[医師監修・作成]B型肝炎に関する日常生活で気をつけたいこと | MEDLEY(メドレー)
びーがたかんえん
B型肝炎
B型肝炎ウイルス(HBV)の感染によって起こる肝臓の炎症。一部激烈な感染症へと移行するので、感染したことがわかったら定期的な検査が必要となる
5人の医師がチェック 137回の改訂 最終更新: 2022.02.04

B型肝炎に関する日常生活で気をつけたいこと

B型肝炎と言われた人は周囲にうつしてしまわないか心配になると思います。どうしたら周囲のことを気にせずに生活できるのでしょうか。また、B型肝炎にかからないように気をつけたいことなどもあわせて、B型肝炎にまつわる注意点について説明していきます。

1. B型肝炎にはワクチン(予防接種)がある


(写真はイメージです)

B型肝炎にはワクチン(予防接種)があります。2016年から我が国ではB型肝炎ワクチンの定期接種が始まりまりました。定期接種とはその重要性から接種することを法律で推奨されているワクチンのことで、B型肝炎以外にも四種混合ワクチンや肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンなど多く存在します。(ワクチンについてもっと詳しく知りたい人はこちらのコラムを読んで下さい。)自分を守るための予防としてだけではなく、周りにうつさないため(社会を守るため)の予防としても重要であると考えられるものが定期接種に指定されています。

B型肝炎ワクチンのスケジュール:接種間隔や摂取回数について

B型肝炎ワクチンは定期接種として1歳になるまでに3回受けることが推奨されています。1回目のワクチンを受けて、27日以上経過してから2回目を接種して、1回目から139日以上経過して3回目を接種するように指定されています。スケジュールの詳細についてはこちらのコラムを参考して下さい。

なお、赤ちゃんの状況によってはワクチンスケジュールをアレンジする必要があります。ぜひ主治医と相談しながらワクチンを打つようにして下さい。

B型肝炎ワクチンの効果

ワクチンを打つことで必ずしも予防効果が万全になるわけではありません。どんなワクチンにおいても、接種しても予防効果が見られない人が一定数で存在します。このような現象のことを一次ワクチンフェイラーといいます。

B型肝炎ワクチンでも一部の人でワクチンの効果が薄いことが分かっています。年齢が高くなるにつれて、この一次ワクチンフェイラーが起こりやすくなり、40歳以上ではおよそ2割の人では予防効果が薄いです。しかし、接種した時の年齢が若い場合には予防効果が高くなるので、定期接種を受けた人ではほとんどの人がB型肝炎に対して予防効果を発揮すると考えられます。

B型肝炎ワクチンの副反応(副作用)とは?

ワクチンには副反応がつきものです。ワクチンを受けたあと部位が腫れて痛痒くなった経験がある人も多いと思います。ひどい場合にはアナフィラキシーと呼ばれる強いアレルギー反応が起こって、命にかかわることがあります。

B型肝炎ワクチンは重大な副反応が少ないことが知られています。多くの副反応は、接種部位が腫れたり発熱したりする程度のものです。まれに次のような症状が起こることがあるので注意して下さい。

  • めまい
  • 立ちくらみ
  • 動悸
  • 息切れ(呼吸困難)
  • 失神

これらの症状に気づいた場合には、必ず医療機関を受診するようにして下さい。

B型肝炎ワクチンにかかる費用について

B型肝炎ワクチンを定期接種として受ける場合には公費負担が適用されるため、基本的に費用がかかりません。また、1歳以降であれば任意接種として受けることができます。任意接種の場合には費用がかかりますが、実際にB型肝炎になってしまうと予防接種よりもはるかに大きな治療費がかかります。そのため、B型肝炎ウイルスに対する抗体がない人は、予防接種を受けるほうが望ましいです。

大人もB型肝炎ワクチンを受けたほうが良いのか?

結論から述べると、大人もB型肝炎ワクチンを受けたほうが良いです。特にB型肝炎をうつされる可能性あるいはうつす可能性が高い人は受ける必要性が高いです。具体的には次のような人になります。

  • 医療関係者
  • 不特定多数のセックスパートナーがいる人
  • セックスパートナーがB型肝炎であると分かっている人
  • コマーシャルセックスワーカー(性風俗産業従事者)
  • 入れ墨(刺青)を多く入れる人

これらに該当する人はB型肝炎ワクチンを検討して下さい。また、過去にワクチンを打ったことがある人も、時間の経過とともに効果が薄れてしまっている可能性があるので要注意です。

