かわさきびょう
川崎病
小児に起こる全身の血管炎により、発熱・発疹・冠動脈病変など様々な症状を引き起こす
18人の医師がチェック 163回の改訂 最終更新: 2023.11.02

川崎病の人に気をつけてほしいこと

川崎病は5歳以下の子供に多い病気です。川崎病と言われた場合、どのような生活スタイルにするのが良いのかなど、日常生活の疑問について説明します。

1. 「川崎病かも」と思ったらどこにかかるべき?

出現している症状(川崎病の症状については「川崎病に多い症状:発熱、いちご舌、リンパ節腫脹など」を参考にして下さい。)から川崎病かもしれないと思った場合には、医療機関にかかってください。かかるべき医療機関は総合病院とクリニックのどちらでも構いません。また、かかりつけの病院・クリニックがある場合は、そちらの医師に状況を相談して下さい。状況から川崎病に対する入院治療が必要と判断された場合は、入院治療が始まります。入院ができない施設で診断された場合には、入院のできる病院を紹介してもらうことになります。

2. どんな日常生活を送ればよいのか?

川崎病になるとどういった生活を送ればよいのでしょうか。急性期はほとんどの場合で入院治療を行うので、特に問題となるのは退院後の生活についてです。特に「食事」や「運動」について気になる人も多いと思います。

食事について

一般的に川崎病の子どもの食事を制限する必要はありませんが、冠動脈瘤ができて抗凝固療法としてワルファリンを飲んでいる場合は注意が必要です。納豆やクロレラなどのビタミンKを多く含む食材は、ワルファリンの効果を弱めてしまう可能性があります。ワルファリンを飲むことになったら、避けるべき食事内容について医師や栄養士に相談するようにしてください。

運動について

心臓に大きな合併症が起きない限り、川崎病にかかかった後から運動を制限しなければならないということはありません。しかし、入院によって思った以上に体力が落ちていることが多いので、退院してからすぐは徐々に身体を慣らしていくことが大切です。一方で、心臓に大きな合併症がある場合では、長く運動制限が必要なことがありますので、医師に相談して自分に合った運動のやり方を見つけるようにしてください。

通院について

川崎病の合併症がなかった場合でも、しばらくしてから冠動脈瘤が出現していないかや全身の症状は落ち着いているかなどを観察するために、定期的な通院が必要です。通院の頻度や期間は身体の状況や医療施設の方針によって異なりますが、一般的に数か月から数年以上は通院する場合が多いです。心臓に合併症が見られた場合は、さらに長期間の通院が必要となります。

3. 川崎病になるとどんな状況になるのか? 予後はどうなのか?

川崎病はさまざまな症状が出る病気です。多くの場合で入院治療が必要になり、退院してもしばらくアスピリンなどの薬の内服が必要となりますが、合併症が見られなかった場合は薬の内服は一定期間で終了することが多いです。また、後々まで身体に影響が残ること(後遺症)はほとんどありません。一方で、冠動脈瘤などの心臓合併症がある場合は、長期の通院・内服が必要になります。

川崎病の予後は合併症が出現しなければ悪くありません。川崎病全体で見ても死亡率は低く、およそ0.1-0.3%と言われています。死亡の原因のほとんどは重症の心臓合併症で、主に心筋梗塞不整脈です。川崎病になってから最初の2か月間は状況が不安定なので注意が必要ですが、それ以降に関しては川崎病を発症していない子どもと死亡率も変わりないと言われています。

4. 川崎病は再発するのか?

川崎病は再発する病気です。その正確な頻度はわかっていませんが、およそ3%程度と考えられています。また、「3歳未満の子ども」や「川崎病になったときに心臓合併症があった子ども」で再発が多いとの報告があります。再発するタイミングは、最初に川崎病を発症してから1年以内が多いとも言われています。
つまり、これらに該当する子どもは発症してから注意深く観察する必要がありますが、該当しない場合には必要以上に再発を警戒する必要はないと考えて良いです。

5. 川崎病に後遺症はあるのか?

川崎病により心臓合併症をきたし、冠動脈(心臓を栄養する血管)に拡張が見られたり、瘤(こぶ)ができたり、血管内が狭くなったりした場合、通院で内服薬などの治療を継続して行う必要が出てくることがあります。こうした後遺症が残る場合には、「川崎病性冠動脈瘤」として小児慢性特定疾患に登録できます。登録されると、治療に関わる費用の助成を国から受けることができます。小児慢性特定疾病に該当すると思われる場合は、主治医と相談してみましょう。

6. 川崎病はうつるのか?

現段階では川崎病はうつる病気ではないという認識が一般的です。しかし、川崎病の原因について明確に分かっていないため、人にうつるかどうかに関してはっきりと結論付けられてはいません。今後の原因究明によって新たな解釈が生まれるかもしれません。ですが感染症のように明らかにうつるから気をつけなければならないという事実はありません。

7. 川崎病に似た症状が出る病気

アデノウイルス感染症で目が充血した」、「溶連菌感染症で口の中が赤くなり皮疹も出た」など、子どもがかかりやすい感染症でも川崎病と似た症状が見られます。以下が川崎病に似た症状が出る病気の例です。

【症状から川崎病と見分けるのが難しい病気の例】

これらの病気について知っておくことは大事ですが大変です。むしろ、川崎病と似たような症状が見られる病気がたくさんあるということを知っておくことが大切です。つまり、アデノウイルス感染症が疑わしいと言われても、川崎病を完全に否定することはできないということです。

川崎病の典型的症状は6つありますが、時間とともに1個ずつ症状が出てきます。そのため、最初は違う病気が疑われていても、時間とともに川崎病の典型的症状が揃ってくることがあります。他の疾患と診断されたあとにほかにも症状が出てくる場合は、医師に相談することをお勧めします。

8. ワクチンは接種したほうが良い? 川崎病の子どもの上手なワクチンスケジュール

川崎病の治療を受けた場合、ワクチン接種のスケジュールを組む際に注意が必要です。

川崎病の初期治療として多く行われている大量免疫グロブリン静注療法(IVIG)を受けた人は、6か月以上の間隔をあけてから生ワクチンを接種することが推奨されています。IVIG後すぐに、麻疹ワクチン、風疹ワクチン、水痘ワクチン、ムンプス(おたくふくかぜ)ワクチンといった生ワクチンを接種しても、効果が得られない可能性が高いと考えられていることが理由です。一方で、不活化ワクチン(インフルエンザワクチンなど)に関しては特に制限はありませんので、川崎病の症状が落ち着いてから一定期間あければ接種可能です。

特に川崎病のこどもについては、ワクチンのスケジュールを年齢と身体の具合によってアレンジすることが望ましいので、具体的な接種のタイミングについて医療機関で相談してください。

9. アスピリンを飲んでいる子どもが風邪をひいた場合に気をつけること

川崎病の治療後にアスピリンを定期的に飲むことがあります。15歳未満の子どもが水痘インフルエンザウイルスに罹患した際にアスピリンを飲んでいると、ライ症候群という急性脳症を発症する可能性が高くなります。周囲に水痘やインフルエンザウイルス感染症の人がいて、風邪の症状が出た場合は特に注意してください。その場合はアスピリンの内服を一旦中止するかどうかを判断する必要があるので、主治医と相談してください。