きゅうせいちゅうじえん
急性中耳炎
耳の奥の中耳という場所に感染が起こる病気で、子どもに多い
24人の医師がチェック 255回の改訂 最終更新: 2023.07.30

急性中耳炎の治し方は?

急性中耳炎では、軽症の場合は経過観察を行い、鼓膜の炎症所見や、発熱が強い場合などは抗菌薬を使用します。痛みが改善しても鼓膜の炎症が治るのは時間がかかります。実際にどんな治療を行うかを説明していきます。

1. 中耳炎は自然治癒する?

急性中耳炎でも軽症例では自然治癒することがあります。ウイルス性でも細菌性でも自然治癒することがあります。軽症例では抗菌薬を投与せずに3日程度経過をみて、改善しない場合は、抗菌薬を使用します。症状と鼓膜所見も参考に決めますので、自己判断で通院をやめずに、かならず耳鼻咽喉科に通院してください。

痛みが強い場合や、高熱が続く場合は自然治癒しないことが多いです。

2. 中耳炎の治療方法は?

急性中耳炎の痛みが出るのは、体が温まった時なので、お風呂上がりや一眠りした後に多いです。夜中は診療を行っている耳鼻咽喉科が少ないため、受診が難しいことがあります。夜中で受診が難しい場合は、手持ちの解熱鎮痛薬があれば使用してもかまいません。子供がぐったりしておらず、元気な場合は翌日受診して下さい。

急性中耳炎の治療は下記のものになります。

  • 感染に対する治療
  • 痛みや発熱に対する治療
  • 鼻水に対する治療

急性中耳炎の炎症が強い場合は、感染に対して抗菌薬を用います。その他に痛みや高熱が出た場合や、熱が出てぐったりしているときには解熱鎮痛薬を用います。

鼻水が多いと、中耳内のが排泄されなかったり、新たな感染源となるため、鼻水を減らす薬を用いたり、鼻水の吸引を行います。

中耳炎に使う抗菌薬(抗生物質)はどんなものがあるの?

軽症の急性中耳炎は抗生物質を使わないで経過をみますが、「症状が強い場合」や「耳から膿が出ている場合」などは抗生物質を使用します。それは、軽症例のほとんどが抗生物質が無効なウイルス感染が原因であり、軽症であれば細菌が原因であったとしても免疫力によって治ることができるからです。

近年、抗生物質を使った治療を行う際、耐性菌が問題になっています。本来有効なはずの抗生物質(抗菌薬、抗生剤)が効かない細菌を耐性菌といいます。耐性菌は抗生物質を使えば使うほど現れる危険性が高くなります。このため、抗生物質は本当に必要なときにだけ用いなければなりません。自然治癒が期待できる軽症例では抗生物質を温存することで耐性菌が現れにくくすることができます。

急性中耳炎の抗生物質は原因となる細菌に合ったものが選ばれます。急性中耳炎の原因となる細菌はインフルエンザ菌肺炎球菌、モラキセラ・カタラーリスが知られています。これらの抗菌薬に効果があるものは、アモキシシリン(商品名:サワシリン®、ワイドシリン®)などです。直近1ヶ月以内に抗生物質を使用した場合は、急性中耳炎の原因が耐性菌の可能性があり、アモキシシリン水和物・クラブラン酸カリウム(商品名:クラバモックス®)等を使用します。

急性中耳炎治療の目標は患者さんが治ることです。細菌を駆逐するのが目標ではなく、症状が改善することを目標に、抗生物質の使用を検討します。抗生物質を使用する時は、下痢の副作用がありますので、小児では整腸剤(商品名:ビオフェルミンR®など)を一緒に内服します。

急性中耳炎の抗菌薬治療は「感染症治療薬ガイドの急性中耳炎」でも詳しく説明しているので参考にして下さい。

3. 鼓膜切開

鼓膜切開は鼓膜に穴をあける治療です。急性中耳炎では、膿が中耳の中にあります。この膿を、鼓膜に穴をあけることで排泄させる治療です。しかしながら、鼓膜切開の有効性については、有効であるという報告と、有効性がないという報告の両方があります。

鼓膜切開はどんなときに行うのか?

重症例においては鼓膜切開を行ったほうが、早く改善したり、中耳炎や再発が少ないという報告もあり、診療ガイドラインでは重症例に限っては鼓膜切開を推奨しています。その他に急性中耳炎が悪化して、急性乳様突起炎や内耳炎になった場合は、中耳の内圧を低下させるために鼓膜切開を行います。

開けた穴は塞がるの?

鼓膜切開であけた穴は多くは自然に閉鎖して、穴が残ることはほとんどありませんが、まれに穴が残り、耳だれや難聴の原因になることがあります。

鼓膜切開は実際にどのように行うのか?

