[医師監修・作成]子宮内膜症の薬物治療:ピル、ディナゲスト®など | MEDLEY(メドレー)
しきゅうないまくしょう(ちょこれーとのうほうをふくむ)
子宮内膜症(チョコレート嚢胞を含む)
子宮内膜が子宮以外の場所にできる病気。月経のたびに強くなる腹痛、性交時・排便時の痛みなどを起こす。
13人の医師がチェック 189回の改訂 最終更新: 2022.04.15

子宮内膜症の薬物治療:ピル、ディナゲスト®など

子宮内膜症の治療において薬物治療はとても重要です。薬物療法には症状を緩和するためのものと子宮内膜症を小さくしたり進行を抑えるものがあります。漢方薬が使われることもあります。

1. 子宮内膜症に効果のある薬は?

子宮内膜症の薬物療法には、症状を緩和する治療(対症療法)、漢方薬、ホルモン療法の3つがあります。症状や進行度に応じてこれらの薬を使い分けます。

  • 鎮痛剤:NSAIDs(エヌセイズ)
  • 漢方薬
  • ホルモン療法
    • ピル(卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合製剤) 
    • ジエノゲスト
    • GnRHアゴニスト

以下ではそれぞれの薬の特徴などについて解説します。

参考文献:生殖・内分泌委員会, 報告, 日産婦.2015;67(6):1493-1511

2. 鎮痛剤(ちんつうざい)

子宮内膜症の多くの人に痛みが現れます。子宮内膜症を原因とする痛みは下腹部痛や腰痛、性交痛、排便痛などです。痛みが起きる原因には、炎症などででる化学物質(プロスタグランジンなど)が関与していると考えられています。

プロスタグランジンを抑える効果のある鎮痛剤はNSAIDs(エヌセイズ)と呼ばれるものです。NSAIDsは一般的に「痛み止め」として使われている薬です。例としてロキソプロフェンナトリウム(主な商品名:ロキソニン®)やイブプロフェン(主な商品名:ブルフェン®)などがあります。

鎮痛剤はあくまでも痛みを抑えるものなので子宮内膜症を小さくしたり進行を抑えたりする効果はありません。このため痛みが強い場合はホルモン療法などの薬を追加する必要があります。

鎮痛剤を使う際の注意点

薬にあまり頼りたくないという理由からか、痛みがあってもただ痛みを我慢し続ける人がいます。痛みを無理に我慢し続けることはないですし、生活にも影響するのであまりいいこととはいえません。子宮内膜症で使われる鎮痛剤には依存性などはありませんので安心して使ってください。

ただし、鎮痛剤の量が多くなると胃潰瘍(いかいよう)や腎臓の機能が低下したりするなどの副作用が現れることがあります。鎮痛剤の量が増えてきたらホルモン療法などの治療を追加で行うことを検討してよいかもしれません。新しい治療を始めるのは気が重くなりますが症状と付き合いながら生活を営むうえでは大事なことです。お医者さんに症状をしっかりと伝えて自分に合った治療を相談することが大事です。

3. 子宮内膜症などに効果がある漢方薬

月経時に生じる痛みや不快感などは時として日常生活に支障をきたす場合もあります。このような症状をきたすものを月経困難症といいます。月経困難症にははっきりとした原因がわからないものもあれば子宮内膜症などの病気によって起こるものもあります。

漢方医学では「気・血・水(き・けつ・すい)」という言葉を使って生命活動や体内の状態を表現することがあります。月経痛や月経困難症は主に「血(血液や血流など)」の異常により引き起こされると考えられています。

また漢方医学では個々の体質や症状などを「証(しょう)」という言葉であらわし、一般的にはそれぞれに適するとされる漢方薬が選択されます。(漢方薬の中にはあまり証によらず使うことができるものもあります)

仮に同じ月経痛でも、体力が比較的ある人と比較的虚弱な人では使われる漢方薬が異なる場合も考えられます。

ここでは子宮内膜症を起因とするものも含み、一般的に月経痛や月経困難症に効果が期待できる漢方薬をいくつかみてきます。

桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

体力が中等度から比較的充実していて、血色が良く、下腹部の痛み、のぼせなどがある証に適するとされます。抗エストロゲン作用などをあらわし、子宮内膜症や子宮筋腫などに伴う月経困難症に対しても有用とされています。血流の改善作用などもあらわし、月経困難症の他、子宮内膜炎更年期障害不妊症などの治療に使われています。

