きゅうせいちゅうじえん
急性中耳炎
耳の奥の中耳という場所に感染が起こる病気で、子どもに多い
24人の医師がチェック 255回の改訂 最終更新: 2023.07.30

急性中耳炎は子供の病気?

子供は風邪をひくたびに急性中耳炎を繰り返す印象がありますね。子供の急性中耳炎の原因、症状、治療、予防法などについて見ていきましょう。

1. 子供の急性中耳炎の原因

耳の構造のイラスト。中耳は外耳と鼓膜で隔てられている。上咽頭から耳管を通じて空気が出入りしている。

急性中耳炎とは鼓膜の奥の中耳と呼ばれる空間に、ウイルス細菌が入って、感染を起こし、炎症を起こした状態です。

中耳は鼻の奥の空間(上咽頭)とつながっています。中耳と上咽頭の間には耳管(じかん)という管があり、ここを通って空気が出入りしています。

急性中耳炎は多くの場合、耳管を通って鼻水のウイルスや細菌が中耳に入って起こります。そのため、鼻水のでる風邪をひいた後には急性中耳炎になりやすいのです。

急性中耳炎にはなぜなるの?

急性中耳炎は鼓膜の奥にある中耳にウイルスもしくは細菌が感染して起こります。中耳に感染を起こす経路は次の3つが考えられています。

  1. 耳管を通って感染
  2. 血液に乗った細菌が感染
  3. 鼓膜の外から感染(鼓膜に穴があいている場合)

ほとんどの場合は1の「耳管を通って感染」する経路で感染を起こします。もう少し具体的に言うと、鼻水の中にいるウイルスや細菌が鼻の奥の耳管の入り口から中耳に入りこみ感染を起こします。稀ですが2や3の経路から細菌が入り込むこともあります。

急性中耳炎を繰り返しやすい人っているの?

繰り返す急性中耳炎を反復性中耳炎と言います。「小児急性中耳炎診療ガイドライン」では、過去6か月以内に3回以上、12か月以内に4回以上の急性中耳炎にかかることと定義されています。反復性中耳炎では、急性中耳炎を繰り返す場合と、急性中耳炎が滲出性中耳炎に移行し、再び急性中耳炎になる場合の2つのパターンがあります。


反復性中耳炎になりやすい背景として、次のものがあります。

  • 患者さんの背景
    • 2歳未満の低年齢
    • 患者の免疫能の低下
  • 病気を起こす細菌の背景
    • 起因菌の耐性
  • 生活・環境の背景
    • 兄弟の存在
    • 保育園児
    • おしゃぶりの使用
    • 受動喫煙

■患者さんの背景
免疫能は母乳からを獲得できるとされていて、母乳哺育を行っていない場合、反復性中耳炎の発症率が高いという報告もあります。しかし、母乳哺育ができなくてもいずれ子ども自身の免疫システムが発達していくので、母乳を与えなかったからといって必ずしも病気に弱い子になるわけではありません。できる範囲で母乳を与えるのは望ましいことです。

■病気を起こす細菌の背景
近年、急性中耳炎を起こす細菌の耐性化がすすんでいます。耐性化とは特定の抗菌薬抗生物質、抗生剤)が効きにくくなることです。耐性化した細菌が急性中耳炎を起こすと反復したり、治りにくくなったりする原因になります。

■生活・環境の背景
兄弟がいたり、保育園に通園していると周りから風邪をもらいやすく、風邪から急性中耳炎を繰り返して発症しやすくなります。おしゃぶりや指しゃぶりは、鼻やのどに吸い込む圧力がかかるため、耳管機能が悪化し、鼻の奥のウイルスや細菌が中耳に入りやすくなると考えられています。受動喫煙については、耳管粘膜の細胞の働きを低下させるため、急性中耳炎にかかりやすくなります。

赤ちゃんが急性中耳炎になりやすいのはなぜ?

赤ちゃんが急性中耳炎になりやすい理由は、耳管の形にあります。大人に比較して赤ちゃんの耳管は太くて水平です。そのため、鼻からのウイルスや細菌が耳の中に到達しやすいのです。
また、赤ちゃんは免疫能が未熟です。このため、生後6か月から2歳半くらいまでは急性中耳炎にかかりやすくなっています。それとは別に、哺乳や指しゃぶり、おしゃぶりなどを使うと、鼻やのどが陰圧になりやすいため、耳管の機能が悪化しやすく、急性中耳炎になりやすくなっています。
2歳くらいまでは急性中耳炎を繰り返しますが、5歳くらいになると頻度はだいぶ減ります。

急性中耳炎はうつる?

