きゅうせいちゅうじえん
急性中耳炎
耳の奥の中耳という場所に感染が起こる病気で、子どもに多い
24人の医師がチェック 255回の改訂 最終更新: 2023.07.30

大人も急性中耳炎になる?

急性中耳炎は子供の病気と思っていませんか?大人で耳が痛いと、急性中耳炎を心配する人は多くはないかもしれませんが、大人でもかかることがあります。ここでは大人の急性中耳炎について説明します。

1. 大人の中耳炎の症状は?

耳の構造のイラスト。中耳は外耳と鼓膜を隔てて隣り合っている。

大人の場合の中耳炎の症状は、耳の痛みや聞こえの悪さが多いです。

  • 耳の痛み
  • 耳だれ(耳漏:じろう)
  • 難聴
  • 耳鳴り
  • めまい

風邪症状に続いて耳の痛みがでることが多く、が溜まると難聴が現れます。軽い難聴では、耳に水が入った感じ、膜がはったような感じといった症状が起こります。炎症が強くなると、中耳の膿が外にでてきて耳だれになります。中耳から内耳に炎症が広がると、難聴の悪化、耳鳴り、めまいなどの症状が起こります。

軽度の中耳炎の症状は?

軽度の中耳炎の場合はあまり痛みがなく、軽い難聴のみのこともあります。軽い難聴は、耳に膜がはったような感じ、こもったような感じがします。ほとんどの急性中耳炎は風邪症状に引き続いておきるので、鼻水などがでた後にこのような症状がある人は、耳鼻咽喉科に受診してみてください。

耳に水が入った感じがしたら中耳炎?

耳に水が入った感じは、軽い難聴で起こりやすい症状です。原因は急性中耳炎だけでなく、滲出性中耳炎や急性低音障害型感音難聴などがあります。病気によっては適切な治療が必要ですので、症状がある時は耳鼻咽喉科で調べてもらって下さい。ちなみに、耳に水が入っても急性中耳炎になることはありません。急性中耳炎の病気の部分は中耳であり、水が入る外耳道と中耳の間は鼓膜で仕切られているためです。

耳だれ・出血は中耳炎?

耳だれや出血が起きた場合は、耳になんらかの炎症が起きている可能性があります。急いで病院に行く必要はありませんが、数日内には一度、耳鼻咽喉科に受診してください。

急性中耳炎では炎症が強くなれば耳だれが出ることがありますが、出血は少ないです。出血があったのが耳掃除後などであれば、耳掃除の道具で外耳道を傷つけた急性外耳炎を考えます。

その他に耳だれや出血を起こす病気としては、真珠腫性中耳炎、慢性中耳炎、その他の特殊な中耳炎、悪性外耳道炎、外耳道がんなどがあります。いずれの病気か診断するために、一度、耳鼻咽喉科に受診してください。

咳・熱は中耳炎?

咳や熱は風邪の一つの症状として起こるので、咳や熱があるからといって、必ずしも急性中耳炎とは限りません。熱に関しては、大人では子供の急性中耳炎に比較して、高くなる割合は少ないです。しかし、熱に伴って耳の痛みがある場合には急性中耳炎の可能性が高いので、一度耳鼻咽喉科へ受診してみてください。

2. 大人が中耳炎になる原因は?

大人の急性中耳炎の原因も子供と同様、鼻水のウイルス細菌が鼻の奥から中耳に入ることで起こります。子供より大人のほうが、鼻と中耳をつなぐ耳管に角度がついているため、鼻から耳にウイルスや細菌が入ることは少なくなります。そのため、急性中耳炎になる回数は子供より大人で少ないです。

歯の治療で中耳炎になる?

歯の治療後に耳が痛くなることはありますが、急性中耳炎とは関係がありません。歯の治療後に耳が痛くなる例として、のどの痛みが響くことや、顎関節の痛みが耳の中の痛みと認識されることが考えられます。

もう少し詳しく具体的に説明します。
大臼歯(奥歯)の治療を行った際に、歯の周囲が腫れると、痛みの感覚の神経が、のどと共に耳の中も支配するため、耳の奥の痛みのように感じることがあります。同様に、のどの奥の炎症で耳の奥の痛みを感じることがあります。
他に、歯の治療後に耳が痛くなる原因として考えられるのは、顎関節症です。歯の治療の際に長時間、口を開けておくと、顎関節に炎症をおこすことがあります。顎関節は耳の前の辺りにあります。咀嚼時や大きく口をあけた際に、耳の周囲の痛みとして自覚することがあります。

急性中耳炎は繰り返す?

