あいじーえーじんしょう
IgA腎症
腎臓の糸球体という部分に炎症が起きることで腎機能が下がってしまう。IgAというタンパクが糸球体に付着して炎症を起こすことが原因
16人の医師がチェック 68回の改訂 最終更新: 2018.08.08

IgA腎症はどんな病気?症状・診断・治療・経過の解説

IgA腎症は、尿検査などで見つかることがある腎臓の病気です。IgA腎症の人は腎臓の機能への影響が小さい人もいれば、時間の経過とともに腎臓の機能が失われる人もいます。IgA腎症の症状や診断、治療などについて解説します。

1. 尿検査でみつかるIgA腎症とはどんな病気か?

IgA腎症(アイジーエーじんしょう)は尿検査でのタンパク尿血尿の指摘から見つかることの多い病気です。聞き慣れないIgA腎症ですがどのような病気なのでしょうか。

IgA腎症は腎臓の糸球体という場所にIgAというタンパクが沈着して炎症が起こる病気です。IgA腎症は長年のうちに腎臓の機能が低下して透析治療が必要な状態に至ることもある油断のならない病気です。

参照:IgA腎症ガイドライン2014、腎臓内科 診療マニュアル

IgA腎症を発症している人はどれくらいいるのか?

日本でIgA腎症を持って生活している人は33,000人程度と推定されています。

男女差はある?

IgA腎症の発症に男女差は明らかではありません。

何歳くらいで発症するのか?

IgA腎症を発症しやすい年齢のピークは2つあります。最初のピークは10-14歳で第2のピークは40歳前後です。比較的若い人に多い病気ですがあらゆる年齢で発症することがあります。

2. IgA腎症の症状:血尿・タンパク尿など

IgA腎症の主な症状は血尿とタンパク尿です。全ての人に血尿やタンパク尿が現れるわけではなく片方のみの症状であったり、どちらも現れないこともあります。

もともとIgA腎症がある人が上気道感染(いわゆる風邪)にかかるとIgA腎症が一時的に悪化して血尿がでることがあります。

3. IgA腎症の原因

IgA腎症はどのようにして発症するのでしょうか。

IgAは免疫グロブリンと呼ばれる物質の一つです。免疫グロブリンはIgAの他にIgGとIgM、IgD、IgEの4種類があります。

IgAは気管や気管支、腸などの粘膜に侵入してきたウイルス細菌などから体を守る働きをしています。IgA腎症は、IgAが何らかの異常により腎臓の糸球体という場所について(沈着して)糸球体に炎症を起こして腎臓に障害を与える病気です。なぜIgA腎症が起きるかは未だにはっきりとしていません。

4. IgA腎症の診断に用いる検査

IgA腎症の診断に必要な検査は以下のものになります。いくつかの検査を用いてIgA腎症かどうかの診断をします。

  • 尿検査 
  • 血液検査  
  • 腎生検
  • 病理検査
  • 腹部超音波検査

IgA腎症は発症しても腎臓の機能がほとんど低下しない人もいれば数年で腎不全に至り透析治療が必要になる人もいます。IgA腎症の人の中でも病気の進行に大きな差があります。このためどのような経過をたどるかを検査によって予測することが大事です。

IgA腎症の人の経過を予測するにはタンパク尿の量と発症時の腎臓の機能、腎臓の組織の病理検査が決め手になります。

タンパク尿の量は尿検査により推定します。

腎臓の機能は血液検査をもとにして判断します。血液検査項目の中でもクレアチニンやeGFRという項目が重要です。IgA腎症の名の由来でもあるIgAも血液検査で知ることができます。IgA腎症の人でもIgAが基準値を超える人は半数にすぎません。またIgA値は病気の進行や重症度を反映しないことも憶えておいてください。

IgA腎症の原因は、IgAというタンパクが腎臓の糸球体に沈着して炎症を起こすことです。IgAの沈着の具合や糸球体の状態を観察することが病気の勢いや進行状況を知るのに有効です。炎症が起きている腎臓の状態を観察するには腎臓に直接針を刺して腎臓の組織を取り出します。これを腎生検といいます。腎生検で取り出した組織を顕微鏡で観察する検査を病理検査といいます。

IgA腎症は血尿などを契機に発見されることもあります。血尿の原因は腎臓以外にも膀胱や尿管などの病気でも現れる症状です。このためIgA腎症と他の病気を区別するために腹部超音波検査などを用いて腎臓や膀胱などを観察します。

5. IgA腎症の治療

IgA腎症の人には無治療で様子をみても問題がない人と積極的な治療が必要な人がいます。IgA腎症の治療の目的や治療法について解説します。

IgA腎症の治療の目的

IgA腎症は症状がないことが多く、なんのために治療が必要かと疑問に思うことがあるかもしれません。IgA腎症の目的の一つは治療によって腎臓の機能を生涯に渡り保つことです。

IgA腎症と診断された場合、全ての人が同じ治療を受けるわけではありません。IgA腎症の人の中には治療をしなくてもよい人から積極的な治療が必要な人まで様々です。ではどのようにして治療法を選んでいけばいいのでしょうか。

