とうごうしっちょうしょう
統合失調症
幻覚・妄想・まとまりのない言葉や行動などを特徴とする病気。若い人に多く、全人口の1%近くが経験する。治療によって社会復帰できる場合も多い
16人の医師がチェック 192回の改訂 最終更新: 2024.02.19

Beta 統合失調症のQ&A

    統合失調症の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    詳しい原因は不明です。しかし、脳内の様々な神経伝達物質が病態に関与していることはわかっています。その中でも代表的な物質はドーパミンです。ドーパミン受容体の過剰シグナル伝達が病態に関係していると言われています。他にもセロトニン、グルタミン酸などが関与していると推測されています。治療に用いる抗精神病薬とはこれらの調整を行う薬です。

    統合失調症は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    概ね100人に1人の方が発症します。いつの時代でも、地域によらず頻度はあまり変わらないと言われています。男女差もほとんどありません。10代後半から30代で発症することが多いです。

    統合失調症は、遺伝する病気ですか?

     発症には遺伝的要因と環境の影響が同じぐらい関わっていると言われています。一卵性双生児の研究では、片方が統合失調症を発症した場合、もう片方も統合失調症を発症する確率は約50%です。遺伝子が全く同じでも必ず発症するとは限らないですが、50%ぐらいは遺伝的要因が関係していると言えます。
     また、両親のどちらかが統合失調症である場合、その子供が統合失調症になる可能性は約10%です。
     必ず遺伝するわけではありませんが、上記の程度には関与します。

    統合失調症は、どんな症状で発症するのですか?

    様々な症状が徐々に発症します。それは人それぞれ違います。初期症状としては、漠然とした不安感が出現し、集中力、意欲の低下が見られます。また、幻覚、妄想が出現します。誰かに見られている、狙われているという被害妄想が出現します。そして妄想に関連した悪口や罵倒など、自身を脅かすような幻聴が出現することが多くあります。

    統合失調症の、その他の症状について教えて下さい。

     様々な症状が出現するため全ては挙げられませんが、いくつか挙げると、自分の考えが知られてしまう、思考が抜き取られる、テレビで自分のことを言っている、などの妄想があります。稀に幻視が出現します。だらしない身なりになる、ずっと同じ姿勢をとり続けるなどの奇妙な行動をとることがあります。考えがまとまらなくなります。これらの症状を陽性症状と呼びます。
     一方、自閉、感情の平板化、無表情、意欲の欠如、無関心などの症状を陰性症状と呼びます。

    統合失調症が重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    妄想が強固になり暴力的になることがあります。混乱し会話が成立しなくなります。過度に緊張し体がこわばり動けなくなることもあります。死にたくなり自殺しようとすることもあります。意欲が極度に低下し食事を取れなくなることがあります。

    統合失調症は、どのように診断するのですか?

    画像検査、血液検査などで身体的な病気の影響ではないことを確認し、問診で診断します。国際的な診断基準があり、主にそれに基づいて診断します。幻覚、妄想などの特徴的な症状が一定期間継続していること、社会的、職業的な機能が低下していることなどが含まれています。

    統合失調症と診断が紛らわしい病気はありますか?

     統合失調症のような症状を起こしうる内科的な疾患としては、覚醒剤、アルコールなどの薬剤誘発性のもの、側頭葉てんかん、脳腫瘍、ビタミンB12欠乏症、脳炎、正常圧水頭症、神経梅毒などがあります。  精神疾患としては、気分障害、自閉症スペクトラム、強迫性障害、パーソナリティ障害などがあります。

    統合失調症の治療法について教えて下さい。

    大きく分けると薬物療法と非薬物療法があり、どちらも必須です。
     薬物療法では、ドーパミン受容体遮断薬またはセロトニンードーパミン遮断薬を主に使います。はじめに使った薬で効果がない場合、副作用が強い場合は別の薬に切り替えます。気分安定薬を補助的に使うこともあります。  非薬物療法としては、心理療法、精神療法を行います。作業療法を行うこともあります。薬物療法と並行して行われるのが一般的です。難治性の場合は電気けいれん療法を行う場合もあります。
     外来通院でも治療可能ですが、症状が強い場合、外来治療で対応が困難な場合は入院治療を行うこともあります。

    統合失調症の治療薬の使い分けについて教えて下さい。

    はじめはドーパミン受容体遮断薬またはセロトニン-ドーパミン遮断薬を一剤で治療します。それぞれの薬には作用、副作用の特性に違いがあるため、症状や体質に応じて選択します。副作用が出た場合は、減量するか、副作用止めの薬を使います。それでも副作用が強い場合、あるいは効果が不十分な場合は、別の薬に変更します。2剤以上を十分量、十分な期間使用しても効果が不十分、または副作用が強い場合は、クロザピン(クロザリル)という薬を使用することがあります。この薬は難治性の統合失調症に効果があると言われていますが、白血球減少、代謝系異常などの副作用があるため1-2週ごとに血液検査をしながら使用を続けます。

    統合失調症の薬は、生涯飲み続けることになるのですか?

    症状が改善すれば徐々に薬剤の減量を行います。薬を飲まなくても再発しない方は少数おられますが、薬を飲んでいても再発することはありますし、基本的には薬を止めると再発することが多いですので、少量であっても飲み続けることが一般的です。

    統合失調症では入院が必要ですか?通院はどの程度必要ですか?

     症状が強い場合、外来通院では対応が困難な場合は入院治療が適しています。初発の場合や急に悪化した場合などに入院となることが多いです。
     薬の治療は続ける必要があることがほとんどですので、通院も続ける必要があります。通院の頻度は状況によります。1週間に1回から3ヶ月に1回など様々ですが、1ヶ月に1回の通院が一般的です。

    統合失調症は、再発を予防できる病気ですか?

    予防は必ずできるとは限りませんが、適切な治療を続ければ再発の危険性を下げることができます。逆に、自身の判断で薬を飲むのをやめてしまったり、生活の中で強いストレスがかかった場合などは再発の危険性が高まります。

    統合失調症に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。

    薬の飲み忘れなどをせず適切な治療を続けること、ストレスはなるべく避けること、規則正しい生活を送ることなどが重要です。