急性中耳炎自体がうつることはありません。しかし、急性中耳炎の原因は鼻水にいるウイルスや細菌です。それらが、咳や鼻水からうつる可能性はあります。風邪から急性中耳炎に移行するかは個人の体調などで差があります。

飛行機に乗ると急性中耳炎になる?

一般的に飛行機に乗って起こる中耳炎は航空性中耳炎と呼ばれます。気圧の関係で中耳内の圧が変化して起こるもので、急性中耳炎とは別のものです。航空性中耳炎については「耳が痛いのは中耳炎なの?中耳炎とは?」で詳しく解説しているので参考にして下さい。

子どもは耳管の機能が未熟で中耳炎を起こしやすいです。鼻水の多い時に飛行機に乗ると、耳管の機能がいつもより低下しているため、圧の調整ができずに急性中耳炎を発症することもあります。

2. 子供の急性中耳炎の症状

急性中耳炎の症状といえば、耳の痛みと考える人が多いと思います。その他にどのような症状がでるかみてみましょう。小さい子どもは自分の言葉で症状を訴えられないので、大人がしぐさに注目して症状を推測することになります。
急性中耳炎の子供にみられる症状には以下のようなものがあります。

  • 耳に痛みを感じる
  • 耳を手で触る
  • 熱がでる
  • 機嫌が悪い
  • なかなか泣きやまない
  • 粘っこい鼻水が出る
  • 食欲がない
  • 元気がない
  • 耳が聞こえにくい

さらに発症から時間が経つと以下のような症状が現れることがあります。

  • 耳の穴から液体がでる(耳だれ、耳漏:じろう)
  • 耳の後ろが腫れ上がって、耳が起き上がる(耳介聳立:じかいしょうりつ)
  • めまいがする
  • 意識がボーとしている

これらの症状が見られるときには医療機関をすみやかに受診して下さい。急性中耳炎の症状は「急性中耳炎の症状」でも詳しく説明しているので参考にして下さい。

子供の熱は急性中耳炎?

子供の熱の原因はさまざまですが、急性中耳炎はその1つです。ただし、発熱のたびに急性中耳炎になっているわけではありません。むしろ一般的なかぜ急性上気道炎)によるものの方が多いです。急性中耳炎では程度によっては処置が必要になる場合があるので、前に説明した「急性中耳炎の症状」に注目して、疑わしい場合には小児科や耳鼻咽喉科を受診して下さい。

子供の耳が痛いのは急性中耳炎?

1歳や2歳の子供が耳を痛いと訴える場合は、ほとんどの場合が急性中耳炎と考えられます。
耳の痛みの原因は急性外耳炎やのどの炎症によるものなどがありますが、小さい子供の場合は急性中耳炎がほとんどです。言葉をまだ発せない赤ちゃんの場合は、痛みを訴えることが難しく、耳を手で触るといった仕草や、ずっと不機嫌でぐずっているといった症状が急性中耳炎を疑うきっかけになります。
5歳くらいになると急性中耳炎の頻度が減ってきます。そのため、それ以上の年齢では、耳の痛みが必ずしも急性中耳炎ではない可能性があります。

耳だれは急性中耳炎?

子供の耳の穴に液体がついていて、驚いたことがある方もいるかもしれません。耳だれは耳漏(じろう)ともいいます。急性中耳炎で炎症が強くなると、中耳にたまったが多くなり、鼓膜を破って外耳道側にでてきます。これが耳だれです。白色や黄色の場合も、無色透明の場合もあります。器具を使って耳の中を見ると鼓膜の穴から拍動して液体が流れ出ているところを観察できることがあります。急性中耳炎が改善していくと多くの場合、穴は自然に閉鎖しますので安心して下さい。

耳だれは急性中耳炎以外でも出ることがあります。例えば、耳掃除をしすぎたときや、鼓膜の手前の外耳道に炎症がおきた急性外耳炎や、慢性中耳炎に感染が合併した場合などです。耳垢がベタベタしたタイプの場合、茶色いネバネバした液体が付着しているようにみえ、赤ちゃんなどでは耳だれのようにも見えます。耳だれが疑われる場合は、急性中耳炎などの炎症がないか、一度耳鼻咽喉科で見てもらって下さい。

子供が耳を痛がった時の対処は?

