きゅうせいのうしょう
急性脳症
脳の異常を示す病気のうち、急速に意識障害やけいれんなどの症状を起こす病気の総称。髄液検査を行っても炎症の所見が得られないものを指す
10人の医師がチェック 91回の改訂 最終更新: 2022.07.14

急性脳症の基礎知識

POINT 急性脳症とは

急性脳症は突如として脳に異常が出現する病気の総称です。感染・低酸素・低血糖・電解質異常・肝臓病・腎臓病・薬の影響等色々など原因が多岐に渡ります。主な症状は手足の麻痺・意識障害・けいれんなどです。画像検査(頭部CT検査やMRI検査)・髄液検査・脳波検査などを用いて診断します。症状改善のためには、急性脳症の原因となっている病気の治療が必要です。並行して症状を和らげる治療(対症療法)も行います。急性脳症が心配な人や治療したい人は、救急科や脳神経内科(子どもの場合は小児科)を受診してください。

急性脳症について

  • 脳の異常を示す病気のうち、急速に意識障害やけいれんなどの症状を起こす病気の総称
    • 子どもの発熱をともなうウイルス感染症によるものが多い
      • 実際に脳で感染を起こしているのではない
      • 代表的なものに、インフルエンザ脳症がある
      • 感染が脳(やそのまわりの脳脊髄液)に及んでいる場合は脳炎となる
    • 感染以外にも以下のことが原因となって起こる
    • 髄液検査を行っても炎症所見は得られない
      • 炎症のあるものは急性脳炎となる
  • 病気が進むと、脳だけでなく多臓器不全(多くの内臓が障害される)が起き、命に関わることもある

急性脳症の症状

  • 主な症状
    • 意識障害
    • けいれん
    • 手足の麻痺
  • 上記以外に、急性脳症の原因となった病気そのものの症状が加わる
    • 感染症であれば、発熱、頭痛などが現れる

急性脳症の検査・診断

  • 脳の活動や状態を調べる検査を行う
    • 髄液検査:背中に針を刺して脳脊髄液を採取する
      • 明らかな感染や炎症が起こっている場合は脳炎として区別をする
    • 脳波検査
      • 高振幅徐波
    • 画像検査
      • 頭部CT検査:主に脳の形に異常がないか、出血がないかといったことを調べる
      • 頭部MRI検査:脳のどの部分に障害(特に脳の浮腫)があるのかを調べる
  • その他に血液検査など全身状態を検査する

急性脳症の治療法

  • 特効薬はなく、急性脳症の原因となっている病気そのものの治療を行うことが原則
  • 症状や場合により行うことのある治療
    • サイトカイン療法(ステロイドパルス療法や免疫グロブリン大量静注療法)
      • 炎症物質(サイトカイン)の作用を抑えるために行うことがあるが、効果は明確でない
    • 血漿交換
      • 体内の炎症物質を取り除くために行うことがある
    • グリセリン製剤
      • 脳の浮腫をとる

急性脳症の経過と病院探しのポイント

急性脳症が心配な方

急性脳症は、様々な原因で脳に異常が起きている状態の総称です。発熱や、つじつまの合わない言動が生じたり、重症の場合には呼びかけに反応がなくなって全身のけいれんを起こしたりする重症の病気です。

診断のためには頭部MRI検査が有効ですが、脳症そのものは症状やMRIで診断ができても、その原因はさまざまな可能性があるため、特定には時間を必要とします。腰椎穿刺といって、背中から針を刺して背骨の内側にある髄液を採取することも、髄膜炎や脳炎を否定するために必要です。

ご自身やご家族の言動がおかしく急性脳症でないかと心配になった時には、神経内科や脳外科の受診をお勧めします。もし本人の意識障害が強くて受診の同意が得られず、それでも明らかに周囲からみて様子がおかしいような場合には救急車での対応が必要となることもあるでしょう。

レントゲン検査やCT検査で急性脳症を診断することはできませんが、他の病気でないことを確かめるために頭部CTを撮影することはあり得ます。

急性脳症については、診断がつき次第その場で治療が開始されますので、どこで治療を受けるか迷う余地は少ない病気かもしれません。細かな診断方法や治療法については、それぞれの病気のページもご参考になさって下さい。

急性脳症に関連する診療科の病院・クリニックを探す