とうごうしっちょうしょう
統合失調症
幻覚・妄想・まとまりのない言葉や行動などを特徴とする病気。若い人に多く、全人口の1%近くが経験する。治療によって社会復帰できる場合も多い
16人の医師がチェック 192回の改訂 最終更新: 2024.02.19

統合失調症とはどんな病気なのか?症状・原因・検査・治療について

統合失調症を発病する人は120人に1人と考えられており、患者さんの数は決して少なくはありません。一度は病名を耳にしたことがある人は多いと思います。ここでは統合失調症の概要として、症状や原因、検査、治療について説明します。

1. 統合失調症(英語名:schizophrenia)はどんな病気?

「統合失調症」という病名を耳にしたことがある人は多いと思います。かつては精神分裂病という名で呼ばれており、さまざまな精神症状が現れる病気です。精神の病気は縁遠いものと感じる人が多いかも知れませんが、実はそうではありません。ここでは統合失調症の統計的な情報を中心に説明します。

統合失調症にはどれくらいの人がなるのか

統合失調症は1000人あたり3人程度が発症(国内・1年間)するといわれ、一生涯あたりでは1000人に約8人(生涯有病率:約0.8%)の人が経験すると考えられています。厚生労働省の調査によると現在79万人の統合失調症の患者さんがいるとされています(2017年)。患者さんの数を考えても決してまれな病気ではないことがうかがい知れます。

統合失調症の発症年齢について

統合失調症は主に青年期に発病し、高齢で発症することは少ない病気です。発病しやすい年齢(好発年齢)は15歳から35歳と考えられており、約半分の人がこの時期に発病します。発病のピークには男女で差があり、男性のほうが女性に比べて若くして発病することが多いです。(男性のピークが15歳から24歳、女性のピークが25歳から34歳。)

統合失調症は男女のどちらに多いのか

発症年齢のピークは男女で違いますが、発症する人の割合は男女でほとんど変わらないと考えられています。

2. 統合失調症の症状について

統合失調症の症状は「陽性症状」と「陰性症状」の2つに大別されます。これだけでは具体的な症状を想像しにくいので、それぞれについて説明します。 なお、多くはありませんが「陽性症状」と「陰性症状」以外の症状がみられることもあります。より詳しい説明は「こちらのページ」を参考にしてください。

陽性症状

陽性症状とは、幻覚や妄想といった、本来あるはずがないものを自覚したり信じ込んだりすることによる症状のことを指します。具体的に言うと、「誰もいないのに悪口が聞こえる」「誰かに見張られている」「誰かに支配されている」といった症状が現れます。症状の程度は激しいことが多く、落ち着くまでは意思疎通が難しくなります。

陰性症状

陰性症状は陽性症状のように激しいものではなく、「感情表現の乏しさ(感情の鈍麻・平板化)」「意欲の低下」といったものです。より具体的に説明すると、「他人と目を合わさない」「表情が硬い」「他人の気持ちに共感できない」「勉強や仕事に支障をきたすほど集中力が低下する」といった症状が現れます。陰性症状は、陽性症状が落ち着いた後に目立ち始めることが多く、しばらくの間持続します。また、陰性症状が目立つ期間でも外からの刺激をきっかけに陽性症状が再発することがあります。

3. 統合失調症の種類(病型)について:妄想型・破瓜型(解体型)・緊張型・単純型

統合失調症の症状は多様です。症状に注目して次の4つに分類できます。

【症状に注目した分類】

  • 妄想型
  • 破瓜型(解体型)
  • 緊張型
  • 単純型

それぞれのタイプで特徴が異なるので、個別に説明します。

妄想型

4つの中で最も多いタイプで、「被害妄想」がよく見られます。妄想被害とは、自分への中傷や自分を騙そうとする企てなどが幻聴として現れることです。妄想の内容はバラバラのこともあれば、つながりをもつこともあります。他の3病型と比較して、発症年齢が遅いことや、人格が保たれやすいこと、経過が比較的良いことが知られています。

破瓜型(解体型)

「思考過程」や「感情の表出」に著しい障害が現れます。思考障害のために起こる「まとまりがない会話」が特徴的です。また、感情のコントロールができないため、思慮に欠ける行動をとったり、気分の浮き沈みが激しいです。破瓜型は若くして発症することや、治療が難しいことが知られています。

緊張型

「興奮した状態」と「意志の表出や行動が認められない状態」が交互に繰り返されます。また、「相手の動作や言語をおうむ返しに繰り返す(反響言語・反響動作)」「同じ姿勢や体勢を取り続ける(カタレプシー)」「指示や命令に対して頑なに拒否的な態度をとる(拒絶症)といった症状が現れます。

単純型

単純型の症状はゆっくりと目立たずに進行する陰性症状が主体です。陽性症状に乏しいため、気づかれにくいとされています。単純型と診断される人は多くはありません。

4. 統合失調症の原因について

統合失調症のはっきりとした原因はわかってはいませんが、ドーパミン(ドパミン)や、セロトニン、グルタミン酸といった脳内の電気信号を伝える物質(神経伝達物質)の一部が関与していると考えられています。この中でもドーパミンが統合失調症との関係が強いと考えられており、ドーパミンの作用を調整する薬が有効です。

なお、その他では、遺伝や性格が発病に関係しているという意見もありますが、完全には明らかになっていません。統合失調症と「遺伝」や「性格」との関係については「こちらのページ」も参考にしてください。

