2017.09.02 | ニュース

難病の血管炎の治療薬ほか、効能など追加の3製品はどんな薬?

添付文書を中心に
難病の血管炎の治療薬ほか、効能など追加の3製品はどんな薬?の写真
(c) Clouseu - Fotolia.com

8月25日に、医療用医薬品8製品について、新効能などの追加が承認されました。そのうちアクテムラ、ネオーラル、レボレードの新効能などを紹介します。

アクテムラ®(一般名トシリズマブ)は、炎症反応などに関わる物質の作用を抑える薬です。従来関節リウマチの治療に使われています。新たに高安動脈炎巨細胞性動脈炎が効能・効果に追加されました。条件として既存治療で効果不十分であり、「副腎皮質ステロイド薬による適切な治療を行っても疾患活動性を有する場合、副腎皮質ステロイド薬による治療の継続が困難な場合」の使用が原則とされています。

高安動脈炎巨細胞性動脈炎はどちらも指定難病で、広い意味での血管炎に分類されます。心臓や脳の血管を冒す場合などもあり、経過は人によってさまざまです。

 

添付文書には臨床試験の結果が記載されています。高安動脈炎に対して、ステロイド薬で治療したうえで再発が現れている12歳以上の患者36人が対象とされました。ステロイド薬を減らしつつトシリズマブの注射をするグループと、偽薬のグループに分けて、再発までの期間が比較されました。結果は統計的に偶然ではない違いを確かめられませんでしたが、研究期間に再発がなかった人はトシリズマブのグループのうち55.6%(10人)、偽薬のグループのうち38.9%(7人)となりました。

 

巨細胞性動脈炎に対する臨床試験では、50歳以上の患者が対象とされました。試験開始時に使っていたステロイド薬を減らしながら、グループごとに使用する薬を変えて治療されました。

  • トシリズマブ162mgを1週間ごと、ステロイド薬は26週かけて減らし終了
  • トシリズマブ162mgを2週間ごと、ステロイド薬は26週かけて減らし終了
  • 偽薬を1週間ごと、ステロイド薬は26週かけて減らし終了
  • 偽薬を1週間ごと、ステロイド薬は52週かけて減らす

52週時点で症状がない状態(寛解)を維持できていた割合を比較すると、ステロイド26週と偽薬のグループで14.0%に対して、トシリズマブ1週間ごとのグループでは56.0%2週間ごとのグループでは53.1%と、どちらも寛解維持の割合が高くなりました。ステロイド52週のグループでは17.6%でした。

 

なおアクテムラには点滴用の製剤もありますが、高安動脈炎巨細胞性動脈炎の効能・効果を追加されたのは皮下注射用の製剤だけです。

 

ネオーラル®(一般名シクロスポリン)は免疫抑制薬です。臓器移植における拒絶反応の抑制のほか、免疫の異常によって起こるベーチェット病などの治療に使われます。従来「再生不良性貧血(重症)」が効能・効果のひとつとされていましたが、「重症」の記載を除き、重症ではない患者の治療も含むように変更されました。

再生不良性貧血は、赤血球白血球血小板を作る機能が損なわれる病気です。

臨床試験では、ATG、シクロスポリン、エルトロンボパグの3剤を併用した10人のうち7人が、輸血をしなくても血球数が改善した状態になりました。

 

レボレード®(一般名エルトロンボパグ オラミン)は、血球を増やす作用のある薬です。従来慢性特発性血小板減少性紫斑病に使われていますが、再生不良性貧血が新たに効能・効果に加えられました。

ネオーラルの添付文書にも記載されている臨床試験で、ATG、シクロスポリン、エルトロンボパグの3剤を併用した10人のうち7人が、輸血をしなくても血球数が改善した状態になりました。

 

2017年8月25日に新効能などを承認された8製品のうち3製品を紹介しました。ほかの5製品についても別の記事で紹介する予定です。

医薬品の効能・効果などはつねに見直されています。有効と思われた使いかたが承認され、添付文書にも記載されていくことで、保険診療としてできることの幅が広がります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

アクテムラ皮下注162mgシリンジ/ アクテムラ皮下注162mgオートインジェクター 添付文書, NCT01791153(Clinicaltrials.gov), ネオーラル内用液10%/ ネオーラル10mgカプセル/ ネオーラル25mgカプセル/ ネオーラル50mgカプセル 添付文書, レボレード錠12.5mg/ レボレード錠25mg 添付文書

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。