ぜんしんせいえりてまとーです(えすえるいー)
全身性エリテマトーデス(SLE)
本来なら身体を守ってくれる免疫のシステムが自分自身を攻撃してしまい、全身に様々な症状を起こす病気
13人の医師がチェック 150回の改訂 最終更新: 2025.10.06

全身性エリテマトーデスはどうやって診断するの?

全身性エリテマトーデスは症状に加えて、血液検査や生検などの結果を組み合わせて診断を行います。ここでは、全身性エリテマトーデス(SLE)で行われる検査やどのように診断するかを説明していきます。

全身性エリテマトーデスは免疫の異常により自分の体を攻撃してしまう病気です。全身性エリテマトーデスではそのプロセスで異常な抗体が産生されます。抗体は本来外敵を攻撃するための物質です。全身性エリテマトーデスでは自己抗体と呼ばれる自分の体を攻撃する抗体が産生されます。自己抗体は血液検査でも調べることができ、全身性エリテマトーデスの診断においても重要な役割を担っています。

自己抗体は多くの種類に分類できます。ここでは次のものについて説明します。

  • 抗核抗体
  • 抗dsDNA抗体
  • 抗Sm抗体
  • 抗U1-RNP抗体
  • 抗SS-A抗体
  • 抗SS-B抗体

自己抗体はいくつもあり、検精度や調べられる病気が検査によって異なります。

抗核抗体は細胞の核(DNAなどが詰まっている場所)に対する抗体です。

全身性エリテマトーデス(SLE)の人は抗核抗体が血液検査でほぼ必ず陽性となります。逆に言えば、抗核抗体が陰性であった場合には全身性エリテマトーデスでない可能性が極めて高いということになります。

一方で注意しなければならない点は、全身性エリテマトーデスではない健康な人でも抗核抗体陽性になることがある点です。つまり、抗核抗体が陽性であっても必ずしも全身性エリテマトーデスではないということです。

紛らわしいので表にまとめます。

  SLEあり SLEなし
抗核抗体陽性 多い 多い
抗核抗体陰性 非常に少ない 多い

抗核抗体陽性ならば、全身性エリテマトーデスであることもないことも考えられますが、抗核抗体陰性ならば全身性エリテマトーデスである可能性は非常に小さいと言えます。

抗dsDNA抗体は抗核抗体の一つです。抗dsDNA抗体は核の中のDNAを認識する抗体です。全身性エリテマトーデスの方で陽性になる割合は40-70%です。この検査は健康な方や他の病気では陽性となりにくく、全身性エリテマトーデスの診断に有用な検査になります。

加えて、全身性エリテマトーデスの腎臓の病気の勢いがある時に抗dsDNA抗体の値が高くなることも分かっています。

抗Sm抗体は抗核抗体の一つです。全身性エリテマトーデスの方で陽性になる割合は15-30%とそこまで高くはないですが、この検査は健康な方や他の病気では陽性となりにくく、全身性エリテマトーデスの診断に有用な検査になります。

なお、抗Sm抗体が陽性ならばほとんどの場合で次に述べる抗U1-RNP抗体が陽性になります。

抗U1-RNP抗体は抗核抗体の一つです。抗U1-RNP抗体は抗Sm抗体と同時に陽性になることがあるため、抗U1-RNP抗体が陽性の場合には抗Sm抗体が陽性かどうかを確認します。

抗Sm抗体が陰性で、抗U1-RNP抗体が単独で陽性の場合は、必ずしも全身性エリテマトーデスを発症するわけではなく、また発症した場合も見通しはあまり悪くないとされています。抗U1-RNP抗体は混合性結合組織病でも陽性となる抗体であるため、抗U1-RNP抗体が陽性の場合には混合性結合組織病の可能性も考える必要があります。

抗SS-A抗体は全身性エリテマトーデスで陽性になることがある抗体の一つです。抗SS-A抗体はシェーグレン症候群でも陽性となるため、抗SS-A抗体が陽性の場合には、シェーグレン症候群の可能性も考える必要があります。

