血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の原因について
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、血液中にあるADAMTS13という成分が不足して起こります。ADAMTS13は血液を固めるのに関わる物質です。ADAMTS13の不足は、ADAMTS13を生まれつき作れなかったり、ADAMTS13を阻害する物質ができてしまったりすることで起こります。
1. 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)のメカニズムとは?
TTPのメカニズムは、「凝固系」という出血を止める仕組みを知っておくと理解しやすくなります。
血液は全身の血管の中をとどまることなく流れ続けています。しかし、私たちは例えば怪我をして出血をしても、数分経つと自然に血が止まります。これは凝固系という出血を止める仕組みが私たちの身体に備わっているためです。逆に言うと、凝固系に異常をきたすと、出血をきたしやすくなったり、逆に血のかたまりができたりします。凝固系の異常はさまざま病気の原因になります。TTPは凝固系の異常で身体中に
もう少しこの病気について詳しく説明していきます。TTPに関わるのは重要な物質は以下の3つです。
血小板 - フォン・ウィルブランド因子
- ADAMTS13(アダム・ティーエス・サーティーン)
血小板とフォン・ウィルブランド因子は止血に必要な血液成分です。具体的には、身体の中で傷ができ、出血が起きていることを身体が感知すると、フォン・ウィルブランド因子が血小板を呼び集め、血小板により傷を埋め合わせをします。そうすると、傷から血が漏れでなくなるので、それ以上の出血を抑えることができます。
ADAMTS13はフォン・ウィルブランド因子が適切に働くのをコントロールしている物質です。TTPはADAMTS13がなくなってしまうことで、フォン・ウィルブランド因子が適切に働けなくなった状態です。ADAMTS13がなくなると、出血してなくても、フォン・ウィルブランド因子による血小板の呼び集めが身体のあちこちで起こるようになります。その結果、身体のあちこちで血のかたまり(血栓)ができてしまいます。身体のあちこちでできた血栓は血流を途絶してしまうため、内臓の障害の原因になります。血栓性血小板減少性紫斑病で起こる内臓の障害としては、腎臓や神経の障害があります。
TTPでは、身体の中でたくさんの血栓ができることで、血小板が大量に消費されるため、血小板の数の減少していきます。このような「血栓」ができる、「血小板」が減るといった特徴が病気の名前の由来になっています。
2. どうしてADAMTS13がなくなってしまうのか:TTPの原因について
TTPはADAMTS13がなくなってしまうことで起こります。ADAMTS13がなくなってしまう理由としては大きく2つあります。
1つ目は生まれつきADAMTS13が作れないことによります。これはUpshaw-Schulman症候群(アップショー・シュールマン症候群)や遺伝性TTP、
私たちの身体はたくさんの細胞やタンパク質などからできていますが、どこでどのような細胞が作られたり、タンパク質が作られるかは遺伝子によって決められています。Upshaw-Schulman症候群では、ADAMTS13を作る遺伝子に異常があり、ADAMTS13を作ることができず、TTPを起こしてしまいます。非常に珍しい病気で、世界中でも150例程度しか報告されていません。Upshaw-Schulman症候群は生まれた直後の重症
参考文献
日本血栓止血学会用語集「Upshaw-Schulman症候群」(2021.2.4閲覧)
2つ目はADAMTS13を阻害する物質が体内で作られてしまうことです。ADAMTS13を阻害する物質はADAMTS13インヒビターと呼ばれます(inhibitは英語で阻害するという意味です)。
TTPの原因についてもう少し細かく説明していきます。主に、以下のことが原因でTTPが起こります。
それぞれの原因とTTPの関係について説明していきます。
全身性エリテマトーデス
私たちの身体には免疫という
全身性エリテマトーデスではADAMTS13など凝固系に対する免疫反応が起こるために、TTPが起こりやすくなるのではないかと考えられていますが、詳しいメカニズムはわかっていないことが多いです。全身性エリテマトーデスの診断には
強皮症
強皮症は手足の皮膚が硬くなる病気です。強皮症も自己免疫疾患の一つであり、TTPの原因になることがあります。もし、TTPを起こした人に手足の皮膚が硬いといった特徴がある場合には、強皮症が原因の可能性を考える必要があります。
薬
頻度は少ないですが、血をサラサラにする薬(
3. 溶血性尿毒症症候群(HUS)の原因は何か
TTPと似た病気にHUSという病気があります。TTPとHUSは症状が似ていますが、原因が大きく異なります。HUSはO157、赤痢菌などの細菌により起こります。O157や赤痢菌は食中毒の原因菌の一つであり、汚染された食べ物を介して身体の中に入ります。身体の中に入ったO157や赤痢菌が産生する毒素がHUSの原因になります。HUSはO157や赤痢菌が身体から除去されれば、症状も自然に良くなっていきます。