急性中耳炎では耳が痛くなります。耳の痛みは身体が温まった時に悪化しやすく、お風呂あがりや、昼寝や夜に一眠りした後に強くなります。休日や夜間では、子供が痛みを訴えた時に困ることが多いと思います。

痛みに対しては、解熱鎮痛薬が有効です。大人が使う薬の中には、子供が使うと危険な副作用を起こしやすいものもあるため、子供ではアセトアミノフェン(商品名カロナール®、アンヒバ®など)を用います。

アセトアミノフェンは病院で処方されることもありますが、薬局やドラッグストアで処方箋なしで買える薬の中にもアセトアミノフェンを主成分とするものはあります。アセトアミノフェン以外の有効成分を含むものは子供が使えない場合があるので、薬剤師に相談したうえで買ってください。

急性中耳炎の痛みは発症から2-3日のみで、強くなったり弱くなったりの波があります。大泣きしていたと思ったら、ケロッとしていることを繰り返すのはそのためです。休日や夜間に痛みが出た場合には、手持ちの解熱鎮痛薬を飲んで様子を見ることもできます。医療機関に受診するのは翌日でも構いません。

ただし、耳が痛いだけでなく、子供の顔色が悪く、ぐったりしたり、呼びかけへの反応が鈍い場合は、夜間でも構いませんので、耳鼻咽喉科もしくは救急科を受診して下さい。詳しくはこのページの「急性中耳炎の治療中に気をつけること」の章をご覧ください。

両耳とも急性中耳炎になることはある?

両耳とも急性中耳炎になることはあります。鼻水内のウイルスや細菌が耳管をとおって耳に入れると、急性中耳炎になるので、両耳ともいっぺんに急性中耳炎になることもあります。

治療法は片耳の急性中耳炎と同じです。両耳になったからといって特に危険なわけではありません。

急性中耳炎を放置したらどうなる?

耳の構造のイラスト。中耳は外耳と鼓膜で隔てられている。上咽頭から耳管を通じて空気が出入りしている。

中耳は骨に囲まれた空間にあります。急性中耳炎を放置して治療しない場合は、周囲の構造物に炎症が広がる可能性があります。急性中耳炎によって引き起こされた別の病気を合併症(がっぺいしょう)とも言います。例を挙げます。

  • 内耳
  • 急性乳様突起炎
  • 皮下膿瘍
  • Gradenigo症候群(グラデニーゴ症候群)
  • Bezolt膿瘍(ベゾルトのうよう)
  • 髄膜炎、脳炎

合併症はさまざまです。それぞれで特徴が異なります。

■内耳炎
内耳炎とは内耳に炎症が波及して、難聴やめまいを起こす病気です。内耳は中耳の奥で聞こえやめまいの神経細胞がいる空間です。中耳炎の炎症がひどくなると、内耳へも炎症が起き、内耳炎を起こします。めまいに伴って嘔気(吐き気)や嘔吐を起こすことがあります。

■急性乳様突起炎
急性乳様突起炎は子供に多い病気です。耳の後ろを手で触れると硬い骨があります。この骨は頭蓋骨(とうがいこつ)の一部で乳様突起(にゅうようとっき)と呼ばれる部分です。乳様突起の中はハチの巣のように穴がたくさん開いた構造になっていて、乳突蜂巣(にゅうとつほうそう)と呼ばれます。乳様突起の中に感染が及んでいる状態が急性乳様突起炎です。

■皮下膿瘍
中耳炎が波及して耳の後ろの皮下に膿瘍(のうよう)を作ることがあります。膿瘍とは膿(うみ)の溜まりのことです。耳の後ろに膿瘍があると、耳介が前方に立ち上がり、耳介聳立(じかいしょうりつ)と呼ばれる特徴的な見た目になります。さらに皮下の膿瘍は炎症で乳突蜂巣を溶かすことがあります。骨を溶かしている場合は、炎症を抑える目的で手術を行い、皮膚を切開して膿をだし、溶けた骨を取り除く必要があります。

