あいじーえーじんしょう
IgA腎症
腎臓の糸球体という部分に炎症が起きることで腎機能が下がってしまう。IgAというタンパクが糸球体に付着して炎症を起こすことが原因
16人の医師がチェック 68回の改訂 最終更新: 2018.08.08

IgA腎症の検査:尿検査、血液検査、腎生検など

IgA腎症の診断には尿検査や血液検査、腎生検などを用います。診断した後は、検査で腎臓の機能やタンパク尿の程度、病気の進行具合などを判断材料にして適した治療の選択につなげます。

1. IgA腎症の診断基準は?必要な検査は?

IgA腎症の診断に必要な検査は以下のものになります。これらの検査を組み合わせてIgA腎症の診断をします。

  • 尿検査 
  • 血液検査 
  • 腹部超音波検査 
  • 腎生検・病理検査

IgA腎症を確定するのは病理検査による診断です。病理検査は腎生検により取り出した腎臓の一部を顕微鏡で観察する検査です。他の検査もIgA腎症を疑ったり他の病気と区別したりするために用います。

IgA腎症の診断基準

IgA腎症の診断基準は以下のようになります。少し難しい内容なので読み飛ばしてもIgA腎症の理解には差し支えはないですし、下の各項目の解説を読みながら確認してもらってもよいです。

【IgA腎症の診断基準】

1. 臨床症状大部分の症例は無症候であるが、急性腎炎の症状を呈することもある。ネフローゼ症候群の発現は比較的稀である。

2. 尿検査成績尿異常の診断には3回以上検尿を必要とし、そのうち2回以上は一般に尿定性試験に加えて尿沈渣の分析も行う。

A. 必発所見:持続的顕微鏡的血尿

B. 頻発所見:間欠的または持続的蛋白尿

C. 偶発所見:肉眼的血尿

3. 血液検査

A. 必発所見:なし

B. 頻発所見:成人の場合、血清IgA値315mg/dL以上

4. 確定診断

腎生検による糸球体の観察が唯一の方法である。

A. 光顕所見:巣状分節性からびまん性全節性(球状)までのメサンギウム増殖性変化が主体であるが、半月体、分節硬化、全節性硬化など多彩な病変が見られる。

B. 蛍光抗体法または酵素抗体法所見:びまん性にメサンギウム領域を中心とするIgAの顆粒状沈着

C. 電顕所見:メサンギウム基質内、特にパラメサンギウム領域を中心とする光電子密度物質の沈着

【付記事項】

1. 上記の2-A、2-B、および3-Bの3つの所見が認められれば。本症の可能性が高い。ただし、泌尿器科的疾患の鑑別診断をおこなうことが必要である。

2. 本症と類似の腎生検組織所見を示しうる紫斑病性腎炎、肝硬変ループス腎炎などは各疾患に特有の全身症状の有無や検査所見によって鑑別を行う。

以下ではそれぞれの診断基準について噛み砕いて説明します。

【臨床症状】

臨床症状はいわゆる症状のことです。IgA腎症のほとんどの場合は症状がなく発見されます。血尿や浮腫み(むくみ)などの症状がでることもあります。

【尿検査の解説】

IgA腎症の人の多くは尿検査の異常から指摘されます。IgA腎症で現れる尿検査の異常はタンパク尿や血尿です。IgA腎症の血尿は顕微鏡的血尿のことが多いです。顕微鏡的な血尿は顕微鏡で観察しないとわからないくらい僅かな血尿です。したがって見た目は普通の黄色や透明であることが多いです。IgA腎症ではほぼ全員に持続する顕微鏡的血尿が認められます。

【血液検査】

IgAは免疫グロブリンの一つです。免疫グロブリンは体内でつくられるタンパク質のひとつです。

IgAが腎臓の糸球体(しきゅうたい)という組織に沈着することによりIgA腎症が起こると考えられています。体の中のIgAの値は血液検査で調べることができます。IgA腎症の人のうち約半数で血液中のIgA値が上昇しています。