また、抗SS-A抗体は妊娠の際、赤ちゃんに移行することで、赤ちゃんの不整脈(1%程度)や全身性エリテマトーデス(10%程度)を起こすため、注意が必要です。

抗SS-B抗体は全身性エリテマトーデスで陽性になることがある抗体の一つです。抗SS-B抗体が陽性の場合はほぼ必ずシェーグレン症候群を発症します。そのため、すでに全身性エリテマトーデスと診断されている人が抗SS-B抗体が陽性であった場合には、シェーグレン症候群が同時に起きている可能性を考える必要があります。

全身性エリテマトーデスは全身に症状が現れる病気なので、どれかひとつの症状や検査結果だけで診断を決めることができません。さらに、症状などが似ているほかの病気もいくつかあるので、見分ける必要があります。つまり、全身性エリテマトーデスの診断には総合的な判断が必要です。

全身性エリテマトーデスを診断するための基準として客観的に万全と言えるものはありません。しかし、目安になるものはあります。

たとえば、研究を行うためにはどのような対象者を全身性エリテマトーデスと診断するかを一貫させる必要があり、その際に分類基準というものが使われることがあります。

ここでは1997年のACR(American College of Rheumatology)分類基準と2012年のSLICC(Systemic Lupus International Collaborating Clinics)分類基準について説明します。

1997年ACR分類基準は、全身性エリテマトーデスの診断の参考として広く用いられています。注意点として、ウイルス感染症がんなどの他の病気でもまれに基準を満たしてしまうことがあります。そのため、もしこの基準を満たしても、他の病気をしっかり除外することが重要になってきます。

  1. 顔面(頬部)紅斑

  2. 円盤状皮疹

  3. 光線過敏症

  4. 口腔内潰瘍(無痛性で口腔あるい鼻咽腔に出現)

  5. 骨の破壊を伴わない関節炎

  6. 胸膜炎または心膜炎

  7. 腎障害(0.5g/日以上または尿定性3+以上の持続性蛋白尿または細胞性円柱)

  8. 神経障害(痙攣または精神症状)

  9. 血液異常(溶血性貧血白血球減少症、リンパ球減少症、血小板減少症)

  10. 免疫異常(抗dsDNA抗体陽性、抗Sm抗体陽性、抗リン脂質抗体陽性)

  11. 抗核抗体陽性

上記の11項目のうち4項目以上満たす場合に全身性エリテマトーデスと診断します。

この基準を用いた時の全身性エリテマトーデスの感度は83%、特異度は96%です。

※ある基準が診断にどれだけ有用であるかを検証するために感度と特異度という指標があります。感度・特異度いずれも高い方が有用性が高いことを示しています。

感度について説明します。
感度は病気の人の何%が検査を満たすかを示しています。今回の場合は全身性エリテマトーデスの人の83%がACR分類基準を満たすということになります。感度の高い検査で陰性とでれば病気である可能性が低いと考えられます。

次に特異度について説明します。
特異度は病気でない人の何%が基準を満たさないかを示しています。今回の場合は全身性エリテマトーデスでない人は96%がACR分類基準を満たさないということになります。特異度の高い検査で陽性でればその病気である可能性が極めて高くなります。

出典:Arthritis Rheum 1997;40:1725

2012年SLICC分類基準には、1997年ACR分類基準では記載されていなかった全身性エリテマトーデスの特徴的な症状が盛り込まれています。またSLICC基準は基準が臨床項目と免疫項目に分かれています。SLICC分類基準はACR分類基準に比べてより多くの全身性エリテマトーデスを診断できるようになりましたが、ウイルス感染症などの他の疾患も紛れ込みやすくなっています。そのため、もしこの基準を満たしても、他の病気をしっかり除外することが重要になってきます。

 <臨床項目>

  1. 急性皮膚ループス:頬部紅斑、水疱性ループス、中毒性表皮壊死症丘疹状ループス皮疹、光過敏ループス皮疹

  2. 慢性皮膚ループス:ディスコイド疹、疣贅性ループス、ループス脂肪織炎、粘膜ループス、腫瘍性紅斑性狼瘡、凍瘡状ループス

  3. 口腔内潰瘍:口蓋、口腔、舌、鼻腔の潰瘍(多くは無痛性であるが、時に疼痛を伴う)