■Gradenigo症候群
Gradenigo症候群は頭蓋の内側に炎症がおよんだ状態です。顔の感覚の神経や、目を動かす神経に炎症を起こします。そのため、顔のしびれや、物が二重に見える複視という症状を起こします。

■Bezolt膿瘍
Bezolt膿瘍は乳様突起の部分にできた膿瘍が、頸(くび)まで広がって、炎症を起こして頸が傾いた斜頸(しゃけい)になった病気です。

髄膜炎・脳炎
中耳炎の炎症が脳の方へおよぶと、髄膜炎や脳炎になり、意識がぼーとしたり、吐き気や嘔吐などを起こします。

現在では抗生物質の発達で、これらが起きることは稀になっています。万一合併症が起きた場合は緊急入院して、強力な抗生物質の点滴治療を行ったり、手術が必要になることがあります。

3. 子供の急性中耳炎の治療

急性中耳炎の治療方法は重症度によって異なりますが下記のものになります。

  • 細菌感染に対する治療
  • 鼻汁を減らすための治療
  • 痛みの治療

急性中耳炎の治療には3つのアプローチがあります。以下ではそれぞれについて説明します。

■細菌感染に対する治療

急性中耳炎はウイルスや細菌が原因になります。ウイルスと細菌はまったく違います。ウイルス性の場合は抗菌薬(抗生物質)が効きません。抗生物質は細菌に効果をあらわす薬です。軽症の場合はウイルスが原因のことが多く、抗菌薬の投与をせずに経過観察が推奨されています。不必要な抗菌薬の投与は効果がないばかりか、下痢などの副作用を起こし耐性化した細菌を作り出すなどの問題が起こすからです。
細菌性の場合は抗生物質が有効なため、内服の抗菌薬を使用します。抗菌薬の効果をみるために3-5日後には再度鼓膜所見を耳鼻咽喉科などで評価してもらう必要があります。ペニシリン系抗菌薬(商品名サワシリン®、ワイドシリン®など)が一番最初に用いられる抗菌薬です。その他に、βラクタマーゼ配合ペニシリン(クラバモックス®)を用います。抗菌薬は年齢や治療の前に抗菌薬を使用していたなどを調べた上で選択されます。急性中耳炎の抗菌薬治療については「急性中耳炎の治療薬ページ」で詳しく説明しているので参考にして下さい。抗生物質を使用すると、下痢の副作用が出やすいため、整腸剤も一緒に処方されます。
また、必要に応じて鼓膜切開という治療を行うことがあります。鼓膜切開は鼓膜に穴をあける治療です。急性中耳炎では、膿が中耳の中にあります。この膿を、鼓膜に穴をあけることで排泄させる治療です。鼓膜切開の有効性については、有効であるという報告と、有効性がないという報告の両方があるので、行うかどうかは個々の状態に応じて、相談して決定されます。鼓膜切開は「急性中耳炎の治し方は?」で詳しく解説しているので参考にして下さい。

■鼻水を減らすための治療

鼻水が多いと、鼻の奥から中耳にウイルスや細菌が入りやすいので、鼻水を減らすことも中耳炎の治療の1つです。鼻水の吸引処置(鼻処置)がどのくらい急性中耳炎の早期治癒に有効かは現時点では不明ですが、鼻処置を行うことで、鼻水の中にいる細菌の量は減らせることはわかっているので治療の中に取り入れられています。小さな子供では、自分で上手く鼻をかむことができないため、鼻水の吸引をすると鼻水の量を減らすことができます。耳鼻咽喉科や小児科で鼻水を吸引してもらえる他、自宅で行える吸引器を用いる方法もあります。吸引器には親が口で吸引するタイプ、掃除機に接続して吸引するタイプ、電動で吸引するタイプがあります。その他に、鼻水の粘り気を下げる目的で、粘液溶解薬を用いることがあります。

■痛みの治療

急性中耳炎では耳が痛みみます。痛みは常に同じではなく強くなったり弱くなったりします。痛みに対しては、アセトアミノフェン(商品名カロナール®、アンヒバ®など)を用います。アセトアミノフェンは痛みや熱を抑える作用があり一般的に使われている薬です。薬局やドラッグストアで処方箋なしで買える薬にもアセトアミノフェンを主成分とするものがあります。ただし、アセトアミノフェン以外の有効成分が配合されている薬もあり、子供が使ってよいかについては薬剤師に相談してください。体が温まると痛みが強まるため、耳の痛みがある時は入浴はシャワーにした方がよいです。

4. 子供の急性中耳炎の治療で気をつけることは?

