とうごうしっちょうしょう
統合失調症
幻覚・妄想・まとまりのない言葉や行動などを特徴とする病気。若い人に多く、全人口の1%近くが経験する。治療によって社会復帰できる場合も多い
16人の医師がチェック 192回の改訂 最終更新: 2024.02.19

統合失調症の診断のための診察や検査について

統合失調症が疑われる人には、診断のために診察や検査がいくつか行われます。特に、お医者さんと患者さんの対話形式で行われる問診が重要です。また、統合失調症の症状には、他の原因(病気や薬の副作用など)でも見られるものがあるので、血液検査や画像検査などで統合失調症以外の原因の有無が確認されます。

1. 統合失調症の診察や検査の目的

統合失調症の症状は他の病気や薬の副作用などでもみられます。このため、診察や検査では、症状の原因が統合失調症かどうかを調べることに加えて、他の原因の有無が確認されます。

【統合失調症の診察や検査】

  • 問診
  • 身体診察
  • 血液検査
  • 画像検査
  • 髄液検査

症状の原因が統合失調症によるものでなければ、治療法が違ってくるので、原因がきちんと調べられなければなりません。次に診察や検査について個別に説明していきます。

2. 問診

患者さんとお医者さんが主に対話形式では行う診察を問診と言います。問診の目的は患者さんの「身体の状況」や「背景」の把握です。患者さんは困っている症状を伝え、お医者さんからは症状や、持病、服用している薬などについての質問を受けます。

【統合失調症が疑われる人に行われる問診の例】

  • 症状について
    • どんな症状を自覚するのか
    • 症状はいつからあるのか
    • 症状が軽くなったり重くなったりすることはあるか
  • 持病や過去の病気について
  • 内服している薬について

これらの質問は統合失調症の診断に重要なので、一つひとつの質問を詳しく説明します。

症状について

統合失調症の診断ではどのような症状があるかが重要です。問診で聞き取った症状を、お医者さんが診断基準に当てはめて診断が行われます。このため、自覚している症状を具体的に、漏らさずお医者さんに伝えてください。

たとえば、妄想や幻覚などがある人はただ漠然と答えるのではなく、「誰かに見られているような気がする」「悪口を言われている」など具体的に伝えてください。また、症状が続いている期間も診断の際には重要です。いつから症状が現れているかを覚えている範囲で答えてください。本人が答えるのが難しい場合には、付き添いの人が質問に答えなければならないので、把握している範囲で答えてください。

持病や過去の病気について

持病や過去にかかった病気を伝えてください。妄想や幻覚といった症状は全身性エリテマトーデス甲状腺機能低下症といった他の病気でもみられます。症状が持病の悪化や病気の再発によるものか、統合失調症によるものかの判断が必要となるので、もらさずにお医者さんにはきちんと伝えてください。

内服している薬について

薬の副作用で統合失調症に似た症状が現れることがあります。症状が副作用によるものであれば、薬を中止したり変更することで、症状の改善が期待できます。反対に、症状が薬の副作用であることに気づかれないと、必要のない統合失調症の治療薬が処方されてしまう恐れがあります。薬の副作用かどうかを正しく判断してもらうために、内服している薬の内容はお医者さんに正確に伝えてください。

内服している薬をもらさずに伝えるには「お薬手帳」を見せるとよいです。「お薬手帳」には薬の開始日や容量などが記されているので、手帳を見せるだけで必要な情報を伝えることができます。

注意が必要なのは、お薬手帳には医療機関から処方されている薬しか記載されていないことです。自己購入した市販薬やサプリメントでも症状が起こりうるので、これらを飲んでいる人は「お薬手帳」とは別で伝えてください。

3. 身体診察

身体診察では、お医者さんが患者さんの身体を見たり、触れたりして、全身の状態がくまなく調べられます。統合失調症が疑われる人に身体診察を行うのは、他の病気の兆候などが身体に現れていないかを確認するためです。 例えば、妄想は統合失調症の人によく見られる症状ですが、甲状腺機能低下症の人にもしばしばみられます。この2つの病気は身体診察である程度見分けることができます。統合失調症の人には身体に変化がないのがほとんどなのに対して、甲状腺機能低下症の人には「甲状腺が腫れて首に膨らみが現れる」「まぶたが腫れっぼったくなる」などの身体の変化が見つかります。 このように、お医者さんは身体診察を行い、全身の変化の有無から原因を絞り込んでいきます。もちろん、身体診察だけでは症状の原因を完全に見分けられません。身体診察に加えて、血液検査や画像検査が行われ、それぞれの結果が踏まえられたうえで、総合的に原因が判断されます。

4. 血液検査

血液検査で統合失調症と診断できるわけはありませんが、主に次の目的で行われます。

【血液検査の目的】

  • 統合失調症に似た症状が現れる病気との区別 
  • 全身状態の把握

2つの役割について、分けて説明します。

■統合失調症に似た病気との区別

統合失調症と症状が似た病気を区別する際には、血液検査の結果が参考になります。例えば、「妄想」は統合失調症だけでなく甲状腺機能低下症という病気でも見られる症状です。甲状腺機能低下症の人では血液検査で甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの値に異常が現れるので、2つの病気を見分ける有力な判断材料になります。

■全身状態の把握

血液検査では肝臓や腎臓の機能など身体の機能を把握することができ、糖尿病など病気の有無のチェックとしても役立てられます。これらの情報は治療薬を決める際に判断材料の1つとされます。例えば、肝臓や腎臓の機能が低下している人には薬の量や種類を調整されますし、糖尿病がある人には病状が悪化する薬が避けられます。

5. 画像検査

脳の病気には統合失調症に似た症状が現れるものがあります。頭部CT検査頭部MRI検査といった画像検査では脳の状態を調べ、病気の有無を調べることができます。

頭部CT検査

CT検査は放射線を利用して、身体の中の断面を画像化する検査です。頭部CT検査では脳の形や頭の中の出血の有無を調べられます。統合失調症の原因は脳の神経伝達物質に異常によると考えられてはいますが、頭部CT検査では異常が見つかることはほとんどありません。このため、統合失調症の診断をするためではなく、脳の出血の有無などを確認するために頭部CT検査が行われます。

頭部MRI検査

CT検査が放射線を利用するのに対して、MRI検査は磁気を利用して、身体の断面を画像化します。目的はCT検査と同じで、頭の中の出血の有無や脳の形が詳しく調べられます。MRI検査でもCT検査と似たような画像が得られます。しかし、MRI検査はCT検査に比べて時間がかかるので、症状が強く出ている状態で行われることは少ないです。CT検査ではっきりとした結果が得られない場合に、MRI検査が行われることが多いです。

6. 髄液検査

髄液脳脊髄液)は脳の周りと背骨の中を満たす液体のことです。背中に細い針を刺す「腰椎穿刺」という方法で抜き出されます。取り出した髄液の状態を調べることを髄液検査と言い、検査結果が脳や神経に異常があるかどうかの参考とされます。

腰椎穿刺の詳しい方法は「こちらのページ」を参考にしてください。

7. 統合失調症の診断基準

統合失調症の診断は米国精神医学会によって作成されたDSM-5という基準をもとに行われることが多いです。DSM-5の基準は「自覚症状」を重視したものですが、「症状が続く期間」や「薬の副作用・他の病気などの原因がない」ことも重要となります。ですので、このページの最初の「問診」が診断の鍵になります。内容をもう一度よく理解して診察の時に役立ててください。

参考文献

・尾崎紀夫, 他 / 編, 「標準精神科医学」, 医学書院, 2018