だいちょうがん
大腸がん
大腸の粘膜にできるがん。国内のがん患者数がもっと多く、死亡者数も女性において原因の1位
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最終更新: 2024.11.11
大腸がんの基礎知識
POINT 大腸がんとは
大腸がんは大腸の粘膜にがんができて、周囲の正常な細胞を壊しながら広がっていく病気です。大腸がんはできた部位によって結腸がんと直腸に分けられます。女性のがんによる死因の第1位で男性のがんによる死因の第3位になります。主な症状は下痢・便秘・血便・便が細くなるなどですが、進行すると体重の減少や食欲の低下などが起こります。 症状や身体診察に加えて、便潜血検査や血液検査や画像検査で大腸がんが疑われた場合に、大腸カメラを行って診断します。治療には手術・化学療法(抗がん剤治療)・放射線治療があり、病状に最も適した治療法が選択されます。大腸がんが心配な人や治療したい人は、消化器内科や消化器外科を受診して下さい。
大腸がんについて
- 大腸の粘膜に
がん ができて、周囲の正常な細胞を壊しながら広がっていく病気 - 大腸がんを大きく分けると、結腸がんと直腸がんとになる
- 明らかな原因は分かっていない
- 大腸がんは欧米人に多いこと、日本人の大腸がんの患者数が昔より増えていることから、欧米風の肉類中心の食事や脂肪の多い食事が関係しているのではないかという考えもある
- 大腸がんになる流れは主に2つのパターンがある
- 腸ポリープが悪性に変わる
- 粘膜からがんが直接発生する
- がんによる死亡の原因として、女性では第1位、男性では肺がんについで2位
- 年間罹患者数(2022年)
- 男性:89,500人
- 女性:68,700人
- 年間死亡者数(2022年)
- 男性:28,500人
- 女性:25,500人
- 年間罹患者数(2022年)
- 傾向として、50代以降から発病する人が増える
大腸がんの症状
大腸がんの検査・診断
- 便検査
- 大腸がんを見つけるために最も簡便な検査
- 便に血液が混じっていないか調べる
- 血が混じっていれば、
内視鏡 検査などの精密検査を行う - 血が混じっていなければ、その後定期的に便検査を行う(通常1年に1度)
- 血が混じっていれば、
- わずかな
血便 は目で見ても血液が混じっているかわからないので、検査することで早期に見つけることが可能となる
- 血液検査:全身の状態や
腫瘍マーカー などを調べる- 大腸がんの腫瘍マーカーは、CEA、CA19-9、p53
抗体 など
- 大腸がんの腫瘍マーカーは、CEA、CA19-9、p53
- 診断に必要な検査:大腸の中に
がん の疑いのある腫瘍 がないかなど調べる大腸カメラ (下部消化管内視鏡検査 )消化管 の中を直接みることができるので最も正確に診断できる- 大腸がんが疑わしい
病変 を見つけたら、細胞を採取して顕微鏡検査(病理検査)で詳しく調べる
下部消化管造影検査 造影 剤(バリウム)を肛門から注入し放射線を使い大腸の形を観察する
組織診 :大腸カメラの際に、がんの疑いのある腫瘍を切り取り、がん細胞の有無や悪性度 を詳しく調べる- 画像検査:がんの大きさや広がり、
転移 の有無などを詳しく調べる腹部超音波検査 :主に上腹部臓器(特に肝臓)への転移をみるために行われるCT 検査:肝転移やリンパ節転移 、肺転移などの有無をみるため、造影可能な場合であれば胸腹骨盤部の造影CTが行われることが多いMRI 検査:大腸がんの中でもとくに直腸がんであれば主に膀胱への浸潤の有無をみる目的で行われることがある
- さまざまな検査を行い、がんの深さや
リンパ節 や他の臓器への転移があるかどうかを調べて、がんの進行度(ステージ )を判断する
