子宮内膜症とはどのような病気か:症状、検査、治療法
子宮内膜症とは、本来子宮の中にしかないはずの
目次
1. 子宮はどのような臓器か

子宮は妊娠したときに胎児が育つ場所です。出産の日を迎えるまで胎児は約10ヵ月に渡り子宮の中で過ごします。
子宮は卵管という部分とつながっています。卵管の少し膨れた場所を卵管膨大部といい、ここで卵子と精子が受精します。
子宮内膜とは
子宮内膜は子宮の最も内側にある膜のことです。
子宮は女性に特有の臓器で下腹部にあります。子宮は体部と頸部という2つの部分に分けることができます。子宮体部は球形に近い形をしていて胎児が育つ場所です。子宮頸部は細長い形をしており膣とつながっています。
子宮の大きさは妊娠していないときには縦約7cm、横は約5cmで、厚さは1-2 cmです。「ニワトリの卵」の大きさくらいと例えられることもあります。
子宮は人間が両手を伸ばしたような格好をしています。両腕の部分を卵管といいます。卵管先端の手を広げたような部分(卵管采)は
2. 子宮内膜症とはどのような病気か
子宮は胎児が育つ場所です。子宮の内側には子宮内膜という膜があります。子宮内膜は妊娠に備えて周期的に厚くなり、妊娠しなかった場合には剥がれ落ちて出血します。これが生理(月経)です。
子宮内膜は本来は子宮にしかありません。しかし、子宮内膜やそれに似た組織が子宮以外の場所に発生することがあります。子宮以外の場所にできた子宮内膜が原因となってさまざまな症状が起きる病気が子宮内膜症です。
3. 子宮内膜症になる人の割合、なりやすい人
子宮内膜症を
また、妊娠可能な年齢の女性のうち子宮内膜症に悩む人の割合は7-10%だと考えられています。働き盛りともいえる年代の人に多く発生する子宮内膜症は、個人や家庭、社会に重大な影響を及ぼす病気の一つです。
参考文献 ・産科婦人科学会, 産婦人科医会/編, 産婦人科
4. 子宮内膜症の原因
子宮内膜症は子宮内膜が子宮以外の場所(腹腔内、卵巣など)にできる病気です。その原因についてはまだ完全には解明されていませんが、いくつかの説が提唱されています。
主な説としては、以下の3つがあります。
- 体腔上皮化生説: 本来腹膜などであった組織が、子宮内膜に変化するという考え方です。
- 月経血の逆流によるものとする説: 月経時に子宮から排出される血液が腹腔内に逆流し、そこで子宮内膜組織が生着するという考え方です。
- リンパ管・血管に入り
転移 したとする説: 子宮内膜組織がリンパ管や血管に入り込み、血流やリンパ流に乗って遠隔の部位で生着するという考え方です。
参考文献:河野一郎, 子宮内膜症の発生病理, 日産婦誌:1998;50(10):345-348
5. 子宮内膜症ができる場所:卵巣、ダグラス窩など

子宮内膜症ができやすい場所は卵巣です。卵巣にできる子宮内膜症をチョコレート
卵巣(らんそう)
卵巣は卵子を成熟させる場所です。
子宮内膜症は卵巣にできることがあり、「チョコレート嚢胞」とよばれます。別名に「卵巣チョコレート嚢胞」、「卵巣子宮内膜症性嚢胞」などがあります。チョコレート嚢胞の名前は病気の部分がチョコレートのような色をしていることから命名されました。チョコレートと形容される茶色は古い出血によるものです。
チョコレート嚢胞では、月経困難症や排便痛、性交痛などの症状があるほか、破裂、感染により急激な腹痛を起こす場合もあります。
膣(ちつ)
あまり多くはありませんが、膣にも子宮内膜症ができることがあります。膣に子宮内膜症ができると過多月経などの症状があらわれることがあります。過多月経とは、月経時の出血量が多くなることです。
膀胱(ぼうこう)
子宮内膜症は膀胱にもできることがあります。膀胱は子宮のお腹側にある、尿を溜めておく臓器です。
膀胱に子宮内膜症ができると、月経のタイミングで
参考文献:河原優, 他, 尿路エンドメトリオーシス本邦 152例の臨床統計 : 2例を経験して, 泌尿器科紀要.1994;40:349-352
ダグラス窩(か)
ダグラス窩は直腸子宮窩と呼ばれることもあります。子宮と直腸の間のくぼみという意味です。
