2017.05.08 | ニュース

ビタミンDとカルシウムでがんを防げるか?

2,303人の4年後を比較

from JAMA

ビタミンDとカルシウムでがんを防げるか?の写真

ビタミンDが体に及ぼす効果について、さまざまな観点から研究されています。ビタミンDとカルシウムを4年間飲み続けることでがんを予防できるか調べた研究の結果が報告されました。

アメリカの研究班が、閉経後の55歳以上の女性を対象に、ビタミンD製剤とカルシウム製剤を4年間飲み続けることで、がん全体に対して(悪性黒色腫以外の皮膚がんを除く)予防効果があるかを検証し、結果を医学誌『JAMA』に報告しました。

皮膚がんは日光によって影響されると考えられています。同時に、日光に当たることでビタミンDが活性化される効果もあります。つまり、日光に当たることがビタミンDと皮膚がんの両方に関係する可能性があり、皮膚がんを検討対象に含めると解釈が複雑になります。

対象者として2,303人の女性が参加しました。対象者はランダムに2グループに分けられ、ビタミンD製剤とカルシウム製剤を飲むグループ、偽薬を飲むグループとされました。

 

次の結果が得られました。

がんの新規診断は参加者109人で確認され、ビタミンD3+カルシウム群では45人(3.89%)、偽薬群では64人(5.58%)だった(差1.69%、95%信頼区間-0.06%から3.46%、P=0.06)。カプランマイヤー法による4年間の発生率はビタミンD3+カルシウム群で0.042(95%信頼区間0.032-0.056)、偽薬群で0.060(95%信頼区間0.048-0.076)、P=0.06だった。

4年間のがんの発生率を計算すると、ビタミンD・カルシウムを飲んだグループでは0.042、偽薬を飲んだグループでは0.060となりましたが、統計的に偶然でないとは言えない範囲であり、がん予防効果は確かめられませんでした。

 

ビタミンDとカルシウムを飲み続けてもがんを予防する効果が確かめられなかったという報告でした。

ビタミンDの効果については多くの議論がありますが、何にでも効くわけではありません。どのような効果を期待できるかはまさに議論が進みつつあります。研究者の間で合意が定着するまでには時間がかかります。「ビタミンDでがんを予防できる」と思うのはまだ早いと言えるでしょう。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Effect of Vitamin D and Calcium Supplementation on Cancer Incidence in Older Women: A Randomized Clinical Trial.

JAMA. 2017 Mar 28.

[PMID: 28350929]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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