かわさきびょう
川崎病
小児に起こる全身の血管炎により、発熱・発疹・冠動脈病変など様々な症状を引き起こす
18人の医師がチェック 163回の改訂 最終更新: 2023.11.02

川崎病の検査:心臓エコー検査、心臓カテーテル検査など 

川崎病が疑われた場合にはさまざまな検査が行われます。診断を行うための検査や全身状態を調べる検査、合併症の有無を調べる検査などです。

1. 問診

問診では身体の変化や環境などについて質問されます。特に川崎病の診断基準に入っている6つの症状(全身の症状、眼の症状、口の中やくちびるの症状、皮膚の症状、手足の症状、リンパ節の症状)を中心に聞かれます。(川崎病の症状について詳しく知りたい人は「川崎病に多い症状」のページを参考にして下さい。)

見られていた症状が診察時にはなくなってしまっていても、自宅で症状が見られた場合は「症状あり」として診断するので注意が必要です。例えば、自宅で眼が赤かったけど診察時点では白く戻っているという場合も「眼の症状あり」と考えます。

また、家族に川崎病の人がいるかどうかについて聞かれることもあります。家族に川崎病になったことがある人がいると川崎病になりやすいというデータがあるため、一つの判断材料として家族の状況(既往歴)が聞かれます。

2. 身体診察

川崎病は全身の血管に炎症を起こす疾患なので、さまざまな身体部位に症状を起こします。そのため、全身をくまなく診察し異常がないかが確認されます。 特に目・口・皮膚・手足・首の診察はとても重要です。

3. 血液検査

血液検査値は川崎病の診断基準には入っていませんが、検査値が診断の参考になることがあります。そのため以下の項目について検査されることがあります。

【血液検査で観察される項目の例】

  • 白血球
    • 炎症の影響を受けて、15,000/μl以上に増えることがある
  • 血小板
    • 血小板が増えることが多く、発熱から7日後以降にしばしば450,000/μl以上に上昇する
    • まれですが、逆に血小板が少なくなることもある
  • 赤沈血沈
    • 炎症の影響を受けて、しばしば40mm/1時間以上になる
  • CRP(C-Reactive Protein)
    • 炎症の影響を受けて、しばしば値が上昇する
    • 3.0mg/dlや3.5mg/dl以上になる、といった報告がある
  • 肝細胞逸脱酵素(AST、ALT)
    • 軽度-中等度に上昇することが多い
  • ナトリウム
    • ナトリウム値が下がっていることが多い
  • アルブミン
    • 低下していることがある
  • BNP、NTproBNP
    • 心臓への影響から上昇することがある

これらの検査項目は診断を決定的にするものではありませんが、特に診断が難しいときに参考材料として有用です。

4. 心電図検査

川崎病の急性期に心電図検査を行うことがあります。心電図を行う目的は次のとおりです。

  • 不整脈がないかを確認する
  • 心筋炎(心臓の筋肉に炎症が起きる)の所見がないかを確認する

川崎病に合併して起こりやすい不整脈は、房室ブロックや脚ブロック、洞不全などです。不整脈がみられた場合には、不整脈の程度と症状の有無よって治療法が変わります。

5. 心臓超音波検査(心臓エコー検査)

超音波検査は、患者にかける負担が少なく、比較的簡易にできる検査です。超音波を用いて身体の外から内臓の様子を観察することができます。川崎病の場合には心臓を注意深く観察する必要があるため、心臓エコー検査が行われます。

川崎病の子どもに対して心臓エコー検査を用いて次のようなポイントを観察します。

【心臓エコー検査で観察されるポイント】

  • 冠動脈が太くなっていないか
  • 冠動脈にこぶ(冠動脈瘤)ができていないか
  • 心臓の動きが悪くなっていないか
  • 心臓内の血液の流れに逆流が起きていないか
  • 心臓周囲に液体が溜まっていないか

また、検査を繰り返し行うことで、冠動脈瘤が時間によって大きさが変化しているかどうかをみることができます。入院治療中には何回か心臓エコー検査を受けることになりますが、退院後も定期的に行う場合があります。

6. 心臓カテーテル検査

心臓カテーテル検査は患者の身体の負担が大きく被爆する検査ですので、必要性の高い人にのみ行われます。一方で、心臓カテーテル検査では心臓の動きや冠動脈の様子を正確に調べることができます。ある程度以上の大きさの冠動脈瘤ができた場合は、冠動脈を正確に調べる必要があるので、川崎病では心臓エコー検査に加えてカテーテル検査も行うように推奨されています。

川崎病の急性期には身体の負担がかかる心臓カテーテル検査は行なえませんが、症状が回復してきたところで心臓カテーテル検査を行います。また、さらにしばらくしてからもう一度カテーテル検査を行うことがあります。そうすることで、冠動脈瘤の大きさの変化や冠動脈の太さが時間によって変化する様子を正確に評価できます。心臓を専門とする小児科医に定期的な検査が必要と判断された場合には、予定を忘れずに受診するようにして下さい。

7. 画像検査

川崎病になると画像検査を受けることがあります。よく行われる検査は、レントゲン検査・CT検査・MRI検査です。

レントゲン検査(X線写真)

川崎病と診断されてレントゲン検査を受けることがあります。検査するタイミングは、川崎病を発症して間もない時期に検査する場合と、時間が経った時点で撮影する場合とあります。レントゲン検査で確認されるポイントは主に次の2つです。

  • 心臓が大きくなっていないか
  • 冠動脈が白く写っている部分がないか(血管の石灰化を反映している)

レントゲン検査は数秒で撮影できる検査です。しかし、詳しく調べることにはあまり向いておらず、心臓の様子を詳しく調べる場合にはCT検査やMRI検査を行います。

CT検査

CT検査は放射線を使って身体の輪切り画像を作ることができます。レントゲン検査よりも詳しく調べることができる一方で、レントゲン検査よりも放射線による被曝が強いです。造影剤という注射を用いることで、臓器をより見やすくすることもできます。CT検査では冠動脈の状態を評価するのに使われることがあります。

MRI検査

MRI検査は磁気の力を用いて身体の輪切り画像を調べることができます。放射線を使うわけではないので被爆しません。一方で、撮影時間が長いことや動くものを調べることが難しいというデメリットもあります。MRI検査で冠動脈を調べるときには、心臓の動きを同期する一手間を加えてから撮影します。この一手間が簡単ではないため、MRI検査で心臓を調べることができる医療機関は限られます。