対策としてはST合剤(エスティーごうざい)などの抗生物質を、骨がもろくなる対策としてビタミンD製剤やビスホスホネート製剤などの骨粗鬆症(こつそしょうしょう)治療薬を予防的に使うことがあります。

ステロイド(内服薬)の副作用に関してはコラム「ステロイド内服薬の副作用とは」でも紹介しています。

4. 血漿交換療法やステロイド薬で改善しない場合に使われるリツキシマブ(リツキサン®など)はどういう薬か

ADAMTS13インヒビターは、免疫機能を担う細胞の一つであるB細胞やその仲間から産生されることがわかっています。リツキシマブはB細胞を除去できる薬剤で、ADAMTS13インヒビターを効率良く減らすことができます。

リツキシマブは病院で点滴で投与します。患者さんの体の大きさ(体の面積)から1回あたりに必要な量を計算します。1週間間隔で計4回投与することが多いです。

リツキシマブ副作用として重要なのは、インフュージョンリアクションという過敏症です。発症すると、薬剤投与直後ないし24時間以内に蕁麻疹や発熱、血圧低下があらわれます。そのため、リツキシマブを投与する際にはインフュージョンリアクションの軽減などを目的として、事前に解熱鎮痛薬や抗ヒスタミン薬を飲むことになります。ただ、このような事前対策をしてもインフュージョンリアクションが起こることがあるので、注意が必要です。もし、リツキシマブ投与中ないし投与後に、何らかの症状があらわれた場合は、お医者さんや看護師さんに伝えるようにしてください。

5. 血小板の輸血は原則行わない

TTPでは血小板の数の減少を引き起こします。そのため減少した分を輸血で補えば良いと思うかもしれません。しかし、TTPの人に血小板を輸血すると病気が悪くなることがあるので、原則血小板の輸血は行いません。ただし、脳出血のように命に関わるような出血を起こしている場合は、出血を抑える目的で例外的に血小板の輸血が行われることがあります。

6 溶血性尿毒症症候群(HUS)の治療法は

O157や赤痢菌の毒素により起こるHUSでは、TTPのように血漿交換療法やステロイド薬による治療を必要とせず、自然に良くなってしまうことが多いです。ただし、HUSではTTPよりも腎障害が重症化しやすく、透析療法が必要になることがあるので、注意して経過をみていく必要があります。

7. TTPのガイドラインはあるか

近年、どこの病院でも一定水準以上の医療を受けられるようにするため、さまざまな病気に対して治療の指針が作成される時代となっています。この治療の指針をガイドラインと呼びます。TTPのガイドラインとしては、血液凝固異常症等に関する研究より2020年に「血栓性血小板減少性紫斑病 (TTP)診療ガイド2020」が発表されています。

・厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)「血液凝固異常症等に関する研究」班 TTP グループ:血栓性血小板減少性紫斑病 (TTP)診療ガイド2020 (2021.2.4閲覧)