大人では子供に比較して急性中耳炎を繰り返す人は少ないです。子供が急性中耳炎を繰り返す原因は、鼻と中耳をつなぐ耳管の長さが短く、角度が平らなため、鼻水の中のウイルスや細菌が入りやすいからです。成長とともに耳管の角度や長さが変化するので、急性中耳炎になりにくくなります。

大人の急性中耳炎の特徴は?

大人が繰り返す急性中耳炎の特徴は特にありません。大人で繰り返し中耳炎になるのは、急性中耳炎ではなく、滲出性中耳炎のことが多いです。滲出性中耳炎は急性中耳炎と異なり、ウイルスや細菌などの感染を伴わない貯留液が中耳に貯まります。原因は慢性副鼻腔炎アレルギー性鼻炎、鼻の奥の上咽頭腫瘍などがあります。感染による炎症を伴わないので、耳の痛みがなく、難聴のみが起こります。50歳ごろから加齢によって耳管機能が低下して、滲出性中耳炎を繰り返しやすくなります。

3. 大人の中耳炎の治療は?

大人の急性中耳炎の治療は、子供と同じです。
軽症の場合は鎮痛薬などのみで経過観察を行います。症状や、鼓膜の炎症が強い場合は、細菌感染の可能性を考えて抗菌薬抗生物質、抗生剤)を使用をします。
痛みが改善した後も、中耳の炎症が改善するのは時間がかかることが知られています。中耳の炎症が残っているうちは、耳の聞こえにくさなどの症状が残存します。耳の痛みが消失しても、聞こえにくさなどがある人は、耳鼻咽喉科でもう一度みてもらってください。

中耳炎を放置するとどうなる?

急性中耳炎を放置した場合は、軽症であれば治癒します。しかし、炎症が強い場合は、耳の周りに炎症が広がります。ひとつの病気によって引き起こされるほかの病気を合併症(がっぺいしょう)と言います。急性中耳炎にもいくつか合併症があります。

急性中耳炎に多い合併症として、中耳の奥にある内耳に炎症を起こし、内耳炎(ないじえん)になることがあります。内耳には聞こえの細胞やめまいの細胞がいるため、内耳炎になると、難聴やめまいの症状を起こします。

急性中耳炎のみでも中耳に膿が溜まって難聴になりますが、内耳炎の難聴は神経細胞に炎症が及ぶので、膿がなくなっても難聴が残存することがあります。

内耳炎の場合は、耳の痛みなどの急性中耳炎の症状に引き続いて、難聴やめまいがでます。治療方法は、細菌感染に対して抗菌薬、聞こえの細胞の炎症を抑える目的でステロイドを使用します。中耳の炎症次第で鼓膜切開を行うこともあります。

大人の中耳炎で使う薬は?

急性中耳炎で使用する薬は下記です。

  • 抗菌薬
  • 鎮痛薬
  • 気道疾患治療薬
  • 点耳薬

急性中耳炎はウイルスや細菌が中耳に感染して炎症を起こしている状態です。軽症の場合は経過観察のみで自然治癒が期待できます。症状が強い場合や、鼓膜所見で炎症が強い場合は細菌感染が原因になっている可能性を考えて抗菌薬を使います。抗菌薬はペニシリン系抗菌薬(商品名サワシリン®など)が主に用いられます。症状や重症度に応じて、βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン製剤(商品名オーグメンチン®)なども使用します。

痛みが強い時は鎮痛薬を用います。ロキソニン®やカロナール®と呼ばれる薬です。

鼻水が原因になりますので、鼻水が粘っこくて出てこない時などには、粘液溶解剤と呼ばれる、鼻水の粘稠度(ねんちょうど)を下げる薬(商品名ムコダイン®など)を使用します。

炎症が強くて鼓膜に穴があいて、耳だれが出ている場合は、抗菌薬入りの点耳薬を使うことがあります。点耳薬は鼓膜の穴を通して中耳に入るため、直接炎症のあるところに濃度の高い抗菌薬を入れられる点で有用です。

大人でも鼓膜切開をするの?

