2015.12.11 | ニュース

血圧をもっと下げると、どんないいことがあるのか?

19件4万5千人のデータから

from Lancet (London, England)

血圧をもっと下げると、どんないいことがあるのか?の写真

高血圧の治療で血圧をどの程度まで下げるべきかにはさまざまな意見があります。過去の研究をまとめて、より強力な治療を行った場合に病気のリスクとどう関係するかが検討されました。

◆複数の研究を統合

研究班は、高血圧の治療についての過去の研究のうち、より強力な治療と弱い治療とを比較したものを集め、データを統合することで、血圧をより低くする治療によって心筋梗塞、脳卒中、心不全などの病気のリスクに違いがあるかを調べました。

 

◆脳卒中は減り、末期腎臓病は減らない

見つかった19件の研究から、44,989人についてのデータが得られました。解析から次の結果が得られました。

メタアナリシスにより、ランダム化のあとで、集中降圧治療群の患者は平均で血圧が133/76mmHg、比較的軽度の降圧治療群では140/81mmHgだった。集中降圧治療は、主要な心血管イベント(リスク減少14%、95%信頼区間4-22)、心筋梗塞(13%、0-24)、脳卒中(22%、10-32)、アルブミン尿(10%、3-16)、網膜症の進行(19%、0-34)のリスク比減少を達成した。しかしながら、集中降圧治療により心不全(15%、95%信頼区間-11から34)、心血管死亡(9%、-11から26)、全死亡(9%、-3から19)、末期腎臓病(10%、-6から23)に対して明らかな効果は見られなかった。

より強い治療を受けた人では、平均で最高血圧が133mmHgまで下げられていました。強い治療を受けた人では、心筋梗塞と脳卒中が少なく、糖尿病性腎症と糖尿病性網膜症の進行が少なくなっていました。しかし、死亡や末期腎臓病を防ぐ効果は見られませんでした

 

死亡率に直結しなくても、脳卒中が少なくなることは重要かもしれません。また、別の研究で、最高血圧120mmHg未満を目標に治療したときに死亡率が下がったとしたものもあり、この範囲で血圧をより低く治療することには何か期待できる点があるかもしれません。

ただし、示されたデータがどのような人に当てはまるか、また強力な治療を行うことによる負担や副作用もあわせて考える必要があります。全体を考える中で、こうした結果が参考になるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Effects of intensive blood pressure lowering on cardiovascular and renal outcomes: updated systematic review and meta-analysis.

Lancet. 2015 Nov 7 [Epub ahead of print]

[PMID: 26559744]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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