ぜんりつせんがん
前立腺がん
前立腺にできたがん。年齢を重ねるとともに発見されることが多くなる。高齢化が進む日本では患者数が急増している。
12人の医師がチェック 390回の改訂 最終更新: 2026.01.15

前立腺がんの統計:生存率、患者数、なりやすい人など

前立腺がんは男性にしかない前立腺という臓器に発生するがんです。前立腺がんはゆっくりと進行する特徴があり、無症状で見つかることは少なくありません。また、悪性度は低いものもあれば、高いものもあります。このページでは前立腺がんの概要と、患者数、生存率などについて説明します。

1. 前立腺がんとはどのような病気か

前立腺は男性にしかない臓器なので、女性が前立腺がんを発病することはありません。

前立腺の役割の1つは精液の一部を作ることです。下の図のように膀胱の出口の部分にあり、尿道を取り囲むように存在しています。標準的な体積は20cc程度で、少し大きなくるみ程度と表現されます。

【前立腺とその周りの臓器との関係】

前立腺とその周りの臓器との関係

前立腺がんは高齢男性に多くみられる病気で、年齢が高くなるにつれて見つかる人が増加します。50歳以降から前立腺がんの人が増え始め、65歳以降で急激に多くなります。一方で、20歳代や30歳代で前立腺がんが見つかることはまれです。

超高齢社会に突入した日本では、前立腺がんを発症する男性が増加の一途をたどっています。

前立腺がんの罹患率と年齢の関係(全国年齢調整罹患率)

2. 前立腺がんになる人はどのくらいいるのか

前立腺がんと診断される人(罹患者)は年間で95,584人でした(2021年)。これは部位別でがんを分けたとき、男性では第1位になります。

また、前立腺がんで亡くなった人は13,429人でした(2023年)。これはがんを部位別で分けたとき、男性の7位になります。

3. 前立腺がんのステージ・リスク分類

前立腺がんと診断がつくと、診察や検査の結果を基準に当てはめて、ステージやリスク分類がわかります。治療法を選ぶ際に「ステージ」と「リスク分類」が重要になります。

前立腺がんのステージはがんの広がりをもとにして、1(I)から4(IV)の4つに大別されます。数字が大きくなるほど進行した状態を現しています。

ステージ1(I)

目では捉えるのが難しいほど小さながんが前立腺にできた状態のことを指します。 具体的には、前立腺肥大症の手術などによって偶然見つかった場合または、PSA値の異常をきっかけにして見つかった場合です。

ステージ2(II)

直腸診で異常が認めるものの、がんが前立腺内にとどまっている状態を指します。また、ステージ1とステージ2の状態を「限局性がん」と呼ぶことがあります。

ステージ3(III)

がんが前立腺を超えて飛び出している状態を指します。ただし、がんの広がりが前立腺とつながった精嚢を超えることはありません。また、ステージ3の状態を「局所進行がん」と呼ぶことがあります。

ステージ4(IV)

転移がある状態のことを指します。 リンパ節に転移をした場合と他の臓器(肺や肝臓)に転移した場合の両方を含み、精嚢以外の隣り合った臓器に浸潤している場合もステージ4になります。

4. 前立腺がんのリスク分類

ステージとは別にリスク分類という方法でもがんの状態が評価されます。リスク分類は次の3点をもとにしています。

【リスク分類に用いる項目】

  • 前立腺でのがんの広がり
  • PSA値
  • グリソンスコア

前立腺がんはリスク分類により、低リスク、中間リスク、高リスクの3つに分類されます(高リスクを高リスクと、超高リスクのに分けることもある)。リスク分類は治療の効果を予測するのに役立ちます。リスク分類の詳しい説明は「前立腺がんのステージ」のページを参考にしてください。

5. 前立腺がんの生存率(余命)

前立腺がんの生存率は進行度別に集計されています。

がんの統計'24』(がん研究振興財団)によると、前立腺がんのステージごとに治療開始から5年後まで生存している割合(5年生存率)は以下のとおりです。

【ステージごとの実測生存率:2015年の診断】

ステージ 5年実測生存率
ステージ1 89.5%
ステージ2 91.2%
ステージ3 87.1%
ステージ4 51.2%

*実測生存率:死因に関係なく、すべての死亡を計算に含めた生存率

また、国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計」による、ステージごとの5年純生存率は以下の通りです。

【ステージごとの純生存率(ネットサバイバル:2015年の診断】

ステージ 5年純生存率
ステージ1 100.0%
ステージ2 100.0%
ステージ3 99.0%
ステージ4 60.0%

*純生存率(ネットサバイバル)とは、がんのみが死因となる場合を計算して出した生存率

実測生存率は、がん以外の死亡も含めて算出されるため、純生存率より低く出る傾向があります。前立腺がんは進行が比較的緩やかで、他の病気で亡くなる人も一定数いるため、実測生存率と純生存率の差が大きく見える点が特徴です。