急性中耳炎の子供の鼓膜切開をする場合、外来で行うことが可能ですが、お母さんにしっかり子供を抱えてもらい行います。子供の場合は麻酔は通常は行わずに鼓膜切開を行います。なぜなら、鼓膜切開を必要とするような重症の急性中耳炎の場合は、すでに痛みが強いためです。

大人の場合は鼓膜麻酔を行うことがあります。鼓膜に麻酔薬をついた綿をのせて行う場合と、イオントフォレーゼという装置をもちいて麻酔をする場合があります。イオントフォレーゼでの麻酔は、外耳道に局所麻酔薬をいれて10分程度通電させて、麻酔を行います。

切開の方法は、鼓膜切開刀という小さなメスか、炭酸ガスレーザーを用いて鼓膜に穴をあけます。鼓膜切開刀で切開した場合は4日前後で切開部は閉鎖しますが、炭酸レーザーの場合は8−14日間程度、切開部が残存するため、鼓膜切開の効果が続くメリットがあります。炭酸ガスレーザーを扱っている医療期間と取り扱いがない医療機関があります。

鼓膜切開後も熱が続く時はどうする?

日本での小児急性中耳炎の研究では鼓膜切開を行ったほうが発熱症状の改善日数が早かったという報告もあります。一つの研究ですので判断ができませんが、鼓膜切開を行うと短期間で、解熱する効果があるかもしれません。

急性中耳炎による発熱は炎症によって起こります。急性中耳炎の炎症が強ければ、鼓膜切開を行っても、解熱しないこともあります。鼓膜切開後にも高熱が持続する場合は、急性中耳炎以外に肺炎などの、他の発熱の原因がある可能性を考えられます。耳鼻咽喉科の主治医に相談してみて、小児科などに受診してみてもいいでしょう。

4. 中耳炎の治療中の生活で気をつけることは?

急性中耳炎の治療中に気をつけることはあるのでしょうか。どんなことに気をつけて治療を行えば良いのか、見ていきましょう。

中耳炎でプールに入ってもいい?

急性中耳炎の治療中のプールに関しては、耳が痛い時期や発熱している時はやめたほうが無難でしょう。耳の痛みや発熱が改善した後に関しては、プールに入っても構いません。

鼓膜や中耳の炎症が改善して、膿がなくなっても、中耳内に液体が残ることがあります。子供の場合はこの液体が長期間抜けないことが多いのですが、この液体自体には感染がないため、プールに入っても問題ありません。ただし、鼻汁が増えると、急性中耳炎をぶり返すことがあることがあるので注意が必要です。

中耳炎で飛行機に乗ってもいい?

急性中耳炎の治療中に飛行機に乗ると、痛みの悪化の可能性があります。急性中耳炎の時は、鼻と耳をつなぐ耳管(じかん)の機能が低下しているため、耳抜きができないことが多いためです。飛行機の離陸時は、耳の中の圧が高まるため、鼓膜が引き伸ばされて、更に痛みが強くなる可能性があるからです。

どうしても飛行機に乗らなければならない時は、鼓膜切開を行って穴が開いた状態で飛行機に乗ると、痛みの軽減ができますので、主治医と相談してみましょう。

中耳炎の治療中にお風呂に入ってもいい?

急性中耳炎は最初の、発熱時や耳痛がある時は、お風呂は控えましょう。体の血流が良いと耳痛が悪化するため、湯船で長時間あたたまると、耳痛が悪化します。さっとシャワーを浴びる程度にしておきましょう。

5. 中耳炎の治療費は?

急性中耳炎の治療は主に、通院での処置や投薬による治療です。鼓膜切開を行った場合は別に費用がかかります。通院では初診料・再診料、処置料、薬剤料などがかかります。

外来通院でかかる保険点数の一例です

  • 初診料:時間内の一般・老人282点、乳幼児(6歳未満)357点
  • 再診料:時間内の一般・老人は73点、乳幼児(6歳未満)111点

時間外や休日、深夜の受診では初診料や再診料が高くなり、さらに加算点数が加わります。

  • 処方せん料:7種類未満の投薬68点、7種類以上の投薬40点
  • 処置:鼻処置12点、耳処置:25点
  • ネブライザー:ネブライザー12点、超音波ネブライザー24点
  • 外科的処置:鼓膜切開術690点、イオントフォレーゼで麻酔の場合は加算で45点

たとえば再診外来通院1回では3割負担で570円程度を窓口で支払うことになります。再診料73点+鼻処置12点+ネブライザー12点+処方せん料68点の合計で165点となります。1点あたり10円がかかる費用です。そのうち1割から3割が自己負担となります。つまり3割負担なら1650円のうち500円(端数四捨五入)を支払います。これにくわえて、薬剤料がかかります。

鼓膜切開術(イオントフォレーゼ麻酔なし)をした場合は3割負担であれば6900円の3割負担で2070円になります。

子供の場合は自治体によって医療費控除の年齢上限が異なりますが、無料で医療を受けられるところがほとんどです。