2016.06.08 | ニュース

血圧高めの人が薬を飲んでも病気は予防されなかった

12,705人で比較
from The New England journal of medicine
血圧高めの人が薬を飲んでも病気は予防されなかったの写真
(C) Nenov Brothers - Fotolia.com

高血圧は心筋梗塞や脳卒中など、血管のダメージによって起こる心血管疾患につながります。どの程度の血圧が適正なのかは結論が出ておらず、最近も研究が続けられています。血圧が少し高いだけの人を対象にした研究結果が報告されました。

◆138mmHgから下げるとどうなるか?

ここで紹介する研究の対象者は、従来高血圧の基準とされている収縮期血圧140mmHgを大幅に超えることなく、心血管疾患の危険性が中程度と予想される人が選ばれました。研究開始時の血圧は平均で、138.1/81.9mmHgでした。

対象者12,705人はランダムにグループに分けられ、薬で血圧を下げる治療を受けるグループ、有効成分のない偽薬を飲むグループとされました。

薬を飲むグループではカンデサルタン(1日あたり16mg)とヒドロクロロチアジド(1日あたり12.5mg)という2種類の薬が使われました。平均5.6年間にわたって経過が追跡されました。

効果を判定するために、「心血管疾患による死亡、死亡に至らなかった心筋梗塞、死亡に至らなかった脳卒中」のいずれかがあった人の数、「蘇生できた心停止、心不全、血行再建治療」のいずれかがあった人の数がそれぞれ集計され、グループによって違いがあるか、統計解析により検討されました。

 

◆血圧を下げても差がなかった

次の結果が得られました。

第一の共一次アウトカムは積極的治療群のうち260人(4.1%)に発生し、偽薬群では279人(4.4%)に発生した(ハザード比0.93、95%信頼区間0.79-1.10、P=0.40)。第二の共一次アウトカムは積極的治療群で312人(4.9%)、偽薬群で328人(5.2%)だった(ハザード比0.95、95%信頼区間0.81-1.11、P=0.51)。

血圧を下げたグループと偽薬のグループで、結果に違いが見られませんでした

 

この研究では、血圧が高めでも、平均すると従来の高血圧の基準に当てはまらない人が対象になっていました。このような人がさらに血圧を下げるべきという結果にはなりませんでした。

ほかの研究で、血圧以外にも危険な要素を持っている人は収縮期血圧120mmHg未満を目標に下げることで結果に違いが出たとするものもあります。

薬を飲み続けることは生活の負担になり、どのような場合に効果を期待できるのかは慎重に検討される必要があります。こうした研究からきめ細やかなデータが集まることで、個人に適した方針を選ぶ役に立ちます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Blood-Pressure Lowering in Intermediate-Risk Persons without Cardiovascular Disease.

N Engl J Med. 2016 May 26.

[PMID: 27041480]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。