GISTに関してよくある質問
GISTは
目次
1. GISTになりやすい人とは?
どのような人がGISTになりやすいかは詳しく分かっていません。
例えば胃がんではヘリコバクター・ピロリ菌
またGISTではc-kitやPDGFRという遺伝子に異常が起こることが知られていますが、この遺伝子異常は突然変異によるものがほとんどで、子孫には遺伝することはないと言われています。つまり、親がGISTになったからといって子どもがGISTになりやすいというわけではないということです。(
2. GISTと診断された後の生活上の注意点は?
GISTは消化管にできる病気です。消化管は食べ物の通り道なので、GISTと診断された場合に食事や飲酒について普段通りで良いのか心配になる人もいるかと思います。
日本では検診などで偶然GISTが見つかる人が多く、小さな腫瘍で症状が見られない人では定期的な検査と診察で
一方、GISTによる腹痛があったり、GISTが胃潰瘍を作っている場合には、消化の良い食事内容にして飲酒は控えるほうがよいでしょう。運動は軽く汗をかく程度にして過度な運動は控えるようにします。
GISTに対する外科手術を受けて胃を切除した人では、胃の働きが低下して食べ物を貯蔵できる量が少なくなっています。食事は小分けにして1回に食べる量を減らすようにしてみてください。
分子標的薬(イマチニブ)による薬物治療を行う人では吐き気や下痢などの副作用が起こることがあるため、症状に応じた食事内容、生活習慣を見つけることが大切です。食欲がないときには麺類などの食べやすいものを選ぶのも良いでしょう。
3. GISTの専門医はどこにいる?
GISTは珍しい病気であるため、専門医を見つけるのは他のがんに比べて難しいと思います。以下のホームページではGISTの患者さんを多く診察している専門家のお医者さんや診療実績の豊富な病院を調べることができます。
- GIST研究会(稀少腫瘍研究会):会員名簿
会員医師の所属施設は変更されている場合があるので注意が必要です。 - 国立がん研究センターがん情報サービス:病院を探す
がんの種類から「GIST」を選択すると、GISTの診療実績が豊富な医療機関を調べることができます。 - 国立がん研究センターがん情報サービス:がん相談支援センター
がん相談支援センターでは、GISTの診療実績が豊富な医療機関についての情報提供が受けられます。
これ以外に、主治医と相談して専門医を紹介してもらうという方法もあります。
4. 治療せずに定期的な検査でよいと言われたが、本当に手術しなくて良いのか?
検診などで小さな胃
- 胃粘膜下腫瘍にはGIST以外の腫瘍も含まれる
EUS -FNABを行うことができる施設が限られている
それぞれについて解説します。
胃粘膜下腫瘍にはGIST以外の腫瘍も含まれる
EUS-FNABを行うことができる施設が限られている
胃粘膜下腫瘍がGISTであるかを調べるためには、精密検査に位置づけられる「超音波内視鏡下
しかし、EUS-FNABはどこの病院でも行える検査ではありません。EUS-FNABに習熟した内視鏡医がいることのみならず、顕微鏡検査を行う病理医や病理検査技師がGISTの診断に習熟している必要があります。このような医療機関の数は限られているため、胃粘膜下腫瘍が見つかった人全員にEUS-FNABを行うことは困難なのが現状です。そのため悪性である可能性がかなり低いと考えられる2cm未満の胃粘膜下腫瘍では、それ以上の精密検査や手術は行わず定期的な画像検査と診察で経過観察を行うことが
治療が必要な胃粘膜下腫瘍とは?
それでは、どのような胃粘膜下腫瘍で治療が必要なのでしょうか? 特に次のような場合には治療を行うべきとされています。
- 腫瘍に伴う症状(腹痛など)がある場合
- 腫瘍のサイズが5cmを超える場合
- 腫瘍のサイズが2-5cmで、EUS-FNABによる病理検査でGISTと確定診断された場合
- 腫瘍のサイズが2-5cmで、
潰瘍 がある・形が不整などの悪性を疑うサインがある場合
また、2cm未満の小さな腫瘍でも次のようなサインがあれば治療を考慮します。
- 腫瘍に伴う症状(腹痛など)がある場合
- 経過観察中に腫瘍が大きくなってきた場合
- 潰瘍がある・形が不整などの悪性を疑うサインがある場合
- EUS-FNABによる病理検査でGISTと確定診断された場合
胃粘膜下腫瘍と診断された人は心配になることもあると思いますが、無症状で小さな腫瘍であればGISTを含めた悪性腫瘍の可能性は低いと考えてよいです。大切なのは腫瘍の変化を見逃さないように定期的な検査を受けながら経過観察を行うことです。