加味逍遙散(カミショウヨウサン)

体力が中等度からやや虚弱気味で冷え、めまい、不眠、イライラ、頭痛などがあるような証に適するとされます。抗ストレス作用や鎮静・鎮痛作用などをあらわす柴胡(サイコ)、血の巡りを改善する当帰(トウキ)などの構成生薬を含み月経困難症更年期障害自律神経失調症不妊症などの治療に使われています。

当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

加味逍遙散よりもさらに体力が虚弱気味で、疲れやすく手足が冷えやすい、貧血、胃腸が虚弱、めまいや脱力感などがある証に適するとされます。血の巡りを改善する当帰(トウキ)、鎮痛・鎮静作用などをあらわす芍薬(シャクヤク)などの生薬を含み月経困難症更年期障害自律神経失調症不妊症などの治療に使われています。

その他の漢方薬は?

桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)は体力が中等度以上で便秘気味で頭痛や不眠や不安などの精神神経症状を伴うような証に適するとされ、月経困難症や月経痛などに対して有用とされています。

温経湯(ウンケイトウ)は体力が中等度以下で足腰や下腹部の冷えや痛みがあり手足のほてりや不正出血などを伴うような証に適するとされ、唇の乾燥や肌荒れを伴うような月経不順や月経困難などに対して有用とされています。

また激しい月経痛を伴う場合には筋肉のひきつりや痛みなどを和らげる芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)を使うこともあります。芍薬甘草湯は漢方薬の中でも即効性が期待できる漢方薬のひとつで、月経痛が激しい場合に頓服で用いることも可能です。

子宮内膜症で使われる漢方薬の副作用

一般的に漢方薬は副作用が少なく、体質や症状に合った薬を使った場合の安全性は高い薬とされています。

ただし、漢方薬も「くすり」ですので副作用がゼロというわけではなく、自然由来の生薬成分自体が体質や症状に合わなかったりすることもあります。また、生薬成分の適正な量を超えて服用した場合などでは好ましくない症状があらわれることもあります。

特に甘草(カンゾウ)は漢方薬の約7割に含まれる生薬成分で、加味逍遙散(カミショウヨウサン)、芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)などの構成生薬の一つでもあります。

他の病気で既に漢方薬を服用している場合や甘草の成分(グリチルリチン酸)を含む製剤(グリチロン®配合錠など)を服用している場合などでは、甘草の過剰な摂取に繋がる可能性もあります。もちろん治療上の理由から複数の漢方薬を組み合わせて使うこともありますが、場合によっては甘草の過剰摂取により偽アルドステロン症(偽性アルドステロン症)が起こる可能性もあります。

しかし副作用や好ましくない作用があらわれるのは比較的稀とされ、仮にこれらの症状があらわれたとしてもその多くは漢方薬を中止することで解消できます。

注意したいのは、何らかの気になる症状が現れた場合でも自己判断で薬を中止することはかえって治療の妨げになる場合もあるということです。

もちろん非常に重い症状となれば話はまた別ですが、漢方薬を服用することによって、もしも気になる症状が現れた場合は自己判断で薬を中止せず、医師や薬剤師に相談することが大切です。

4. 子宮内膜症の治療にピルを使う?ピルの詳細情報

子宮内膜症による主な症状のひとつに月経時の疼痛(痛み)があります。月経の痛みが比較的重度で日常生活に支障がでるような状態を月経困難症と言います。月経困難症はホルモンバランスの乱れが原因となっている場合があります。ホルモンバランスとは主にエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲストーゲン(黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモンのバランスを指します。

