[医師監修・作成]B型肝炎が疑われたときに行われる検査:抗原検査、抗体検査、ウイルス検査、画像検査など | MEDLEY(メドレー)
びーがたかんえん
B型肝炎
B型肝炎ウイルス(HBV)の感染によって起こる肝臓の炎症。一部激烈な感染症へと移行するので、感染したことがわかったら定期的な検査が必要となる
5人の医師がチェック 137回の改訂 最終更新: 2022.02.04

B型肝炎が疑われたときに行われる検査:抗原検査、抗体検査、ウイルス検査、画像検査など

B型肝炎が疑われた場合にはいろいろと検査を受けることになります。診断がつくために最も大事な検査は血液検査です。このページでは血液検査を中心にB型肝炎に関連する検査について説明していきます。

1. 問診

問診では身体の状況や生活の状況について聞かれます。問診は身体診察を行う前に行われることが多いです。B型肝炎が疑われる人は問診で次のようなことを聞かれます。

  • 症状が出るまでにどんな生活をしていたか(性生活についても)
  • 症状が出るまでにどんな薬を飲んでいたか
  • 飲酒をどの程度するか
  • 何か持病はあるか
  • 家族に似たような症状の人はいるか
  • 初めての症状か
  • どんな症状が出ているか
  • 症状は一定か、よくなったり悪くなったりするか
  • 妊娠しているか
  • 子どもはいるか

B型肝炎は血液や体液を介してうつります。そのため、性行為による感染や出産時の親子感染(母子感染垂直感染)には特に注意が必要です。性生活に関する質問はあまり受けたくない人がほとんどだと思いますが、B型肝炎が疑われる場合には必要な質問ですので、極力答えるようにしてください。

また、肝臓の病気はB型肝炎だけではありません。C型肝炎やアルコール性肝炎、薬剤性肝炎などの多くの病気が考えられます。簡単に原因を絞ることはできませんので問診では様々なことが聞かれます。また、持病のある人や妊娠している人は注意しなくてはならない薬があるため、必ず医療関係者に伝えるようにしてください。

2. 身体診察

身体診察は身体の状態を客観的に判断するために全身をくまなく調べるものです。その方法には次のようなものがあります。

  • バイタルサインの確認
  • 視診
  • 聴診
  • 打診
  • 触診

上に挙げたのはB型肝炎が疑われるときの診察方法の例ですが、これらを駆使することで全身の状態を把握することができます。実際にどんなことが行われるのかについて、各々の診察方法を説明していきます。

バイタルサインの確認

医療機関にかかったときに、「バイタルサイン」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。時に「バイタル」と呼ばれることもあります。バイタルサインは英語で「vital signs」のことを指し、直訳すると生命徴候という意味です。バイタルサインを調べることで、生命に危険が迫っているかどうかを素早く判断できます。

バイタルサインは以下の5つの項目を指すことが多いです。

  • 脈拍数
  • 呼吸数
  • 体温
  • 血圧
  • 意識状態

また、これらに加えて動脈血液中にどの程度酸素が含まれているかを示す酸素飽和度もバイタルサインとして扱う場合があります。

一般的にB型肝炎の人はバイタルサインに異常がないことが多いのですが、肝炎が大きく進行した人や劇症肝炎になった人はバイタルサインに異常をきたします。特に意識状態が悪くなって朦朧(もうろう)とする場合は、肝機能が著しく低下している可能性があるので非常に危険です。

視診

視診は全身の見た目を観察する診察方法です。身体の凹凸の変化や色の変化などが起こる病気は視診で異常が分かります。B型肝炎が進行した場合にはこうした変化が見られることがあります。

聴診

聴診器を用いて身体で起こる音を聞く診察方法を聴診といいます。この方法では肺の音や腸の音、血管を通る血液の音など多くの音を聞くことができます。また、本来聞くことのできる音が聞こえなくなる場合にも異常を探知することができます。

打診

打診は身体の一部を軽く叩くことで反応をみる診察方法です。叩いたときの音や振動の伝わり方を調べることで、身体の中で起こっている変化を探知します。

B型肝炎では主にお腹について打診します。肝臓のあるお腹の右上を中心に全体を叩いていくことで、異常がないか探していきます。

触診

触診は身体の一部を念入りに触ったり押したりすることで異常を探知する診察方法です。普段は存在しないしこりを触ったり、押すことで現れる痛みを探知したりすることで、体内の様子を推定できます。

お腹の触診で特に気をつけなくてはならないのが反跳痛です。これは押している手を放した時に出現する痛みのことです。お腹を押した時に出現する痛み(圧痛)よりも、圧迫を解除した時に出現する痛み(反跳痛)のほうが強いことを腹膜刺激症状といい、お腹全体に炎症が広がっている危険な状態が疑われます。お医者さんがお腹を押した手を放した時に痛みが走った場合には、必ずその状況を伝えるようにしてください。

3. 血液検査

B型肝炎ウイルスが体内に入ってきても多くの人は肝炎にはならずに自然治癒しますが、ごく一部の人では感染によって急激な炎症が肝臓に起こる状態(急性肝炎)になります。また、急性肝炎になった人のさらに一部では感染が持続する状態(慢性肝炎)になることが分かっています。