子宮の背中側には直腸があります。直腸は肛門とつながっており、便が最後に通過する臓器です。子宮と直腸は接してはいますがくっついてはおらず、隙間があります。その隙間の一番下(足側)の部分を「ダグラス窩」といいます。ダグラスは解剖学者の名前です。
ダグラス窩にはしばしば子宮内膜症ができます。ダグラス窩に子宮内膜症が発生すると、本来は隙間であるダグラス窩が
参考文献:武内裕之, ダグラス窩閉塞を伴う子宮内膜症の外科的治療, 日産婦誌. 2002;54(9):403-408
6. 子宮内膜症の症状:腹痛、腰痛、過多月経など
子宮内膜症の主な症状は、痛みや過多月経(月経時の出血量が多い)です。痛みは月経に伴ったものと、
症状の出方は子宮内膜症ができる場所により異なります。また、全ての症状がでるわけでもありません。詳しくは「子宮内膜症の症状」で解説しているので参考にしてください。
7. 子宮内膜症の検査

子宮内膜症が疑われた人には診察や画像検査をいくつか行い、その結果を総合的に判断して診断を導きます。
- 診察
問診 内診 ・膣鏡診
- 画像検査
超音波検査 MRI 検査腹腔鏡 検査
まず初めに問診が行われます。子宮内膜症の診断には症状の情報が非常に重要です。例えば、便秘や頻尿は子宮内膜症が影響していることがあります。問診では質問に答えるだけではなく、ちょっとした症状もできるだけ正確に伝えることが大事です。
問診に加えて膣を触診する内診も重要です。内診・膣鏡診では子宮の動きや膣などに異常がないかを調べることができます。
画像検査は子宮内膜症の場所や広がり、子宮内膜症以外の病気の可能性などを判断するために行います。
これらの検査の結果をもとにして治療方針などが定まります。それぞれの検査の方法の詳細は「子宮内膜症の検査」で解説しています。
8. 子宮内膜症のステージ
子宮内膜症は、時間とともに
ステージ分類は、進行状況を評価し、適切な治療法を選択するために用いられます。子宮内膜症でよく使用される分類方法として、Beecham(ビーチャム)分類とr-ASRM分類があります。ステージ分類の表現はやや専門的であるため、以下はを読み飛ばしていただいても問題ありません。
Beecham(ビーチャム)分類
Beecham分類は日本で使われることの多い分類です。内診と手術時の状況を合わせて決定します。
- ステージI
- 散在性の1-2mmの内膜症小斑点を骨盤内にみる。開腹時に初めて診断される。
- ステージII
- 仙骨子宮
靭帯 、広靭帯、子宮頸部、卵巣が一緒にあるいは別々に固着し、圧痛、硬結を生じ、軽度に腫大 している。
- 仙骨子宮
- ステージIII
- ステージIIとおなじだが、少なくとも卵巣が正常の2倍以上に腫大している。仙骨子宮靭帯、直腸、付属機は癒合し一塊となっている。ダグラス窩は消失している。
- ステージIV
- 広範囲に及び、骨盤内臓器は内診でははっきりと区別ができない。
r-ASRM分類
r-ASRM分類はアメリカの学会によって作成された分類方法です。子宮内膜症を部位別に評価して点数をつけ、その合計点でステージを定めます。Beecham分類と同様に腹腔鏡検査などでお腹の中(腹腔内)を観察しなければステージを決めることはできません。
| 病巣 | 1cm未満 | 1-3cm | 3cm超 | ||
| 腹膜 | 表在性 | 1 | 2 | 4 | |
| 深在性 | 2 | 4 | 6 | ||
| 卵巣 | 右 | 表在性 | 1 | 2 | 4 |
| 深在性 | 4 | 16 | 20 | ||
| 左 | 表在性 | 1 | 2 | 4 | |
| 深在性 | 4 | 16 | 20 | ||
| 癒着 | 1/3未満 | 1/3-2/3 | 2/3超 | ||
| 卵巣 | 右 | フィルム様 | 1 | 2 | 4 |
| 強固 | 4 | 8 | 16 | ||
| 左 | フィルム様 | 1 | 2 | 4 | |
| 強固 | 4 | 8 | 16 | ||
| 卵管 | 右 | フィルム様 | 1 | 2 | 4 |
| 強固 | 4 | 8 | 16 | ||