【確定診断】

IgA腎症の確定診断は腎臓の一部を取り出して顕微鏡で観察する病理検査で行われます。IgA腎症に特徴的な腎臓の変化が確認できればIgA腎症の診断となります。

参照:IgA腎症診療指針 第3版

2. 尿検査

尿検査は、IgA腎症を疑うきっかけにもなるほか、IgA腎症と診断されたあとも病気の状態の評価、治療効果の判定と多くの場面で登場します。尿検査の方法にはいくつかありその用途により使い分けます。

参照:腎臓内科 診療マニュアル

尿定性(にょうていせい)

尿定性検査は病院では尿定性と略してよぶことが多いです。

尿定性は尿の比重やタンパク尿、血尿などの有無を知ることができ、検査結果から尿に含まれるタンパク尿の量を推定することができます。

尿定性検査は試験紙を用いた検査で尿中に血液やタンパク質がどの程度の濃度で含まれるかを調べることができます。濃度を調べる検査なので1日にどの程度の量が出ているかは推定になります。

尿定性は簡単で痛みもなくできる検査なので、繰り返して用いることができます。このために治療の効果を調べたりするのにも役立ちます。

尿沈渣(にょうちんさ)

尿沈渣は尿を遠心分離機にかけた後に顕微鏡で尿を観察する検査です。尿沈渣では尿中の白血球赤血球などを観察することができます。IgA腎症のように腎臓の糸球体という場所に異常が起きている場合には尿沈渣で変形した赤血球や赤血球円柱といったものが観察できます。

24時間蓄尿検査

IgA腎症では尿からどれくらいのタンパク質が出ているかを正確に知る必要があります。尿中タンパクの量はIgA腎症のその後の経過を推測する材料の一つだからです。

1日に尿からでるタンパクの量は1日の尿を全てためて調べる方法がもっとも正確です。1日の尿からでるタンパクの量が0.5g以上の場合には腎生検を検討します。

3. 血液検査

血液検査ではIgAの値や腎臓の機能などを調べます。血液検査だけではIgA腎症の確定には至りませんが診断の補助としたり腎臓の機能を把握するのに有効です。

参照:腎臓内科 診療マニュアル、IgA腎症診療ガイドライン2014

IgA

IgA腎症では血液中のIgAが高値になることが多いです。しかし、必ずしも全員でIgAが高値になるわけではありません。IgA値が診断基準の315mg/dLを超える人はIgA腎症の人のうち約50%程度と考えられています。

クレアチニン

クレアチニンは血液中の老廃物です。筋肉に含まれるクレアチンという物質が代謝されてできます。腎臓が正常な状態で働いていればクレアチニンは尿として排泄されます。腎臓の機能が低下していると血液中のクレアチニンの濃度は上昇します。

クレアチニンの基準値は男性では0.6-1.1mg/dL、女性では0.4-1.0mg/dLです。基準値は施設によってわずかに異なります。

クレアチニンは腎機能の目安とすることも出来ますが、クレアチニンが基準値を超えて上昇するのは腎臓の機能が半分ほど失われてからです。したがってクレアチニンの数値から早期の段階の腎臓の機能低下を判断するのは難しいことがあります。

eGFR(estimated glomerular filtration rate)

eGFR(イージーエフアール)は腎臓の機能を評価するための検項目です。日本語では推定糸球体濾過量と呼ばれることもあります。eGFRの単位はmL/min/1.73m2です。分かりやすくいうと1分間あたりどのくらいの量の血液が腎臓の糸球体で処理されるかを推定しています。eGFRは健康な人では90以上の値を示しますが、腎臓の機能が下がってくるとeGFRは低下します。eGFRの数値が60を下回ると慢性腎臓病に該当します。eGFRの値はIgA腎症の予後分類にも用いる値です。予後分類とはIgA腎症の経過を予想するための分類のことです。

4. 腹部超音波検査

腹部超音波検査は、超音波という人間の耳には聞こえない音波を利用した検査です。超音波検査エコー検査と呼ばれることもあります。

超音波を体に当てると、超音波の跳ね返りから体の中の様子を画像で観察できます。超音波検査では腎臓の形や大きさ、血管の走り方などを知ることができます。

IgA腎症の場合は腎臓の形や大きさに変化が現れることは稀です。超音波検査は他の腎臓の病気が隠れていないかを見極めるのに有用です。

5. 腎生検・病理検査

腎生検はIgA腎症を診断するのにとても大事な検査です。腎生検の適応(行うべき人)や実際の手順、合併症について解説します。

腎生検では腎臓に針を刺して少量の組織を取り出します。病理検査は腎生検でとってきた腎臓の一部を顕微鏡でみる検査のことです。腎生検は広い意味で病理検査を含んだ検査として説明されることもあります。

