とうごうしっちょうしょう
統合失調症
幻覚・妄想・まとまりのない言葉や行動などを特徴とする病気。若い人に多く、全人口の1%近くが経験する。治療によって社会復帰できる場合も多い
16人の医師がチェック 192回の改訂 最終更新: 2024.02.19

統合失調症の治療について

統合失調症の主な治療は「薬物治療」と「精神科リハビリテーション」です。2つの治療を組み合わせることで症状を抑える効果が高まります。また、症状が強くすみやかに治療の効果を得なければならない人や、薬物治療に効果がない人などには「電気けいれん療法」が行われます。

1. 統合失調症の治療について

統合失調症の主な治療には次のものがあります。

【統合失調症の治療法】

  • 薬物療法
  • 精神科リハビリテーション
    • 作業療法
    • SST(Social Akills Training:社会生活技能訓練)
    • 認知行動療法
  • 電気けいれん療法

統合失調症の治療の目的は、症状を抑えて社会生活に復帰できる状態になることです。薬物療法と精神科リハビリテーションが治療の2本柱であり、両方を組み合わせることで、より高い効果が得られます。また、激しい症状のために自身や周りの人を傷つけてしまうほどの人には、薬物治療より早く効果が出やすい電気けいれん療法が行われます。

2. 統合失調症の薬物療法

統合失調症の治療薬には多くの種類ありますが、最初に決まった薬を使うというのではなく、効果や副作用を見ながら一人ひとりの患者さんに適したものが選ばれます。

【統合失調症の治療で使う代表的な薬】

統合失調症と新たに診断を受けた人や症状が再び現れた人にはまず、第二世代と呼ばれるグループの治療薬が使われます。治療薬の効果が小さくて症状を十分に抑えられない状態を「治療に抵抗がある」といい、この場合は「クロザピン」や「ラモトリギン」という薬が使われます。

また、症状によっても治療薬の効果が異なります。幻覚や妄想といった「陽性症状」には薬物療法が効果が期待できますが、感覚の鈍麻・平板化や意欲の減退と言った「陰性症状」には陽性症状ほどの効果がでないことがあります。そのため、「陰性症状」には薬物療法だけではなく、精神科リハビリテーションも含めた総合的な治療が必要になることがあります。なお、陽性症状と陰性症状については「こちらのページ」で説明しているので参考にしてください。

それぞれの治療薬についてはこちらのページで説明しています。作用機序まで踏み込んで解説しているので、詳しく知りたい人は参考にしてください。

3. 精神科リハビリテーション

精神科リハビリテーションの目的は、症状によって生じる日常生活の障害を解決し、安定した生活を送れるようにすることです。入院して行うこともあれば、外来(精神科デイケア)で行われることもあります。

精神作業療法

作業を通して症状の改善を目指すリハビリテーションです。社会復帰を目指した就労支援や訓練にも取り入られています。精神作業療法には、手工芸やパソコン作業、音楽、書道などさまざまな方法があります。これらの作業に集中することで、症状から意識を遠ざけて、現実に目を向けられるようになります。また、リハビリテーションを担当する作業療法士や仲間とのコミュニケーション、達成感、満足感などにも症状に対する効果があると考えられています。

SST(Social Skills Training:社会生活技能訓練)

SST(Social Skills Training:社会生活技能訓練)の主な目的は社会生活を送るうえで必要となる対人技能の向上です。SSTの方法はさまざまです。例えば、日常生活の場面を設定し、患者さん同士で決まった役割を演じ(ロールプレイ)、その後参加者で良かった点や改善点を挙げて振り返るなどの方法があります。SSTを行うことで、「状況の把握」「状況に応じた判断」「効果的な実行」ができるようになります。

認知行動療法

統合失調症では「誤った認識」や「思考のゆがみ」が生じます。認知行動療法は認識や思考を修正して、症状の緩和をはかる方法です。修正するといっても、患者さんの思考や認識を「妄想」や「幻覚」だと指摘して否定するのではなく、患者さんの考えを受け止めながらも、さまざまな方向から分析して、合理性に乏しいことを一緒に確認していきます。例えば、「誰かに監視されている気がする」という妄想に対しては、周りの状況を一緒に確認し、監視されている事実がないことを本人に認識してもらいます。このように、認識や思考を少しずつ改めることによって、症状が改善していきます。