| 左 | フィルム様 | 1 | 2 | 4 | |
| 強固 | 4 | 8 | 16 | ||
| ダグラス窩閉塞 | 一部 | 4 | |||
| 完全 | 40 | ||||
- ステージI
- スコアの合計点が1-5点
- ステージII
- スコアの合計点が6-15点
- ステージIII
- スコアの合計点が16-40点
- ステージIV
- スコアの合計点が41点以上
9. 子宮内膜症の治療:薬物療法、手術
子宮内膜症の治療は手術と薬物治療です。手術・薬物療法ともにいくつか種類があり、一人ひとりの状況に適した治療法を選びます。
- 手術
- 根治手術
- 開腹手術
- 腹腔鏡手術
- 温存手術
- 開腹手術
- 腹腔鏡手術
- 根治手術
- 薬物療法
- 鎮痛剤:
NSAIDs (エヌセイズ) - 漢方薬
ホルモン 療法- ピル(
経口避妊薬 ) - ジエノゲスト
- GnRHアゴニスト
- ピル(
- 鎮痛剤:
子宮内膜症の治療を選ぶのは難しいときがあります。
子宮内膜症の治療法の選び方は「子宮内膜症の治療」で詳しく解説しています。
10. 子宮内膜症と不妊症との関係
不妊症の原因の一つに子宮内膜症があります。手術によって卵巣や子宮の癒着をとったり子宮内膜症を切り取ったりすることで効果があらわれます。
一方で、子宮内膜症がある不妊症の人の全員に手術が必要なわけではありません。まず、子宮内膜症の手術の前に、不妊症の原因が他にないかを調べます。以下が主な不妊症の原因です。
- 女性側の原因
- 排卵障害
- 卵管の異常(子宮内膜症、クラミジア
感染症 による) - 子宮内膜症
- 子宮頸管の異常
- 着床障害
- 抗精子
抗体
- 男性側の原因
- 性機能障害(勃起障害、射精障害)
- 精子の機能低下
- 精路通過障害
不妊症の原因が男性側にある場合や、複数の要因が重なっている場合があります。そのため、子宮内膜症を手術で治療する前には他に原因がないかをしっかりと調べておくことが重要です。
参考文献 ・産科婦人科学会, 産婦人科医会/編, 産婦人科 診療ガイドライン―婦人科外来編2014 ・Duffy JM, et al. Laparoscopic surgery for endometriosis, Cochrane Database Syst Rev.2014;3:CD011031
手術をしたほうがいい人
不妊症の治療目的で子宮内膜症の手術が必要な人はどんな人でしょうか。
当たり前に聞こえるかもしれませんが、子宮内膜症が不妊症の原因であることが確実な人です。不妊症の原因は子宮内膜症だけではありません。不妊症の原因が他にもある場合は、他の原因の治療が子宮内膜症の治療より優先されることがあります。
不妊症は女性だけの問題ではなく男性に原因がある場合があります。しっかりと調べたうえで子宮内膜症が不妊症の原因と考えられる場合は子宮内膜症の治療をします。
11. 子宮内膜症は再発するか
子宮内膜症は再発することがあります。ここでの再発は、手術の後に再び月経痛などの子宮内膜症に関連した症状があらわれることを指すことにします。
子宮を温存する手術(温存手術)の治療後、2−5年で10−49%の人が再発を経験するとされています。また、2年以内に再び手術が必要になる人は20%にのぼるという報告もあります。
これに対して子宮を摘出する手術(根治手術)を受けた場合に再発して再手術が必要となる人は5%程度という報告があります。
子宮内膜症には再発の可能性があり、それは温存手術に多いです。根治手術を選ぶと症状の緩和には有効ですが、子宮がなくなるので妊娠ができなくなります。
手術をする場合には、子宮を残すかどうかの決断をしなければなりません。症状の緩和を重視するか、将来の妊娠の可能性を残すかのどちらに重きをおくかは、その人や家族の価値観により決まります。医師の説明をしっかりと聞いて、自分の希望を叶えるような選択をすることが大事です。
参考文献 ・大内 望, 他 : 当科における子宮内膜症の術後再発率についての検討, 日本エンドメトリオーシス会誌 2010; 31; 195-198 ・Obstet Gynecol.2008;111:1285-92
