◆子宮内膜症とは?
子宮内膜症は、本来なら子宮の内側に作られるはずの子宮内膜が、子宮の外側、直腸の周りなど別の場所にできてしまう病気です。
20代から30代の女性に多く、月経周期にともなう腹痛、特に性交時や排便時の痛みを特徴とします。性感染症とは関係ありません。
診断には通常、腹腔鏡検査が必要とされます。腹腔鏡検査はお腹を切って臓器の隙間にカメラを入れる方法で、まれに臓器を傷付けるなどの危険性もあります。
◆子宮内膜症の診断の研究を調査
ここで紹介する研究は、子宮内膜症の診断方法の研究にどのようなものがあるかを調べてまとめたものです。
見つかった研究のデータから、腹腔鏡検査などの外科的な方法と比べて、ほかの方法の信頼性が計算されました。
外科的な診断法に置き換わるためには、次の2点を満たすことが基準とされました。
- 子宮内膜症があれば、94%以上を見逃さず発見できる。
- 子宮内膜症がないときは、79%以上で正しく子宮内膜症を否定できる。
◆質の低い研究しか行われていなかった
11件の研究が見つかりました。しかし、研究の方法によって結果に偏りが入りにくいようにする設計の質を検討したところ、11件の研究すべてが低い質の研究と判断されました。
11件の研究の中で、血液検査などを組み合わせた15種類の診断方法が試されていました。そのうち腹腔鏡検査を置き換えるための基準を満たした診断方法は次の2種類でした。
- 血液検査のIL-6と、子宮から子宮内膜を取り出すPGP9.5検査の組み合わせで骨盤の子宮内膜症を診断
- 膣の診察と経膣超音波検査の組み合わせで直腸の子宮内膜症を診断
どちらも場所を限定した判定なので、たとえば膣の診察と経膣超音波で直腸以外の子宮内膜症を診断できるかどうかは上の結果に含まれていません。
研究班は、見つかった研究の質が低かったことから、「子宮内膜症の診断にはいまだ腹腔鏡がゴールド・スタンダードのままである[...]」と結論しています。
基準を満たす結果が出ていた2種類の検査も、研究の質が低い点、場所が限られている点をふまえれば、十分な証拠があるとは言えないでしょう。
腹腔鏡検査は負担が大きい検査ですが、置き換わるほど信頼性の高い診断方法は見つかっていませんでした。さらに新しい技術が加わるまでは、子宮内膜症を確実に診断してホルモン療法など適切な治療を始めるために、腹腔鏡検査を避けられないのが現状です。
執筆者
Combination of the non-invasive tests for the diagnosis of endometriosis.
Cochrane Database Syst Rev. 2016 Jul 13.
[PMID: 27405583]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。