4. 電気けいれん療法

電気けいれん療法はこめかみにつけた器具から電流を流し、脳内に電気刺激を与える方法で、症状の改善効果があります。

統合失調症の電気けいれん療法が行われる人

統合失調症の電気けいれん療法は誰にでも行われるわけではありません。主に次のような条件がある人に検討されます。

【電気けいれん療法が検討される人】

  • 強い症状のため薬が飲めない人
  • 持病や薬の副作用のため、薬物治療ができない人
  • 薬物治療だけでは改善がない人(治療抵抗性の人)

症状が強く出ると、薬を飲めないうえに、自分や周りの人を傷つけてしまうことがあります。すみやかに症状を抑える必要がある危険な状態なので、薬物療法より早く効果が得やすい電気けいれん療法が行われます。

薬物治療にともなう「持病の悪化」や「副作用」のために薬物療法が難しくなる人もいます。薬物治療によるデメリットがメリットより大きいと考えられる人には、薬物治療に代えて電気けいれん療法が行われます。

また、薬物療法を工夫してもなかなか効果が得られない人もいます。薬物治療の代わりとして、あるいは薬物療法の効果を高めるために、電気けいれん療法が行われます。

統合失調症の電気けいれん療法の実際

電気けいれん療法は全身麻酔で行うことが多いです。麻酔薬で意識をなくしてから、こめかみにとりつけた電極に電流を流します。麻酔がかかっているので、痛みを感じることはありません。治療時間は1回あたり麻酔を含めても30分から60分程度です。

電気けいれん療法は効果が出るまで繰り返し、5回程度行うと効果が顕著に現れます。基本的には1日に1回、1週間のうち2日から3日を治療の目安とすることが多いです。十数回治療を繰り返しても効果が出ない人は効果が無効と判断されます。

統合失調症の電気けいれん療法の副作用

治療の直後には副作用として次のような症状が現れる人がいますが、一時的なことがほとんどです。

【電気けいれん療法の副作用】

  • 頭痛
  • 筋肉痛
  • めまい
  • 吐き気・嘔吐
  • 恐怖感・錯乱

その他では、全身麻酔を行う際の気管挿管(呼吸を助ける管を気管支に入れること)の影響で「喉の痛み」や「声のかすれ」「口の中からの出血」などがありますが、長く続くことはほとんどありません。全身麻酔に関連した副作用は、担当する麻酔科医の説明をよく聞いてください。

5. 統合失調症の治療ガイドラインはあるのか

ガイドライン」という言葉は一度は耳にしたことがあるかも知れません。ガイドラインが作成される主な目的は治療の成績や安全性の向上です。統合失調症には、日本神経精神薬理学会がお医者さん向けに作成した「統合失調症薬物治療ガイドライン」と、患者さん・家族・支援者に向けて作られた「統合失調症薬物治療ガイドー患者さん・ご家族・支援者のためにー」があります。ガイドラインは過去の治療結果や報告などを根拠に作成されており、お医者さんはガイドラインの内容を踏まえることで、効果の高い治療法を選びやすくなります。

ガイドラインには優れた面がある一方で、記されている内容通りに治療を進めることが正しいとは限りません。検査や治療は日進月歩であり、従来より有効なものが次々に見つかります。進歩を反映するためにガイドラインは数年ごとに改定されていますが、それでも追いつかないことがしばしばあります。新しい検査や治療の有効性が確認されているものであれば、ガイドラインに記載されている検査や治療より優先されます。また、ガイドラインはより多くの患者さんに当てはまる内容が記載されています。このため、一人ひとりの身体の違いによって、全てガイドライン通りに治療できないことは少なくはありません。ガイドラインの内容をアレンジすることで、一人ひとりにとって最適な治療法を選ぶことができます。

参考文献

・日本神経精神薬理学会, 「統合失調症薬物治療ガイドー患者さん・ご家族・支援者のためにー」, 2018年
・日本神経精神薬理学会, 日本臨床神経精神薬理学会「統合失調症薬物治療ガイドライン 2022」