12. 子宮内膜症の名医はどこにいるか
どの病気においても名医の定義はありません。それには理由があります。
医師と患者の関係も人間同士の関わりです。出会った医師を名医と呼べるかどうかは、それぞれの患者さんの考え方が影響します。つまり、名医の定義はその人によって異なると考えられます。そこで、ここでは医師の実名をあげるのではなく、名医に出会う方法を考えてみたいと思います。
子宮内膜症の名医の条件とは
子宮内膜症の治療には多くの種類があります。子宮内膜症の名医は子宮内膜症のあらゆる治療に精通している必要があります。
子宮内膜症の治療法は薬物療法と手術です。それぞれの治療にはメリット、デメリットがあります。患者さんの望みと治療効果の両方を満たす治療法を選ぶために名医はあゆる治療法について精通していることが条件だと思います。
名医に出会うにはどうすればいいか
では実際には名医に出会うにはどうすればよいのでしょうか。
方法の一つとして子宮内膜症の治療実績数を参考にするのは名医を探す有力な手段です。治療実績数が多いとその医療機関は患者さんの支持を集めていることが推測できます。
名医と言われる医師に診察を受けてもしっくりこないと感じる人も中にはいると思います。医師も人間なので患者さんとの間にどうしても相性というものが生まれてしまいます。名医と言われ評判の高い人でも相性が良くなければ良い治療につながらない可能性もあります。医師を選ぶさいには名医という評判だけではなく人間同士の相性も大切にしてください。
名医に出会う方法について考えてきました。一人ひとりで価値観が異なるので名医もその人の数だけいると考えてもおかしくないと思います。自分の価値観などと照らし合わせながら名医を探してみてください。
13. セカンドオピニオンとは?
セカンドオピニオンとは主治医以外の医師に現在受けているもしくはこれから受ける治療の方針などについての意見を聞くことです。多くの場合は主治医から
セカンドオピニオンを受けるには?
セカンドオピニオンを受けることを希望すると主治医との関係が悪くなるような気がするかもしれません。そのためになかなか切り出しにくいという声をよく耳にします。それはセカンドオピニオンを受けたいと切り出すことが、主治医の治療方針に疑問があると受け取られてしまうと思うからかもしれません。とはいえセカンドオピニオンは患者さんがもつ権利です。セカンドオピニオンを受けることで適した治療が選択されたり、今の治療に納得できるならば主治医の立場からみてもありがたいことだと思います。
セカンドオピニオンでは何に気をつければいい?
セカンドオピニオンを聞く時にもっとも注意してほしいのは、受診する目的をはっきりとさせることです。
セカンドオピニオンを受ける施設でしかできない治療法について知りたいのであればその治療についてできるだけ聞きたいことの優先順位をしっかりさせるとよいと思います。セカンドオピニオンは受診する前の準備も大事です。
セカンドオピニオンを受ける前にすることは?
セカンドオピニオンを受けるには、診療情報提供書を主治医に書いてもらうことと、セカンドオピニオンに対応してくれる医療機関を探すことが必要です。診療情報提供書を持たずにいきなりセカンドオピニオンを目的として受診したり、診療情報提供書を持っていても予約がなければセカンドオピニオンには対応してくれないことがあります。
セカンドオピニオンを受けたあとはどうする?
セカンドオピニオンを受けたあとには、治療や検査についての決断をしないといけません。つまりどの医療機関でどんな治療や検査を受けるかを決めます。
セカンドオピニオンを受けた結果、もとの施設で検査や治療を受けることになるかもしれませんし施設を変えることもあると思います。
セカンドオピニオンを受けた施設での治療を希望した場合でも、もとの主治医に経緯を報告し、必要ならば改めて紹介の手続きを取ってもらってください。少し負担かもしれませんが情報がスムーズに伝わってその後の治療にもいい影響が期待できます。主治医もきっとその選択を後押ししてくれると思います。