大人の場合は鼓膜切開をせずに急性中耳炎が治ることが多いですが、炎症が強く、内耳に炎症が及んで内耳炎などになっている人には鼓膜切開が考慮されます。

その他に鼓膜切開を行う可能性がある場面としては次のものが考えられます。

急性中耳炎が治った後に、中耳に感染を伴わない液体がたまって滲出性中耳炎になることがあります。一般的には、耳と鼻をつなぐ耳管機能が改善すると、液体が消失することがほとんどですが、滲出性中耳炎が長期間にわたり、難聴によって生活に支障がでる場合は、希望に応じて、鼓膜切開を行います。

中耳炎では何度も通院が必要?

急性中耳炎では鼓膜所見が改善するまで、何度か通院が必要です。自覚症状としての痛みは薬を飲み始めて速やかに改善することが多いですが、鼓膜の状態が少し遅れてよくなるからです。

4. 中耳炎の原因は?

急性中耳炎の原因は、鼻水の中のウイルスや細菌です。鼻と中耳をつなぐ耳管を通ってウイルスや細菌が中耳に入り、中耳に感染して炎症を起こします。そのため鼻風邪のあとに、急性中耳炎を起こすことが多いです。

中耳炎はうつる?

急性中耳炎は急性上気道炎かぜ)に引き続いて起こることが多いです。鼻水や咳があれば、周囲に感染する可能性がありますが、感染頻度としては一般的なかぜと同じです。ウイルスや細菌が体内に入った場合でも、感染が成立して、急性上気道炎や急性中耳炎の症状がでるかは、個々の免疫システムの状態や体調によります。

中耳炎の原因菌はなに?

急性中耳炎の原因菌はインフルエンザ菌肺炎球菌、モラキセラ・カタラーリスです。大人も子供も原因菌はあまり差がありません。

参考文献:2011年1月−2012年6月、日本感染症学会、日本化学療法学会、日本臨床微生物学会、3学会合同抗菌薬感受性サーベイランス事業耳鼻咽喉科領域

飛行機に乗ると中耳炎になる?

鼻水が多い時に飛行機になると耳抜きができず、気圧の変化に中耳がついていけずに中耳炎になることがあります。

鼻水がでていない時でも飛行機の離着陸時に耳が痛くなり、その後に難聴などの症状が残存する航空性中耳炎になることがあります。鼻水が多い状態では、耳管機能が更に低下するため、中耳炎になるリスクが高くなります。

航空性中耳炎は、中耳の気圧調節をしている耳管の機能が悪くなり、中耳の圧調整がうまくいかなくなることで、おこります。耳管機能が正常の場合は、つばを飲んだり、あくびをしたりすることで、空気が耳管を通して中耳と交換され、圧が大気と同じになることで、症状が治ります。

風邪を引いていて、鼻汁が多い状態で飛行機に乗らなければならない時は、あらかじめ耳鼻咽喉科に相談してみてもよいでしょう。

航空性中耳炎は「耳が痛いのは中耳炎なの?中耳炎とは?」でも詳しく解説しているので参考にして下さい。

プールやお風呂で耳に水が入ると中耳炎になる?

プールやお風呂で耳に水が入っても中耳炎になることはありません。鼓膜に穴が開いていない限り、外耳道と中耳は鼓膜で隔てられており、水が中耳に入ることはありません。水が入るのは外耳道までです。水が入ったように感じるのは、外耳道に水が残っているためですが、一般的に外耳道の水は自然に抜けたり、蒸発します。お風呂あがりに綿棒で、外耳道の水を毎日とる必要はありません。毎日綿棒で外耳道を触っていると、たとえ綿棒のような柔らかいものでも、外耳道に傷がついて、外耳炎になることがあるので避けてください。