2017.08.18 | ニュース

ハーブが原因?不法薬物のような精神症状で入院した25歳男性

イタリアから症例報告
from Journal of medical case reports
ハーブが原因?不法薬物のような精神症状で入院した25歳男性の写真
(c) LianeM - iStock

食品として流通しているハーブの中には、精神に作用すると考えられるものがあります。不法薬物を使っているように見えたという精神症状で入院となり、その3か月前から大量のハーブを煎じて飲んでいた人の例が報告されました。

イタリアの研究班が、数日続いた精神症状緊急の入院となった25歳男性の例を、専門誌『Journal of Medical Case Reports』に報告しました。

この男性は友人2人に連れられてきました。友人によると、不法薬剤を使っているように見えたという症状がありました。

症状として、まとまりのない発言や、心が読まれている・両親が瓜二つの何者かに入れ替わっている(カプグラ妄想)といった妄想がありました。幻聴は自覚していませんでした。

見た目の様子は静かでした。

血液中の薬物の検査では何も検出されませんでした。

抗精神病薬の治療を受けたところ症状は改善し、入院15日目で退院となりました。統合失調症様障害と診断されました。

 

退院後の通院の間に、入院より前のことが本人から話されました。

入院の9か月前には大麻の濫用とともに精神症状を経験していました。専門家の診察を受け、抗精神病薬を処方されたことがありました。以後不法薬物は使用しておらず、精神状態は改善していました。

入院の3か月前に腹部不快感などの症状が現れました。家庭医(general practitioner)の診察により、上部消化管内視鏡検査ピロリ菌と胃粘膜びらんが見つかりました。しかし男性は勧められた治療を拒否し、自己判断でハーブのセントジョンズワートを飲み始めました。

1日平均4杯、毎回4gのセントジョンズワートを煎じて飲んでいました。精神症状の悪化を感じたのはセントジョンズワートを飲んでいた時期でした。

研究班は、セントジョンズワートが精神症状の原因だったかどうかを確実に判定することはできないことを留保しつつ、何らかの決定的な影響を与えていたと仮定することも可能としています。

 

セントジョンズワートと精神症状の関連が疑われた人の例を紹介しました。

セントジョンズワートは日本でもサプリメントなどとして販売されています。日本では医薬品とはみなされていません。医学研究によりセントジョンズワートが軽度のうつ症状などを改善するとした報告があります。

注意点として、セントジョンズワートはほかのさまざまな医薬品と相互作用を起こしやすく、何かの病気で薬を使うときにはセントジョンズワートを避けるべきとされます。

一般に、セントジョンズワートによって起こる害として不眠などが指摘されていますが、妄想などを引き起こすという確立された証拠はありません。紹介した例でもセントジョンズワートが症状に影響していたかどうかははっきりしません。

不明な点が残るとはいえ、効果があるものには必ず副作用もあります。大量に飲むことで作用が強くなることも考えられます。「薬ではないから」「自然のものだから」安全と考えることはできません。セントジョンズワートに限らず、サプリメントや健康食品は極端な使い方を避け、病気の治療が必要な時には医師にも相談したうえで使うなどすることが、思わぬ害を防ぎ、もしものことがあっても最小限に食い止めるための対策になるでしょう。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

St John's wort (Hypericum perforatum)-induced psychosis: a case report.

J Med Case Rep. 2017 May 15.

[PMID: 28502251]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。