腎生検の適応

腎生検はどのような人に用いられる検査なのでしょうか。腎生検の目的はIgA腎症の確定診断をすることです。確定診断とは病気の名前をはっきりと決めることです。

腎生検の実際

腎生検は実際にどのように行うのでしょうか。

はじめて受ける検査に恐怖心があるのはみな同じです。少しでも恐怖心を和らげるには検査のイメージをしっかりとつくることが大事です。イメージがしっかりと出来ると心の準備につながります。

腎生検の流れの例を紹介します。実際には状況によって異なるところもありますが参考にしてください。

【腎生検の流れ】

  1. うつ伏せになります。(腎臓は背中側の臓器だからです)
  2. 超音波で腎臓の位置や形、血管の様子などを観察します。
  3. 針を刺す場所を決めて消毒します。
  4. 針を刺す場所の周囲に麻酔をします。
  5. 麻酔が効いているのを確認した後、超音波検査の画像を見ながら針を刺します。この針で腎臓の組織を取り出します。
  6. 針を抜いた後は腎臓からの出血を止めるため、検査当日は針を刺した部位を圧迫します。検査当日はベッド上で安静になります。
  7. 翌朝、腎臓からの出血が止まっているかを超音波を用いて確認します。出血が止まっていれば、体を動かしてよい許可が出ます。
  8. 腎生検後は数日間は再出血のリスクがあるため、医師の許可が出るまで激しい運動を行うことはできません。

腎生検は順調であれば数日程度の入院で行うことができます。腎生検でとりだした腎臓の一部を病理検査(顕微鏡で詳しく観察する検査)で診断します。

病理検査

病理検査は腎生検で得た腎臓の一部を顕微鏡で見る検査です。腎臓の組織を顕微鏡レベルでみることでIgA腎症の病気の勢いや進行などを推測することができます。

腎生検の合併症

腎生検は太い針を腎臓に刺して腎臓の一部を取り出す検査です。いくつか注意が必要な合併症があります。合併症とは検査や治療で起こる望ましくない結果のことです。

■出血

腎臓はとても血流の多い臓器です。腎臓には大小様々な血管が張り巡らされています。腎生検では超音波検査を用いて血管を避けて針を刺しますが、血流が豊富なために小さな血管からでも想定しない量の出血をすることがあります。

腎臓からの出血は体の外からの圧迫で止血することが多いです。しかし少ない可能性ながら、出血量が多いときには輸血やカテーテル治療、手術などが必要になることがあります。

出血は生検後すぐに分かることもありますが、時間が経ってからわかることもあります。検査後しばらくたってから再び超音波検査などを用いて調べることがあります。

■血尿

腎臓は尿をつくる臓器です。このため腎臓に針を刺した影響で血が尿に交ざると血尿が現れることがあります。薄い色の血尿ならば問題はありません。尿を自分で観察することは容易なので検査後しばらくは尿を観察してみてください。もし濃い尿が続くのであるならば検査した医療機関に相談する必要があるかもしれません。

退院前にはどの程度の血尿であれば受診が必要かをはっきりさせておくことも大事です。

■感染

腎生検を行う過程で細菌が体の中に入り込むことがあります。腎生検の前には様々な予防策をとっていますがまれに感染が起こることがあります。感染が起こると発熱などの症状が現れます。発熱は出血することでも起きますが細菌による感染が原因と考えられる場合は抗菌薬を用いて治療をします。

アレルギー

腎生検ではいくつかの薬を使います。

使用する薬は鎮痛に用いる麻酔薬などです。薬に対するアレルギーは一人ひとりで違います。アレルギーには蕁麻疹じんましん)が出るだけの軽度なものから、アナフィラキシーショックといって、血圧が下がったり、呼吸ができなくなる重症なものまで様々です。使用したことがない薬剤に対するアレルギーの予測は困難ですが、これまで歯科の麻酔などでアレルギーが起こったことがある場合には、医師や看護師に伝えてください。