急性中耳炎の治療で気をつけることについて病院に行くべきタイミングや治療中にしてもいいのか判断に迷うこと(入浴やプール、飛行機の利用など)について説明します。

急いで病院に行く時はどんな時?

夜中に子供が「耳が痛い」と泣いて起きてきた時は不安になると思います。夜中だと診療をしている病院が少ないため、病院に行くか悩むかもしれません。通常の急性中耳炎の場合は、急いで病院を受診しなければ行けない人は少なく、翌日の受診でほとんどは問題ないです。それでは、どんな時は病院に早く受診しなければならないのでしょうか。

急いで病院に受診をした方がいい場合としては、意識がボーとしている時と、耳の後ろが赤く腫れ上がって耳が起き上がってみえるような時(耳介聳立:じかいしょうりつ)です。

急性中耳炎では高熱がでるため、熱の影響で意識がボーとすることもあると思うのですが、明らかにいつもより元気がない、反応が鈍い時は、急性中耳炎から髄膜炎などをおこしている可能性や、他の重症な感染症のことがありますので、すみやかに医療機関を受診して下さい。

もうひとつは耳介聳立(じかいしょうりつ)です。急性中耳炎の炎症が悪化して周囲に広がると、耳の後ろの骨や、皮膚の下に炎症が広がり、皮膚が腫れぼったくなったり、赤くなります。耳の後ろが腫れると、耳が前方に立つようにみえます。これを耳介聳立といい、炎症が強いと骨が溶けて緊急手術が必要になることがありますので、耳の後ろが腫れて、耳が立つようにみえる場合は、早めに医療機関を受診して下さい。

治療中にお風呂に入ってもいい?

急性中耳炎の最初の、発熱時や耳痛がある時は、お風呂でゆっくり温まるのはお勧めしません。体の血流が良いと耳痛が悪化するため、湯船で長時間温まると、耳痛が悪化します。さっとシャワーを浴びる程度なら大丈夫でしょう。

治療中にプールに入ってもいい?

急性中耳炎の治療中のプールに関しては、体力を消耗するので、耳が痛い時期や発熱している時はやめたほうが無難でしょう。耳の痛みや発熱が改善した後ならプールに入っても構いません。

鼓膜や中耳の炎症が改善して、膿がなくなっても、中耳内に液体が残ることがあります。子供の場合はこの液体が長期間抜けないことが多いのですが、この液体自体は感染のもとになるものではないため、プールに入っても問題ありません。

ただし、プールに入って再度かぜをひくと、鼻汁が増え、急性中耳炎をぶり返すことがあることは考慮しておきましょう。

ちなみに、お風呂やプールで耳に水が入っても、外耳道と中耳は鼓膜で隔てられているため、急性中耳炎にはなりません。

治療中に飛行機に乗っていい?

急性中耳炎の治療中に飛行機に乗ると、痛みの悪化の可能性があります。急性中耳炎の時は、鼻と耳をつなぐ耳管(じかん)の機能が低下しているため、耳抜きができないことが多いためです。飛行機の離陸時は、鼓膜の内側の圧が外側より高くなるため、鼓膜が引き伸ばされて、更に痛みが強くなる可能性があります。

急性中耳炎の症状がまだ強い時にどうしても飛行機に乗らなければならない人は、乗る前に鼓膜切開をしておくことで、痛みを軽くすることができます。鼓膜切開を行うかどうかについては主治医と相談してください。

保育園は休まなければいけないの?

急性中耳炎の時の保育園に関しては、発熱がある時はお休みしたほうがいいでしょう。鼻水や咳がひどい時も周囲への感染を考えてお休みしてください。

解熱剤を用いなくても発熱がなく、鼻水や咳も改善した時は保育園への登園をしても安全です。保育園ごとに決まりがあるかもしれませんので、トラブルを防ぐという意味では電話などで相談してからのほうがいいでしょう。

5. 急性中耳炎の予防法は?