大腸がんの治療法
- 治療の原則は、「
がん をできる限り取り除く」ことと「がんによる身体への影響をできる限り小さくする」こと - がんを出来る限り取り除く治療
- 取り除く方法としては二つ
内視鏡 (大腸カメラ )を使って取り除く- 手術で取り除く
- 内視鏡を使う方が体への負担が少ないが、治療できるのは初期のがんに限られる(初期というのは、がんが大腸の壁の浅いところにあったり、サイズが小さいもの、臓器にも
リンパ節 にも転移 のないもの) - 内視鏡による治療が行えない場合、手術が検討される
- 肛門に近い部分のがん(直腸がん)は、手術でがんを取り除くと同時に人工肛門を作る場合がある
- 大腸がんが接している臓器(膀胱、子宮)に広がっている場合は広がった臓器ごと摘出(骨盤内臓全摘)する
- 転移がある場合は手術ではなく
化学療法 が行われることが多い- 肝臓や肺への転移で、転移の個数が少ない場合や経過で個数が増えてこない場合は、手術で肝臓や肺に転移をしたがんも同時に取り除くことがある
- 大腸がんのために大腸が詰まってしまった場合(腸閉塞)は緊急手術を行うこともある
- 化学療法による治療は、手術後に再発を抑えることを目的とする場合や転移をしていて手術で取りきれないような場合に行われる
- 転移をしている場合、化学療法による治療でがんを完全に治すことは困難であるため
- あくまでもがんの進行を遅らせたり、一時的に小さくしたりする効果を期待して行われる
- ただし、化学療法がよく効いて手術で切除ができるようになる場合もある
- 取り除く方法としては二つ
- がんによる身体への影響を出来る限り小さくする治療
- 緩和治療、ベストサポーティブケア
- がんによる苦痛を取り除き、自分らしい生活ができるようにすることが目標
- 薬物療法、運動療法、音楽療法、動物療法などさまざまなことが行われる
- 緩和治療、ベストサポーティブケア
予後 5年生存率 は早期で見つかった場合には95%以上であるが、進行してから見つかった場合にはこの数字は下がる
大腸がんに関連する治療薬
白金製剤(プラチナ製剤)
- 細胞増殖に必要なDNAに結合することでDNA複製阻害やがん細胞の自滅を誘導し抗腫瘍効果をあらわす薬
- がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
- 細胞の増殖には遺伝情報をもつDNAの複製が必要となる
- 本剤はがん細胞のDNAと結合し、DNAの複製とがん細胞の自滅を誘導することで抗腫瘍効果をあらわす
- 本剤は薬剤の構造中に白金(プラチナ:Pt)を含むため白金製剤と呼ばれる
NK1受容体拮抗薬
- 抗がん薬による嘔吐中枢への刺激を阻害し、悪心(吐き気)・嘔吐を抑える薬
- 抗がん薬投与による悪心・嘔吐は延髄に嘔吐中枢に刺激が伝わりおこる
- 脳のCTZや中枢神経に多く存在するNK1(ニューロキニン1)受容体が作用を受け嘔吐中枢に刺激が伝わる
- 本剤はNK1受容体を阻害することで嘔吐中枢への刺激を抑える
- 原則として、5-HT3受容体拮抗薬(吐き気止め)と併用する
5-HT3受容体拮抗薬
- 抗がん薬による嘔吐中枢への刺激を阻害し、悪心(吐き気)・嘔吐を抑える薬
- 抗がん薬投与による悪心・嘔吐はいくつかの経路によって延髄にある嘔吐中枢に刺激が伝わることでおこるとされる
- 伝達物質セロトニンは脳のCTZ(化学受容器引金帯)や消化管にある5-HT3受容体を介して嘔吐中枢へ刺激を伝える
- 本剤は5-HT3受容体への拮抗作用により、嘔吐中枢への刺激を阻害する
- 薬剤によっては、放射線照射や手術後における消化器症状(吐き気など)に使う場合もある
大腸がんが含まれる病気
大腸がんのタグ
大腸がんに関わるからだの部位