  4. 非瘢痕性脱毛(びまん性の毛髪の菲薄化または脆弱性)

  5. 2関節以上における関節滑膜炎

  6. 漿膜炎:1日以上持続する胸膜炎胸水または胸膜摩擦音。1日以上持続する心外膜痛、心外膜摩擦音、心エコーによる心外膜炎

  7. 病変:一日0.5gを超える蛋白尿または赤血球円柱

  8. 神経障害:痙攣発作、精神症状、多発単神経炎、末梢性・脳神経性ニューロパチー、急性錯乱状態

  9. 溶血性貧血

  10. 白血球減少症(白血球数<4000/mm3あるいはリンパ球数<1000/mm3)

  11. 血小板減少症(血小板数<100000/mm3)

 <免疫項目>

  1. 抗核抗体40倍以上

  2. 抗dsDNA抗体陽性

  3. 抗Sm抗体陽性

  4. 抗リン脂質抗体陽性

  5. 補体血症:C3、C4、CH50低値

  6. 直接クームス試験陽性(ただし溶血性貧血がない場合に限る)

 <判定>

  1. 上記の臨床項目または免疫項目の1項目以上を満たし、合計4項目異常満たす場合

  2. ループス腎炎組織診断があり、かつ抗核抗体または抗ds-DNA抗体陽性

上記の1または2を満たす場合に全身性エリテマトーデスと診断する。

この基準を用いた時の全身性エリテマトーデスの感度は97%、特異度は84%です。

全身性エリテマトーデスは免疫の異常により自分の体が攻撃される病気です。免疫とはウイルスや細菌などの外敵や異物が体の中に入ると排除する体の中のシステムのことです。体の中で免疫に関わる細胞が働いています。全身性エリテマトーデスの方では障害を受けている場所で白血球の攻撃が起こっている様子が観察されます。このことを確認するために生検といって、障害を受けている臓器の組織の一部を取ってきて、顕微鏡で観察します。生検の目的には以下のものがあります。

  • 全身性エリテマトーデスの診断のため(免疫細胞が攻撃していることを確認する)

  • がんなど似た症状を引き起こす病気の否定のため

  • 治療方針の決定のため(腎臓の生検で特に重要です)

全身性エリテマトーデスの方で行われる生検ではいろいろな場所を調べます。たとえば皮膚の一部を取ってくる皮膚生検、腎臓の組織の一部を取ってくる腎生検があります。ここでは皮膚生検と腎生検について詳しく説明していきます。

皮膚生検は皮膚で何が起こっているかを顕微鏡で確認するため、皮膚の一部を取ってくる検査です。皮膚生検は全身性エリテマトーデスの方または疑われる方で、異常な発疹が出ている場合に行うことを検討されます。皮膚生検は全身性エリテマトーデスの診断や治療方針決定のため、非常に重要な検査となります。検査のおおまかな手順を説明します。

  1. 生検をする場所の消毒を行います。(生検をする場所の毛が多い場合には、事前に毛を剃ることもあります)

  2. 生検部位の麻酔を行います。

  3. 麻酔が効いているのを確認した後、メスなどで皮膚の一部を切り取ります。

  4. 皮膚を切り取った後は、ガーゼで圧迫して出血を止める。出血が止まっているのが確認されたら、切り開いた場所を糸で縫います。その後ガーゼで保護します。

  5. 7-14日程度たったところで傷を縫っていた糸を切り取ります。

1から4までの検査に要する時間は30分程度になります。全身性エリテマトーデスの皮膚の組織では免疫細胞が集まっていたり、抗体という物質が沈着していたりすることが観察されます。皮膚生検の合併症や注意点に関してはあとで詳しく説明します。

腎生検は腎臓で何が起こっているかを顕微鏡で確認するため、腎臓の一部を取ってくる検査です。腎生検は全身性エリテマトーデスの方または疑われる方で、蛋白尿や血尿など尿検査で異常がある場合に検討されます。生検後には出血のリスクもあるので、5日から7日程度の入院で行います。

