しょうかかんかんしつしゅよう
消化管間質腫瘍(GIST)
消化管の粘膜の下にできる腫瘍の一種
7人の医師がチェック 77回の改訂 最終更新: 2022.10.17

GISTで起こりやすい症状について:多くは無症状

GISTは5cm以下の小さな腫瘍であればほとんど症状はなく、日本では検診などで無症状のうちに見つかることが多いです。一方、GISTが大きくなってくると、腹痛や便に血が混じるなどの症状が現れてきます。このページではGISTの症状について詳しく説明します。

1. 小さな腫瘍は無症状

日本では検診が普及しているため、内視鏡検査や他の画像検査で偶然GISTが見つかる場合が多いです。このような場合は5cm以下の小さな腫瘍であることが多く、ほとんどの人は無症状です。一方、ある程度大きなGISTがある人では次のような症状が見られます。

  • 消化管出血による吐血下血(赤〜黒色の便)
  • 腹痛
  • 腹部の違和感
  • 腹部膨満
  • 吐き気
  • 飲み込みにくさ
  • おなかに腫瘍が触れる

いずれも腫瘍がかなり大きい場合や、腫瘍による胃潰瘍ができた場合などに起こりやすい症状です。

2. 消化管出血

消化管出血とは、食道、胃、腸などの消化管から出血が起こることです。出血する場所や出血の量によっていろいろな症状が見られます。GISTでは胃や小腸に腫瘍ができることが多く、腫瘍が大きくなると潰瘍(かいよう)ができて出血しやすくなります。

出血量が多い場合

胃で多量の出血が起きた場合には口から血を吐いてしまう「吐血」が起こります。小腸から多量の出血が起きた場合には、血液が消化管を通って肛門から排泄される「血便」が見られます。出血量が多いときには赤色から赤黒い色の便になります。

出血量が少ない場合

胃や小腸からそれほど多くない量の出血が起きたときには、黒い色の「黒色便(タール便)」が見られます。これは血便の一種ですが、血液の中に含まれる鉄分が消化管を通るうちに酸化されて黒くなるために赤色ではなく黒色になります。

出血のサインが見られない場合

また、吐血や血便のように明らかに出血しているサインがない場合でも、少量の消化管出血がだらだらと続いていることがあります。この場合には比較的長い時間をかけて貧血が進み、血液検査で貧血を指摘されて原因を調べている中で消化管出血が見つかります。

3. 腹痛、腹部の違和感、腹部膨満感、吐き気、飲み込みにくさ

大きなGISTがある場合、腹痛や腹部の違和感やおなかが張る感じ(膨満感)が見られることがあります。また腫瘍が大きくなって潰瘍を作った場合にも腹痛が起こることがあります。腫瘍によって胃や腸が圧迫されたり、食べ物の通り道が狭くなると吐き気や飲み込みにくさを感じることもあります。

ただし、検診で見つかるような5cm未満の腫瘍では、通常このような症状が見られることはありません。

4. おなかに腫瘍が触れる

10cmを超えるような大きなGISTがあると、おなかを触ったときに腫瘍の輪郭を触れることがあります。胃のGISTではみぞおちのあたりに、小腸や大腸のGISTではへその周辺から下腹部に腫瘍が触れることが多いです。

参考文献

・日本治療学会:がん診療ガイドライン(GIST)
GIST研究会ホームページ
・国立がん研究センター希少がんセンター:GIST(消化管間質腫瘍)
・Morgan J, Raut C P, Duensing A, et al. Epidemiology, classification, clinical presentation, prognostic features, and diagnostic work-up of gastrointestinal stromal tumors (GIST). UpToDate (最終更新2020/7/14)