赤ちゃんや子供のうちは、風邪のたびに中耳炎になる子もいます。急性中耳炎の予防方法について説明していきます。

急性中耳炎の予防方法にはなにがあるの?

急性中耳炎の予防方法には以下のものがあります。

  1. 鼻水が多い時は、自宅で吸引したり、耳鼻咽喉科や小児科で治療を行う
  2. 肺炎球菌ワクチン(プレベナー13®)の接種を行う
  3. おしゃぶりを避ける
  4. 受動喫煙を避ける
  5. 人工栄養より母乳栄養のほうが予防効果はある

鼻水の中のウイルスや細菌が急性中耳炎の原因となります。鼻水が多い時には、早めに治療をすることで、急性中耳炎の発症を避けることができます。自宅で吸引する方法や、耳鼻咽喉科や小児科で、鼻水を吸引してもらう方法があります。

肺炎球菌ワクチンは現在は国が定める定期接種になっています。急性中耳炎の原因菌として肺炎球菌が最多なので、受けておくと急性中耳炎の予防にも役立つと考えられます。ワクチンは重要な話題ですので、この後詳しく説明します。

急性中耳炎を繰り返しやすい背景としては、おしゃぶりの使用や受動喫煙などがあります。これらを避けることで急性中耳炎にかかる可能性を下げることも期待できます。

人工栄養で育った子供は、母乳栄養の子供より急性中耳炎を繰り返すリスクが高いとも報告されています。

これらの予防を全て行ったからと言って急性中耳炎にならないとは限りませんが、予防の役に立つとは考えられます。取り入れられるものは取り入れてみて下さい。

肺炎球菌ワクチン(プレベナー13®)の予防接種

小児の急性中耳炎の原因となる細菌は、肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラキセラ・カタラーリスです。このうち、予防接種があるものが、肺炎球菌とインフルエンザ菌です。肺炎球菌に対するワクチンはPCV-13(プレベナー13®)、インフルエンザ菌に対するワクチンはHib(ヒブ)ワクチンです。

小児に定期接種されている肺炎球菌ワクチンは、PCV-13(プレベナー13®)です。平成25年まではPCV-7(プレベナー®)が用いられていましたが、より多くの肺炎球菌の型に効果のあるワクチンに切り替えになっています。肺炎球菌ワクチンは急性中耳炎のみではなく、肺炎髄膜炎の予防効果もあります。肺炎球菌は93種類の型があるといわれており、小児の感染症に多い型を13種類集めたのが、現在のワクチンです。

インフルエンザ菌はインフルエンザウイルスと異なる細菌です。 インフルエンザ菌には種類があり、急性中耳炎を起こすインフルエンザ菌に対するワクチンは、現在ありません。そのため、インフルエンザ菌に対するワクチン(Hibワクチン:ヒブワクチン)を接種しても、急性中耳炎の予防効果はありません。しかし、ワクチンで予防可能な、インフルエンザ菌による小児の髄膜炎は致命的で、後遺症の比率も多いため、予防接種は早めに受けるようにして下さい。

 

急性中耳炎のガイドラインはあるの?

診療ガイドラインとは、診断や治療の助けとするために、一般的に勧められる内容をまとめたものです。小児の急性中耳炎については、2006年に「小児急性中耳炎診療ガイドライン」が発行されています。その後、改定が行われて現在は2018年版が最新です。

このガイドラインでは、急性中耳炎の重症度分類と、重症度に応じた治療方針の選びかたが提案されており、診療の参考にされます。重症度分類では、症状と鼓膜所見(診察で見える様子)に点数をつけて重症度を3段階(軽症・中等症・重症)に分けます。

推奨されている方針としては、軽症の場合のみ抗菌薬を投与せずに3日間経過をみます。改善が無い場合は、抗菌薬を投与してさらに3-5日後に経過をみます。中等症以上では抗菌薬を投与して3-5日後に再度診察を行って、治療方法を検討します。重症以上では症状に応じて鼓膜切開も検討します。

診療ガイドラインはあくまで参考であるので、個々の体調や家庭環境などに応じて治療を行います。

参考文献:日本耳科学会, 日本小児耳鼻咽喉科学会, 日本耳鼻咽喉科感染症研究会:小児急性中耳炎診療ガイドライン2006