持続的にウイルスによる感染が起こっている肝臓では肝硬変肝細胞がんが起こりやすいため、感染の状況を見定めて適切な治療を行う必要があります。そのために重要なのが血液検査です。

B型肝炎が疑われた人は、よほどの理由がない限り全員が血液検査を受けることになります。血液検査では主に次の2つについて調べます。

  1. 体内に存在するB型肝炎ウイルスの量はどの程度か
  2. B型肝炎ウイルスによってどの程度の感染が起こっているか

この2つの結果によって感染の状況が分かります。一方で、B型肝炎ウイルスによる感染の状況を調べる検査にはさまざまな項目があります。各々の検査項目ではどういったことを調べているのかについてもう少し詳しく説明します。

抗原検査、抗体検査

体内にウイルスや細菌のような異物が入ると、免疫システムがこれを排除するように働きます。この異物を認識した時に働く免疫システムに必要なタンパク質を「抗体」といい、抗体の標的にされる異物のことを「抗原」といいます。

B型肝炎ウイルスが侵入すると、ウイルスが抗原として認識されて、体内に抗体が作られます。またこの抗体のターゲットにされる抗原はウイルスのどの部位をターゲットにするかによって少し異なります。血液検査で用いられる主な抗原は次の3つです。

  • HBs抗原
  • HBe抗原
  • HBc抗原

これらの抗原には特徴の違いがあるので、もう少し詳しく説明します。(少しややこしい話になるので興味がない人は内容を読み飛ばして問題ありません。)

  • HBs抗原

HBs抗原はB型肝炎ウイルスの表面にあるタンパク質を抗原とします。HBs抗原が陽性の場合にはB型肝炎ウイルスに感染していることが分かります。

  • HBe抗原

HBe抗原はB型肝炎ウイルスの内部にあるタンパク質を抗原とします。ウイルスが増殖する際に作られる物質で、増殖が盛んになるとウイルスの外に放出され、血液中に多く含まれるようになります。HBe抗原の値が高いと、強い感染が起こっていると判断できます。

  • HBc抗原

HBc抗原はB型肝炎ウイルスの内側にあるタンパク質を抗原とします。HBe抗原と異なり感染が盛んな状態でも血液中に放出されないため、現在の技術では正確に測定することは難しいです。

先述したように、体内ではこれらの抗原を認識して抗体が作られるため、以下のような抗体が血液検査で測定されます。

  • HBs抗体(HBs抗原に対応する抗体)
  • HBe抗体(HBe抗原に対応する抗体)
  • HBc抗体(HBc抗原に対応する抗体)

これらも抗原の際と同じように特徴に違いがあります。もう少し詳しく説明します。

  • HBs抗体

HBs抗原に対応する抗体のことで、B型肝炎ウイルス感染から身体を守る働き(中和抗体)があります。そのため、HBs抗体が高値の場合にはB型肝炎ウイルスに対する免疫力が高まっていると考えます。B型肝炎ウイルスに感染することで免疫力が高まるだけではなく、B型肝炎ワクチンを接種した人もHBs抗体が高値になります。

  • HBe抗体

HBe抗原に対応する抗体のことで、HBs抗体と違ってHBe抗体にはB型肝炎ウイルス感染から身体を守る働きはありません。HBe抗原があるうちにはHBe抗体は血液中に出現せずに、感染が治まってきてHBe抗原がなくなるとHBe抗体が高値になります。HBe抗体が高値の場合には、感染が落ち着いた状態であると判断できます。

また、HBe抗原が陰性になってHBe抗体が陽性となる変化のことををセロコンバージョン(Seroconversion)といいます。セロコンバージョンが見られた人は、B型肝炎ウイルスの感染が落ち着いてきている状態(非活動性キャリア)であると判断されます。

  • HBc抗体

HBc抗原に対応する抗体のことで、B型肝炎ウイルスの感染が起こった比較的早くからHBc抗体は高値になります。HBc抗体の中にはいくつか種類があり、主に測定されるものにIgM-HBc抗体とIgG-HBc抗体があります。

IgM-HBc抗体のほうがより早く高値になる特徴から、IgM-HBc抗体は急性肝炎の診断に用いられることが多いです。一方で、IgG-HBc抗体は一度高値になると長期間高値になる特徴から、過去にB型肝炎ウイルスに感染したことがあるかどうかを判断するために用いられることが多いです。

他にもB型肝炎ウイルスコア関連抗原(HBcrAg)という検査項目が調べられることがあります。これはHBe抗原やHBc抗原に加えてp22crと呼ばれるB型肝炎ウイルスプレコア蛋白を測定するものですが、「B型肝炎治療ガイドライン(第3版)」では核酸アナログ治療中における再燃の予測や治療中止時期の決定に有用であるとされています。ただし、治療中の効果判定にこの項目を用いる場合は専門家の判断が必要です。