5. GISTは治るのか?
GISTは外科手術で腫瘍を完全に取りきることができれば完治が期待できる病気です。①腫瘍が完全に取りきれて、②その後再発しなければ、GISTが完治したということができます。
「腫瘍を完全に取りきる」とは?
腫瘍を完全に取りきるとは、次の3つの条件を満たした場合のことです。
- 目に見える腫瘍をすべて切除すること
- 手術後の病理検査(顕微鏡の検査)で腫瘍がすべて切除できていることが確認されること
- GISTを覆う偽被膜を破らずに腫瘍を摘出すること
これらを全てクリアした場合に腫瘍が完全切除できたと考えます。
再発しやすい腫瘍とは?
手術後の再発しやすさを判断するには、手術後の病理検査で腫瘍のサイズと核分裂像数(腫瘍の増えやすさの指標)をチェックします。サイズが大きく、核分裂像の数が多いほうが再発しやすい腫瘍であると言えます。下の表は、手術で完全切除できたGISTの再発リスクを分類したものです。
リスク分類 | 腫瘍の大きさ | 核分裂像の数* | 再発率 |
超低リスク | 2cm未満 | 5個未満 | ほぼ0% |
低リスク | 2~5cm | 5個未満 | 約2% |
中リスク | 5cm未満 | 6~10個 | 約4~15% |
5~10cm | 5個未満 | ||
高リスク | 5cmより大きい | 5個以上 | 約10~85% |
10cmより大きい | (数は問わない) | ||
(サイズは問わない) | 10個以上 |
*核分裂像の数は、顕微鏡を高倍率(400倍率)にして観察したときの50視野あたりの数
このリスク分類は「Fletcher分類」とも呼ばれます。それぞれのリスク分類に対する腫瘍の再発率は表の一番右の列に示されています。再発リスクが高い人では手術後の経過観察をこまめに行う必要があります。
6. GISTと診断されたら余命はどのくらい?
日本におけるGISTの余命を示すデータはありませんが、アメリカではGISTの生存率についてのデータが発表されています。このデータは「
- GISTが見つかった人全体での5年生存率:83%
この中にはさまざまな進行度の人が含まれているので、それぞれの進行度に分けた生存率も示されています。この進行度はGISTと診断された時点での進行度です。
- GISTの広がりが周辺の臓器に及んでおらず、離れた臓器への
転移 もない場合の5年生存率:94% - GISTが周りの臓器に広がっているが、離れた臓器への転移はない場合の5年生存率:82%
- GISTが離れた臓器へ転移している場合の5年生存率:52%
5年生存率の数字を見るときに注意しなければいけないのは、この数値はあくまで平均の値であって各個人にあてはまるかどうかは分からないということです。また5年以上前に診断された人のデータを集計した数値なので、当時と現在の治療法に違いがあることにも気を付けなければなりません。さらに、住んでいる国によってGISTの発見されやすさが違ったり、使用できる治療薬に違いがあったりします。
生存率や余命のデータは参考になる数値ではありますが、絶対的なものではありません。楽観しすぎたり悲観しすぎたりせず、自分自身の病状に向き合うことが大切です。
7. GISTのガイドラインはある?
日本
参考文献
・日本癌治療学会:がん診療ガイドライン(GIST)
・GIST研究会ホームページ
・国立がん研究センター希少がんセンター:GIST(消化管間質腫瘍)
・Morgan J, Raut C P, Duensing A, et al. Epidemiology, classification, clinical presentation, prognostic features, and diagnostic work-up of gastrointestinal stromal tumors (GIST). UpToDate(最終更新2020/7/14)
・Cancer.Net Gastrointestinal Stromal Tumor - GIST: Statistics. (2020/7/26閲覧)