音楽療法で統合失調症患者の社会復帰を支援
統合失調症では、幻覚・妄想や無気力などの症状が起こります。治療により症状が回復して社会復帰する人が多いですが、そのためにはリハビリが必要です。研究チームは職業リハビリ中の患者に対する音楽の効果を報告しました。
◆統合失調症患者49人に音楽を聞いてもらったときの効果を確認
研究チームは、台湾の台北にある施設で、職業リハビリ中の統合失調症患者49人を対象に調査を行いました。対象者は、無作為に以下の3つのグループに分けました。
- グループ1:何も聞かず、静かなところにいる(16人)
- グループ2:クラシック音楽を聞く(16人)
- グループ3:ポップ音楽を聞く17人)
それぞれの環境で、集中力を調べるためのテストを行い、その結果を点数化することで、音楽による集中力への影響を比較しました。
◆ポップ音楽を聞くと集中力が上がった
調査の結果、以下のことが分かりました。
グループ3(ポップ音楽)では、音楽の介入によって
有意 な相違があった(sig=0.048)。
つまりこの研究から、統合失調症患者がポップ音楽を聞くと集中力が上がることが示されました。
今回の研究では音楽の種類によって違う結果が出ていますが、ここで使われたポップ音楽が特に効果的だったというよりも、ほかの種類の音楽も含めて、効果的な場合とそうでない場合があると想像できます。たとえば今回の研究は中国人に対して行われたものでしたが、音楽の感じ方は国や個人によって違う可能性があり、日本でもし同様の研究が行われれば、結果が変わってくるかもしれません。
今後さらに詳しい研究が進めば、音楽が統合失調症患者の社会復帰に役立つ日が来るかもしれません。
執筆者
Influence of background music on work attention in clients with chronic schizophrenia.
Work. 2015.
[PMID: 24594536]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。