以上がB型肝炎が疑われる人に行われる主な抗原・抗体検査の項目です。医療現場ではこれらの検査値を踏まえながら感染の状態が総合的に判断されます。自分の状態が気になる人は主治医に聞いてみるようにしてください。

ウイルス量検査

B型肝炎ウイルスが体内に侵入して感染を起こす時に、とても大事な判断材料の一つとなるのがウイルスの量です。当然ウイルスの量が多ければ多いほど、感染が深刻になりやすいです。

HBV-DNA検査という方法を用いて採血した血液中のB型肝炎ウイルスの量を調べることができます。検査結果の単位はLog IU/mL(Log copies/mL)というもので表示され、一般的に3.3Log IU/mL(4.0 Log copies/mL)以下であればウイルスの量が少ないと判断されます。

肝機能検査

B型肝炎ウイルスに感染すると肝機能が低下することがあります。肝機能を調べる際にはトランスアミナーゼと呼ばれる物質がポイントになります。トランスアミナーゼにはAST(GOT)とALT(GPT)の2つがありますが、B型肝炎の治療を行うかどうかを判断する材料としてはALTがよく使われます。慢性肝炎の患者ではALTが30 IU/Lを超えると治療が検討されます。

ただし、劇症肝炎と呼ばれる激烈な炎症が起こった場合には、ASTやPT(プロトロンビン時間)、ビリルビンなどの肝臓の状態を反映する多くの項目を検査し、慎重に肝機能が評価されます。

遺伝子型(ゲノタイプ、Genotype)検査

B型肝炎を考える上でもう一つ大事な検査があります。それはウイルスの種類(遺伝子型、ゲノタイプ)を調べる検査です。 B型肝炎ウイルスの遺伝子型は2018年現在までにA型からG型までの7種類あることが分かっています。また、この遺伝子型の中でどのタイプが流行しているのかは地域によって異なります。日本における慢性肝炎ではC型遺伝子が最も多く、次にB型遺伝子が多いことが分かっています。(急性肝炎ではA型遺伝子が多いです。)ただし、この遺伝子型の割合は感染はしているけれど、症状が軽いから医療機関を受診していないという人を反映していません。そのため、流行状況とは完全には一致していない可能性があることには注意が必要です。

B型肝炎の遺伝子型は重症になりやすさや治療効果の予測に役立ちます。日本におけるB型肝炎患者に多く見られるC型の遺伝子は重症化しやすく治療に難渋しやすいことが分かっています。特にインターフェロン治療を検討するケースや治療後に再発したケースなどでは、この遺伝子型が治療方針を組み立てるうえで参考になります。

4. 画像検査

B型肝炎の定期検査に画像検査があります。必ずしも全員が受けるわけではありませんが、外来通院していく中で画像検査を受けるように指示されることがあります。

画像検査では主に次のことを確認されます。

  • 肝臓の形に変化はないか
  • 肝臓が萎縮していないか
  • 肝臓に新たな腫瘍が出現していないか
  • 腹水が溜まっていないか

これらをチェックするためにたびたび「超音波検査」や「CT検査」が行われます。

超音波(エコー)検査

超音波検査はその名の通り超音波を用いた検査です。体外から超音波を当てて、その跳ね返りを測定することで、体内の様子を画面に映し出すことができます。肝臓やその周囲を調べるときには非常に重宝される検査です。

超音波検査は検査に時間がかからないことが大きな特徴です。調べようと思ったら、簡単な下準備(検査しやすい体位になって、エコーを当てる部位にゼリーを塗る程度)さえ行えば、すぐに検査を行うことができます。検査する人は身体に超音波の出る機材(プローブといいます)をあてて、その奥の性質や動きを確認します。

また、放射線を用いる検査(レントゲン検査、CT検査など)ではないので、被曝しないことも特徴です。放射線を用いた検査の中でも動きを確認することができるもの(透視検査といいます)はありますが、被曝量が少なくないため、一般的には超音波検査でも調べることが難しい場合やより詳しく調べる必要がある場合にのみ行われます。

【超音波検査のメリット】

  • 検査に時間がかからない
  • 被曝しない
  • 動きを確認することができる

一方で、超音波検査では空気やとても硬いものがあるとうまく検査できないという特徴もあります。特に肺や骨などがあると、その奥の様子はうまく見ることができなくなってしまうため、CT検査などの他の検査を用いて調べる必要が出てきます。

CT検査

CT検査は放射線を用いて身体の輪切り画像を見ることができる検査です。放射線による被曝が起こってしまう一方で、ものの数分で身体の中を鮮明な画像にすることができるため、多くの医療機関で行われている検査です。

B型肝炎の検査においてはまず超音波検査を行うことが多いですが、超音波検査で判然としない時などにCT検査が行われます。特に造影剤という特殊な薬剤を用いてCT検査を行うと、より異常が発見されやすくなるので重宝されます。

また、定期検査で行われることが多くないためこのページで言及していませんが、MRI検査を行うこともあります。MRI検査について詳しく知りたい人はこちらのページに概要が書いてあるので参考にして下さい。

【参考】

・Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases 8th edition
国立感染症研究所 「B型肝炎とは」
B型肝炎治療ガイドライン(第3版)