月経困難症の治療薬としての「ピル」の多くはこの2種類の女性ホルモンの配合剤であり、

ホルモンバランスを整えることによって月経困難症の症状を軽減する効果が期待できます。

「ピル」が避妊薬としても使われているのは排卵後のホルモン状態と似た状態を作り出すことなどによって避妊効果をあらわすためです。

「ピル」には主に卵胞ホルモンの量によって一般的に、高用量ピル(高用量ホルモン製剤)、中用量ピル、低用量ピルに分類されます。月経困難症に対しては長年、中用量ピルによって治療がされてきましたが、血栓症などの深刻な副作用が起こる可能性を最小限に抑えるため、近年では低用量ピルによる治療が多くなっています。「ピル」の用途は広く、月経困難症の他、月経前症候群PMS)、無月経更年期障害不妊症などの婦人科疾患に使われる場合もあります。ここでは主に月経困難症に使われる「ピル」をいくつかみていきます。

ヤーズ®配合錠、ヤーズ®フレックス配合錠

低用量ピルに分類され、月経困難症への保険適用をもつ製剤です。

卵胞ホルモン(エチニルエストラジオール)の量を従来の低用量ピルに比べて減量した製剤で、超低用量ピルと呼ばれることもあります。「ピル」は通常、『月経周期を28日として、21日間ホルモン成分を服用し、残り7日間は休薬(又はプラセボといってホルモン成分が入っていない偽薬を服用)する』のが一般的ですが、ヤーズ®配合錠は『ホルモン成分が含まれる実薬を24日間服用し、プラセボを残り4日間服用する製剤』になっています。休薬期間を7日から4日に短縮することで、休薬期間中の卵胞の発育抑制を維持しホルモン変動を少なくすることで、ホルモンが消退時に起こる下腹痛、頭痛などを軽くする効果が期待できる製剤となっています。深刻な副作用は卵胞ホルモンの量が少量であるなどの理由からまれにしか現れないとされていますが、血栓症などには注意が必要です。

このヤーズ®配合錠など「ピル」の一般的な処方になっている「28日周期処方」では、休薬期間によって月1回の周期的な消退出血が認められる場合があります。子宮内膜症や月経困難症による痛みの程度はこの消退出血(月経)時に高いという傾向があります。ヤーズ®フレックス配合錠は最長で120日まで休薬期間を設けずに連続投与を可能にした製剤(出血などの状態によっては休薬が指示される場合もあります)で、休薬による消退出血の頻度の軽減などのメリットが考えられます。またヤーズ®フレックス配合錠には効能効果として「月経困難症」の他に「子宮内膜症に伴う疼痛の改善」が認められています。

ルナベル®配合錠LD、ルナベル®配合錠ULD

ルナベル®はヤーズ®と同じく低用量ピルに分類される製剤です。月経困難症への保険適用をもち、ルナベル®配合錠LDとルナベル配合錠ULDの規格があります。ルナベル®配合錠ULDは黄体ホルモン(ノルエチステロン)の量はLDと同量のまま、卵胞ホルモン(エチニルエストラジオール)の量を減らした製剤になっています(先ほどのヤーズ®同様、従来の「低用量ピル」に比べ卵胞ホルモンの量を減量した製剤であるため超低用量ピルと呼ばれることもあります)。

これによりルナベル®配合錠ULDは血栓症(静脈血栓症)などの起こる可能性をさらに軽減する期待ができる一方で、不正性器出血があらわれる発現率が配合錠LDに比べ高いという報告もあり通常、症状や治療目標などを考慮したうえで選択されています。

ルナベル®の服用に関してはLD、ULD共に通常、一般的な「28日周期処方」と同じく「21日間連続投与の後、7日間の休薬」といった方法によって行われます。

ここで挙げたヤーズ®とルナベル®は月経困難症への保険適用をもつ製剤ですが、マーベロン®、トリキュラー®などの自費薬(自由診療の治療薬)として使われている「ピル」が月経困難症などの治療を目的として使われる場合もあります。また月経困難症などの保険適用をもつプラノバール®配合錠、ソフィア®A配合錠などの中用量ピルが治療に使われる場合もあります。個々の体質やホルモンバランスなどによっても適する製剤が異なる場合も考えられるため、事前に医師とよく相談して、より適切な治療を行なっていくことが大切です。