血液検査で自分がどの程度の予防効果(抗体)をもっているのかを測定することができます。抗体価が高ければ予防接種を受ける必要はありませんが、低い場合にも過去に予防接種を受けたことがある人は再度接種する必要度は低いと考えられています。そのため、B型肝炎ウイルスの抗体価は参考値と考えられています。以上のように複雑な状況を専門的に判断する必要があるので、詳しくは近くの医療機関で相談すると良いです。

2. B型肝炎に感染しないために必要なこと

B型肝炎は周囲にうつる感染症です。とはいえ、通常の日常生活でうつることはないので、一緒に食事をしたり、一緒にお風呂に入ったりしても問題ありません。感染がうつるポイントとして次のことに注意して下さい。

  • 性行為によって起こる感染
  • 出産時に起こる感染
  • 針刺しによって起こる感染

これらの感染経路についてもう少し詳しく説明します。

性行為によって起こる感染(性感染症、性病)として

性行為を介して相手にB型肝炎がうつることがあります。また、C型肝炎ウイルスHIVよりも性行為によって感染がうつりやすいことが分かっています。そのため自分だけでなく伴侶やセックスパートナーが感染している場合にも注意が必要です。感染の予防にはコンドームの使用が有効です。

出産時に起こる感染(垂直感染、母子感染)として

出産時にできた傷などが原因となって母親から赤ちゃんにB型肝炎がうつることがあります。そのため、お母さんがB型肝炎に感染していることが分かっている場合には、ウイルス量を測定し、ウイルスの量が多い場合には治療が必要になることがあります。また、出産時には帝王切開を行い、生まれた赤ちゃんには注射(免疫グロブリン製剤とB型肝炎ワクチン)を打つことで母子感染の確率を下げることができます。

針刺しによって起こる感染として

B型肝炎は使用済みの注射針を介してうつります。我が国でも1980年代より以前では注射器の使い回しによるB型肝炎の感染が問題となりました。また、注射器を共用する違法ドラッグや刺青の経験者の中でも感染が見られたりもします。そのため現在では、医療現場で使用する注射器は、使用後には必ず廃棄し使い回しを行わないように徹底されています。

3. B型肝炎は肝細胞がんの原因になる?

B型肝炎が原因で肝細胞がんになることがあります。B型肝炎ウイルスが体内に入って感染が起こると、免疫システムはウイルスを排除するように働きますが、一部の人ではウイルスが排除されずに体内に残ります。この状態をキャリアと呼び、体内のウイルスが炎症を起こさずにいれば無症候性キャリア(B型肝炎ウイルスが体内にいるものの悪さをしていない状態)になりますが、炎症を起こすようになると慢性肝炎(体内のウイルスが肝臓に持続的な炎症を起こしている状態)となります。 慢性肝炎になると肝硬変肝細胞がんになりやすくなります。そのため、治療を行って肝臓の機能を正常にする必要があります。また、体内のB型肝炎ウイルスの量が多いほど肝細胞がんになりやすいことが分かっていますので、抗ウイルス薬を使ってウイルスの量を抑えていくことも大切です。

4. 免疫抑制剤や抗がん剤を使用する際の注意点

B型肝炎ウイルスに感染して治癒した人やウイルスはいるものの特に症状がない人(無症候性キャリア)が免疫抑制剤を使用する場合には、ウイルスが再び活動することがあり注意が必要です。特に一旦治癒したように見えていた人が免疫抑制剤や抗がん剤を使用したことによってB型肝炎になることを「de novo 肝炎」といいます。

免疫が抑えられたことによってウイルスが再活性化して起こる肝炎は重症化しやすいだけでなく、免疫抑制剤や抗がん剤を使用し続けることが難しくなることが特徴です。そのため治療を開始する前にB型肝炎ウイルスの状態を必ずチェックしなければなりません。

免疫抑制剤や抗がん剤を用いる前にチェックする項目の例は次のものになります。

  • HBs抗原検査
  • HBs抗体検査
  • HBc抗体検査
  • HBc抗体検査
  • HBs抗体検査
  • HBV-DNA定量検査

HBs抗原が陽性の場合にはB型肝炎ウイルスが体内に存在するため、HBV-DNAやHBe抗原/抗体を測定し、体内のウイルスの量やセロコンバージョン(B型肝炎の炎症が落ち着いた状態)の有無を確認します。