生存率はあくまでも統計上の話です。もっと長い余命を得る人もいれば逆に短い人もいます。「5年生存率が50%なら2年ぐらいの余命は確実」のように考えるものではありません。一人ひとりの余命を正確に予想するのは非常に困難です。生存率はあくまで目安だと思ってください。

また、生存率の集計には時間がかかるため、最新のデータであっても数年前に診断を受けた人の結果でしかありません。最新の生存率であっても、いま現在の医療を反映した結果ではないので、そのまま当てはめて考えることはできないのです。

がんにまつわる統計の多くに言えることですが、数値はあくまでも参考程度としてください。過去の数値ではなく、今、自分の身に起こっていることに向き合いながら、適切な診断と治療を継続していくことが重要です。

参考文献

6. 前立腺がんのステージ4の生存率

前立腺がんのステージ4は最も進行した状態です。前立腺がんと診断を受けた人全体のうち約15%を占めます。ステージ4の人々の5年実測生存率は51.2%でした。

前立腺がんのステージ4は以下のいずれかの条件にあてはまる人です。

  • 前立腺がんが精嚢以外の周りの臓器に浸潤している
  • 前立腺以外にがんが転移している
    • リンパ節転移
    • 遠隔転移

ここでは転移がある人に焦点を絞り、リンパ節転移と骨転移の2つの場所に転移をした場合の生存率について説明します。

7. リンパ節転移がある人の生存率

リンパ節転移が見つかる場面は2種類に分けられます。

【リンパ節転移の種類】

  • CT検査などでリンパ節転移を認めた場合
  • 手術時に摘出されたリンパ節から転移が見つかる場合

2つは全く別の状態なので分けて解説します。

画像検査でリンパ節転移が見つかった場合(遠隔転移)

前立腺がんの統計を取るうえではリンパ節に転移のある人はステージ4に分類されますが、ステージ4には、リンパ節転移に加えて肝臓転移がある人や骨転移がある人も含まれます。このように、異なる状況を一括りにして生存率を調査しているため、リンパ節転移だけをしている人の5年生存率について正確な数値ははっきりしません。

個人差はありますが、リンパ節転移のみの人はステージ4の中でも比較的余命は長い部類に入ると一般的には考えられているので、ステージ4の5年生存率を上回ることが十分期待できます。

手術時に摘出されたリンパ節から転移が見つかった場合

手術で摘出したリンパ節を調べた結果、画像検査でははっきりと分からない小さな転移が見つかることがあります。 海外からの報告によると、手術結果でリンパ節転移が見つかった人で、手術後からホルモン療法を受けた人の5年生存率は約80%でした。 ただし、この報告は2009年のものであり、現在、一般的に使われている薬(エンザルタミド、アビラテロン、カバジタキセルなど)が存在しなかった時代の治療結果です。 このため、現在では生存率がこの報告に比べて高くなっている可能性も十分ありえます。

参考:J Clin Oncol. 2009;27:100-105

8. 骨転移がある人の生存率

骨転移がある人は、「転移が骨転移のみの場合」と「転移が骨以外にもある場合」の2つに別れます。

転移が骨転移のみの場合

転移が骨のみの場合は、一般的にはステージ4の中でも比較的余命は長い部類に入ることが多いと考えられているので、ステージ4の生存率を上回ることが十分にあり得ます。

また、2016年からは骨のみに転移がある人に223Ra(ラジウム223)と呼ばれる治療薬が使えるようになりました(223Raについて詳しくは「前立腺がんの治療法は?」で説明しています)。患者さんの状態によりますが、臨床試験の結果では3ヶ月から5ヶ月の余命の延長が確認されています。

転移が骨以外にもある場合

骨以外にも転移を認める場合は、ステージ4の生存率とほぼ同じか、それを下回る可能性があります。正確な数字がわからないのは、骨転移だけの人やリンパ節転移だけの人など状態が違う人達をひとまとめにしてステージ4として算出していることが原因です。

9. 前立腺がんの生存率は当たるのか

前立腺がんの生存率について解説しました。 生存率はあくまでも統計上の話です。「5年生存率80%」と言われた人の中にも、5年以内に亡くなる人が20%いるということです。なかには1年程度で亡くなってしまう人もいます。反対に10年以上生き延びる人も大勢います。「5年生存率80%」と言われたときに「4年ぐらいなら確実だろう」とか「10年以上は無理だろう」と考えるのではなく、あくまで目安程度としてください。

参考文献