ピルの副作用とは

ピルの副作用で主なものは、消化器症状(吐き気、下痢、腹痛、便秘など)、乳房痛、頭痛、不正性器出血、月経過多、にきび、うつ(抑うつ)などが挙げられます。

一般的なピルは卵胞ホルモンと黄体ホルモンが含まれるため、上記の症状の多くがこのホルモンが体内に及ぼす影響によって引き起こされると考えられます。

また非常にまれとはされていますが、血栓症などの深刻な副作用があらわれる可能性もあります。血栓性静脈炎などの静脈系の副作用は主に卵胞ホルモンに起因すると考えられています。一方、虚血性の心疾患や高血圧などの動脈系の副作用は主に黄体ホルモンに起因すると考えられています。

これらの副作用を考慮して、卵胞ホルモンの低用量化、従来のピルに含まれている成分に比べより天然の黄体ホルモンに近い合成黄体ホルモン(デソゲストレルなど)の開発、などが行われ現在、主流となっている低用量ピルに応用されています。

ピルを服用することで起こる副作用の多くは服用開始から初期にあらわれ継続していくにつれ軽減します。また血管系の副作用が起こる可能性も非常にまれとされています。

ただし、高血圧、心疾患、糖尿病などの持病があったり(またはこれらの病気の予備軍であること)、家族に血栓症を発症した人がいる場合には注意が必要です。他にも血管障害の原因となる喫煙をする人、肝機能障害を持つ人、女性ホルモンに関わる病気(子宮筋腫乳がんなど)の持病を持っていたり過去に患ったことがある人なども注意が必要とされています。

5. ジエノゲスト(主な商品名:ディナゲスト®)とは?

黄体ホルモンであるプロゲステロンの受容体に対して作用し、卵巣機能の抑制作用や子宮内膜細胞の増殖抑制作用によって子宮内膜症へ効果をあらわす薬です。

子宮内膜症の治療薬には注射剤や点鼻薬などの剤形もありますが、ジエノゲストは経口投与(飲むこと)において有効成分が循環血液中までたどり着きやすいという特性もあり、飲み薬(内服薬)による治療を可能にしています。また子宮内膜症の治療に使われる製剤には一定の投与期間が決められているものがありますが、ジエノゲストは治療上必要であって定期的な検査等を行うなど十分注意がされているといった条件を満たせば長期的な投与も可能です。

ジエノゲストは鎮痛剤(痛み止め)の効果が不十分な場合や子宮内膜症そのものの治療が必要な場合において優先的に使われる薬剤のひとつになっています。またジエノゲストは子宮の筋層に子宮内膜ができる子宮腺筋症に対しても有用で、先発医薬品であるディナゲスト®は2016年に「子宮腺筋症に伴う疼痛の改善」の効能・効果が追加承認されています。

注意すべき副作用としては不正出血、ほてり、頭痛、吐き気や腹痛などの消化器症状、倦怠感などです。不正出血は特に注意すべき副作用のひとつで、場合によっては大きな出血や出血に伴う貧血などを引き起こす可能性も考えられます。またジエノゲストでは比較的少ないとされていますが、更年期障害のような症状があらわれる場合もあります。その他、骨量の低下などにも注意が必要です。

GnRHアゴニスト、偽閉経療法(ぎへいけいりょうほう)とは?

GnRHアゴニストは、脳の下垂体(かすいたい)という部分に作用します。下垂体からはゴナドトロピンというホルモンが放出されています。ゴナドトロピンが卵巣に届くと女性ホルモンが分泌されます。

GnRHアゴニストは、下垂体に作用することにより下垂体から卵巣への調節システムの働きを変え女性ホルモンが分泌されにくいようにします。GnRHアゴニストを用いたホルモン療法は閉経したときと同じ状態になるので偽閉経療法と呼ばれることもあります。

子宮内膜症は女性ホルモンが多いと大きくなり、少なくなると小さくなる特徴があります。ホルモン療法により女性ホルモンの分泌量が減少すると子宮内膜症が小さくなり症状が緩和されます。

ホルモン療法をやめると子宮内膜症が再び大きくなり症状がでます。症状を抑えるために長期に渡ってホルモン療法を行うとエストロゲンが不足することによる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などの症状がでます。したがってGnRHアゴニストは6ヵ月以上使用することはありません。