  1. うつ伏せになります。(腎臓の組織は背中側から針を刺して採取します)

  2. 超音波で腎臓の形を確認します。

  3. 生検をする場所の消毒を行います。

  4. 生検部位の麻酔を行います。

  5. 麻酔が効いているのを確認した後、超音波で腎臓と組織を採取する針との位置関係を確認しながら、針を進めていき、腎臓の一部を針で取り出します。

  6. 針を抜いた後は腎臓からの出血を止めるため、検査当日は針を刺した部位を砂嚢(さのう)という重しで圧迫します。また、検査当日はベッド上で安静になります。

  7. 翌朝、腎臓からの出血が止まっているかを超音波を用いて確認します。出血が止まっていれば、安静が解除されます。腎生検後、数日間は再出血のリスクがあるため、激しい運動を控える必要があります。

検査全体の時間は2時間程度になります。全身性エリテマトーデスの腎臓の組織では免疫細胞が集まっていたり、抗体が沈着していることが観察されます。全身性エリテマトーデスの腎臓の組織所見は治療方針を決める上で非常に重要です。腎生検の合併症や注意点に関してはあとで詳しく説明します。

皮膚生検・腎生検が原因で望ましくない事態が引き起こされる場合があります。引き起こされる問題を合併症(がっぺいしょう)と言います。合併症はどんなに生検が上手な人でもゼロにはできません。生検に問題がなかったとしても合併症が起こるとはあります。皮膚生検・腎生検で起こりうる合併症としては以下のものがあります。

皮膚生検や腎生検では、メスや針を用いて体に切開を加えるため、皮膚生検や腎生検では、出血をします。このため、一度は止血が確認された場合にも、少し時間が経ってから出血が起こる再出血に注意が必要です。特に再出血は、腎生検の場合に問題になることがあります。というのは、腎臓というのは皮膚と違い、出血が続いていても見つかりにくく、また出血が分かっても止血をするのが困難になるためです。

また生検後からの出血が止まらない時があります。皮膚の上から圧迫止血を行っても止血が難しい場合には、止血剤の点滴を行います。それでも腎臓の出血が止まらない場合には、血管に管を入れて腎臓につながる血管を詰めたり、まれには腎臓の摘出を行うこともあります。

皮膚生検や腎生検では、メスや針を用いて体に切開を加えるため、外から細菌が体の中に入るリスクを伴います。そういったリスクを減らすため、生検処置の前後では抗生物質の内服を行います。

生検の前後ではいくつかの薬を使います。具体的には、痛みを和らげるために麻酔薬や感染予防の抗生物質などが挙げられます。そのため、薬に対するアレルギーは生検処置に起こりうる合併症の1つです。薬に対するアレルギーというのは人によりさまざまです。蕁麻疹じんましん)が出るだけの軽度なものから、重症な場合にはアナフィラキシーショックといって、血圧が下がったり、呼吸ができなくなるといったものまで含まれます。もし、これまでアレルギーを起こしたものがある場合には、事前に申告するようにしてください。

皮膚生検や腎生検には合併症のリスクもあるため、検査を受けるにあたってはいくつかの注意点があります。ここでは注意点を述べていきます。

  • 血を固まりにくくする薬を飲んでいる人は、出血のリスクが上がってしまうため、検査前に中止する必要があります。中止する期間は薬剤により異なり、5日から14日前程度になります。

  • 生検では麻酔や感染症予防のため、薬剤の内服が必要になります。過去に薬剤内服に伴い、アレルギーの経験がある方は医師に申告するようにしてください。

  • 腎生検後は翌日の超音波検査で止血が確認されていた場合であっても、生検後数日間は再出血のリスクがあるため、激しい運動を控える必要があります。

生検は診断においてとても重要な役割を果たします。しかし身体にメスを入れたり針を刺す以上さまざまなリスクが伴います。そのリスクを上げないためにも上で説明したことがらについては必ず守るようにして下さい。