5. 統合失調症の検査について

統合失調が疑われる人には診察や検査が行われます。診察や検査の目的は「統合失調症と診断すること」と「統合失調症以外の原因の有無を調べること」の2つです。

【統合失調症が疑われる人に行われる診察や検査】

  • 問診
  • 身体診察
  • 血液検査
  • 画像検査
  • 髄液検査

統合失調症の診断は問診(主に医師と患者の対話による診察)で得られた情報を中心に行われます。症状を診断基準(DSM-5やICD-10など)に当てはめることによって、統合失調症かどうかがわかりやすくなります。統合失調症でみられる症状は「他の病気」や「薬の副作用」によっても現れます。他の原因の有無を確認するために、血液検査や画像検査、髄液検査が行われます。検査のより詳しい説明は「こちらのページ」を参考にしてください。

6. 統合失調症の治療について

統合失調症の治療には次のものがあります。

【統合失調症の治療】

  • 薬物療法
  • 精神科リハビリテーション
    • 作業療法
    • SST(Social Akills Training:社会生活技能訓練)
    • 認知行動療法
  • 電気けいれん療法

薬物治療が中心になりますが、精神科リハビリテーションをあわせて行うことで、治療効果がより高まると考えられています。治療開始が早期であればあるほど、予後が良いことが知られています。次にそれぞれの治療の概要について説明しますが、より詳しい説明は「こちらのページ」を参考にしてください。

薬物療法

薬物治療では主に陽性症状を抑える効果が高い「抗精神病薬」が使われます。 統合失調症の原因は不明ですが、脳の中で情報を伝える神経伝達物質(ドーパミンやセロトニンなど)が関係していると考えられており、ドーパミンの作用を弱める薬が治療に使われます。ドーパミンの作用だけを弱める薬を第一世代抗精神病薬(定型抗精神病薬)といい、ドーパミンの他にセロトニンという物質の作用を合わせて弱める薬を第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬)と言います。

抗精神病薬にはたくさんの種類がありますが、使う順番が決まっているわけではなく、効果や副作用のバランスをみながら一人ひとりの患者さんにあった薬が選ばれます。 「副作用」や「服用中の注意点」については「こちらのページ」を参考にしてください。

精神科リハビリテーション

精神科リハビリテーションには、精神作業療法、SST(Social Skills Training:社会生活技能訓練)、認知行動療法などがあります。日常の障害を解決し、安定した生活を過ごせるようにすることが目的で、社会復帰のためには薬物治療とともに重要な治療です。入院でも外来でも行うことができるので、患者さんの状態に合わせて行うことができます。精神科リハビリテーションの詳細は「こちらのページ」を参考にしてください。

電気けいれん療法

電気けいれん療法にも他の治療法と同じく、症状の改善効果があります。治療効果が出るのが薬物療法より早いので、すみやかに症状を抑えなければならない人に行われることが多いです。その他では、「薬が十分に使えない人」や「薬の効果が不十分(治療抵抗性)な人」にも検討されます。電気けいれん療法の「副作用」や「実際の方法」などより詳しい内容は「こちらのページ」を参考にしてください。

7. 統合失調症で知っておいて欲しいこと

統合失調症の治療には時間がかかることが多く、病気の見通しが気にかかるものです。ここでは「病気の経過」と「社会復帰」について説明します。

統合失調症の病気の経過:前兆期(前駆期)・急性期・慢性期・回復期

統合失調症の症状は時間の経過とともに変化していきます。症状の変化に注目すると、統合失調症の経過は次の4つの段階に分けることができます。

【統合失調の症状の段階】

  1. 前駆期
  2. 急性期
  3. 慢性期
  4. 回復期

それぞれの時期の状態について説明します。

■前駆期

前駆期では「落ち着きのなさ」「気分の落ち込み」「不安」などの症状が現れます。程度が軽いことがほとんどなので、この時期に統合失調症と気づかれることは多くはありません。前駆期は2年から3年に及びます。

■急性期

急性期では激しい症状が現れます。「幻覚」「妄想」などの陽性症状が目立つようになり、周りの人とうまくコミュニケーションがとれなくなります。症状は短期間で悪化していき、数ヶ月でピークに達します。

■慢性期

急性期の症状が落ち着くと慢性期に移ります。急性期は陽性症状が主体であるのに対して、慢性期は陰性症状が主体です。感情の起伏が乏しくなり、無気力になり何もしなくなったりします。慢性期は落ち着いた時期のように見えますが、ちょっとした刺激がきっかけで急性期に逆戻りしてしまう不安定な状態です。症状が落ち着いたからといって、治療をやめるのではなく、続けて治療を行い状態を保つことによって、次の回復期に向かうことができます。

■回復期

回復期は症状が目立たなくなってきている時期です。患者さんにかかるストレスを最小限にして状態の安定化を保ちつつ、社会復帰に向けて準備を進めます。薬物治療に加えて精神科リハビリテーションを行い、実際に社会に戻ったときを想定した訓練を行います。

統合失調症の人は社会復帰できるのか

治療が功を奏し、症状が日常生活に支障をきたさない状態になると、社会復帰が可能です。社会復帰の目安とされる「症状が完全になくなる」または「症状がほとんどなくなる」状態に戻るのは全体の約半数と考えられています。

また、社会復帰後に問題となるのは再発です。再発が起こると、治療が必要となるので、社会生活の継続が難しくなります。再発は発症後の最初の2年間に高率に起こり、4人中3人が経験するとも言われています。再発しても早期に治療を始めることで、治療期間が短くなることもあります。すみやかに再発をみつけるためにも社会復帰後の通院は欠かさないようにしてください。

参考文献

・尾崎紀夫, 他 / 編, 「標準精神科医学」, 医学書院, 2018