また、HBs抗原が陰性の場合であっても、de novo 肝炎が起こらないように慎重を期して考える必要があります。そのため、HBc抗体やHBs抗体も測定し、B型肝炎ウイルスによる影響の有無を詳しく調べます。HBc抗体やHBs抗体のどちらも陰性であった場合には免疫抑制剤や抗がん剤を問題なく使用することができますが、HBc抗体やHBs抗体のどちらかが陽性であった場合にはウイルスの量(HBV-DNA)を測定して再活性が起こる危険性が確認されます。

HBV-DNAの結果が1.3Log IU/mL(2.1 Log copies/mL)以上の場合にはde novo 肝炎が起こりやすいため、B型肝炎の治療薬(核酸アナログ製剤)を用いて治療されます。また、1.3Log IU/mL(2.1 Log copies/mL)未満であっても、免疫抑制剤や抗がん剤を使用してからは定期的(1-3ヶ月ごと)に血液検査を行う必要があります。

過去にB型肝炎になった人は、現在治療中であるかどうかにかかわらず、受診時には必ず医療者に伝えるようにしてください。de novo 肝炎が起こると治療に難渋することが多いので、免疫抑制剤や抗がん剤を使用する前に過去の感染を踏まえた慎重な判断が必要になります。

5. B型肝炎の給付金について

過去に日本における集団予防接種によってB型肝炎が広がったことがあります。予防接種で使用する注射器を連続使用したことが原因と考えられています。予防接種が原因で感染した人がB型肝炎訴訟を起こし国が責任を認めたことによって、現在では次の条件を満たす人に給付金の支給が検討されます。

  • B型肝炎ウイルスに持続感染していること
  • 満7歳になるまでに集団予防接種を受けたこと
  • 昭和23年7月1日から昭和63年1月27日の間に、集団予防接種で注射器の連続使用があったこと
  • 集団予防接種以外の感染原因(母子感染・輸血等)ではないこと

これらの状況に当てはまる人は医療機関に相談してください。また、母親が給付金の対象になる人が、母子感染によってB型肝炎の持続感染が認められる場合にも給付金が検討されます。

6. 周囲に感染させないで楽しく過ごすには

B型肝炎は周囲に感染をうつしてしまう病気です。しかし、結核麻疹のように空気を介して周囲へ広がることはなく、日常生活をともにするだけで感染が広がるということはほとんどありません。

B型肝炎の感染において押さえておくべきポイントは次の3点です。

  • 出産時の感染(母子感染)
  • 性行為による感染
  • 注射による感染

この3つのポイントを押さえておけばB型肝炎がうつることはほとんどありません。ジュースの回し飲みしたり一緒にお風呂にはいったりしても、周囲にうつすことはまずありません。

B型肝炎を予防するポイント

B型肝炎を周囲にうつさないようにするためには次のことに気をつけてください。

  • 母子感染の予防

母子感染は出産時にできた傷などから感染がうつります。そのため、お母さんがB型肝炎に感染していることが分かっている場合には、治療によってウイルスの量を抑える場合があります。また、出産時には帝王切開を行い、生まれた子どもには注射(免疫グロブリン製剤とB型肝炎ワクチン)を打つことで母子感染の確率を下げることができます。

  • 性行為感染の予防

B型肝炎は性行為で相手に感染がうつることがあります。また、C型肝炎ウイルスやHIVよりも性行為によって感染がうつりやすいことが分かっています。そのため自分だけでなく配偶者やパートナーが感染している場合にも注意が必要です。性行為時にコンドームを用いることで感染を予防できます。

  • 注射による感染の予防

B型肝炎は注射針を介してうつります。我が国でも1980年代より以前では注射器の使い回しによるB型肝炎の感染が問題となりました。また、注射器を共用する違法ドラッグや刺青の経験者の中でも感染の拡大が見られたりもしました。そのため医療現場では、一人に対して使用済みの注射器は必ず廃棄し、使い回しを行わないように徹底されています。

また、B型肝炎にはワクチンがあるので、予防接種を受けると安心です。このワクチンは現在定期ワクチンとして設定されているため、1歳までに3回受けることになっています。しかし、定期ワクチンに設定される前に幼少期を過ごした人は受けていないことが多いため、一度母子手帳で確認してみると良いでしょう。また、上で述べたように感染のリスクが高い生活をしている人は、医療機関を受診して相談するようにしてください。

【参考】

医療関係者のためのワクチンガイドライン第2版
・Antibody Levels and Protection after Hepatitis B Vaccine: Results of a 22-Year Follow-Up Study and Response to a Booster Dose. J of Infect Diseases 2009;200:1390–6
・Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases 8th edition
国立感染症研究所 「B型肝炎とは」