IgA腎症の予後分類

治療法を決めるにあたりいくつかの目安がありますがここではIgA腎症治療指針による予後分類を紹介します。予後とは病気の経過と結果の見通しです。

IgA腎症の予後分類は、以下の項目を用いて決めます。

  1. 尿蛋白の量:1日あたりの尿蛋白の量 
  2. 腎臓の機能:eGFR 
  3. 腎生検の結果:4段階で評価

4つのグループに割り振る方法はかなり複雑なのでここでは割愛します。大切なのは分けられた後の4つのリスク分類の意味です。

  • 低リスク
    • 透析療法に至る可能性が少ない人 
  • 中等リスク
    • 透析療法に至る可能性が中程度ある人
  • 高リスク
    • 透析療法に至る可能性が大きい人
  • 超高リスク
    • 5年以内に透析療法に移行する可能性がある人

リスク分類と一人ひとりの体の状態を踏まえて治療法が選択されます。

IgA腎症の治療について

IgA腎症の治療には4つ大事なことがあります。生活改善と食事療法、薬物療法、手術です。リスク分類ごとに治療の内容が異なり、一人ひとりの状態に合わせて調整が行われます。

【生活改善】

生活改善は禁煙と適正な飲酒量を守ること、適正体重を保つなどが大切です。喫煙や過度な飲酒、肥満は腎臓に負担がかかり腎臓の機能が低下する原因になるからです。

【食事療法】

食事では食塩とタンパク質の摂取量を制限した方がよい場合があります。リスク分類に加えて高血圧やタンパク尿の程度などが制限が必要かどうかの参考になります。最も軽症な低リスク分類の人でも過剰な塩分やタンパク質の摂取は避けるべきとされています。

【薬物療法】

薬物療法の目的は、腎臓の機能を守ることと腎臓の炎症を抑えることになります。

腎臓の機能を守る薬としては血圧を下げる薬(降圧薬)や血液を固まりにくくする薬(抗血小板薬など)などが中心として用いられます。

腎臓の炎症を抑える薬は「ステロイド」という薬が中心になります。IgA腎症では腎臓の糸球体という場所に炎症が起きています。炎症が強いと糸球体が破壊されて腎臓の機能が低下します。炎症が強い場合はステロイド薬を用いて抑えます。

一方で炎症がごく軽い場合もあります。リスク分類で低リスクに分類されるような人です。炎症がごく軽い場合にはステロイド薬を用いなくてもよいことがあります。

【手術】

IgA腎症に効果のある手術は扁桃腺の摘出です。扁桃腺は舌の根本の両脇にある臓器です。

IgA腎症では扁桃腺で過剰に作られたIgA複合体という物質が血流に乗り腎臓にたどり着いて炎症を起こすという説があります。腎臓に悪影響を及ぼすIgA複合体の元を絶つことで治療効果を得ようというのが扁桃腺の摘出を行う理由です。

扁桃腺の摘出とステロイド薬の大量投与(ステロイドパルス)を併用する治療法もあります。

6. IgA腎症の人が日常生活で注意する点

IgA腎症の人は薬物による治療とともに腎臓の機能を保つために日常生活でもいくつか注意する点があります。

  • 全てのIgA腎症の人が注意すること
    • 禁煙
    • 適正な飲酒量
    • 体重の管理
    • 適正カロリー(エネルギー)の摂取
  • IgA腎症のリスクに応じて制限すること
    • 食事内容
      • 塩分の量
      • タンパク質の量
    • 運動

IgA腎症と診断された全ての人は禁煙や適正な飲酒量を守る、体重の管理をすることが望まれます。喫煙や過度な飲酒、肥満は腎臓の機能を低下させる可能性があります。IgA腎症の治療目的は長期に渡って腎臓の機能を維持することです。腎臓の機能を損なう危険性はなるべく避けるべきだと考えられます。

IgA腎症の人は同じ病気でもその後の経過が一人ひとりで大きく異なることが知られています。リスク分類はたどるであろう経過について大まかに4つのグループに分けたものになります。リスク分類や血圧、腎臓の機能、タンパク尿の程度などをもとにして食事の内容や運動を制限することがあります。

詳細は「IgA腎症の日常生活の注意点・難病の申請手続きなど」と「IgA腎症の治療:薬物療法、扁桃腺摘出など」も参考にしてください。

7. IgA腎症の腎機能の経過

IgA腎症の人で治療をしないで観察したときの腎臓の機能(腎機能)の経過について説明します。

世界各国で行われたいくつかの調査によると、10年間の経過観察で腎機能が保たれて透析治療が必要ではなかった人の割合(腎生存率)は80-85%でした。日本での報告でも10年腎生存率は85%でした。さらに観察期間を伸ばすと20年腎生存率は約60%程度とされています。

これらの統計の数値はあくまでも過去の治療実績にもとづくものです。現在の治療の結果はまだ知ることができません。医学は日進月歩で進んでいるので過去の実績に比べて治療成績が向上していることも十分にありえます。

参照:Semin Nephrol.2004;24:179-96、腎臓内科 診療マニュアル

8. IgA腎症は難病なのか

IgA腎症は厚生労働省が定める指定難病です。指定難病は原因が十分にわかっていない病気や治療法が確立されていない病気のことです。指定難病の人は定められた重症度を超える場合に医療費の助成を受けることができます。

指定難病の申請の方法などは「IgA腎症の日常生活の注意点・難病申請手続きなど」を参考にしてください。

助成される内容

医療費の助成が適用されるのは難病の治療にかかった費用のみです。以下は例になります。

  • 指定医療機関で難病の治療に要した窓口の自己負担金 
  • 保険調剤の自己負担額 
  • 訪問看護ステーションや介護保険の医療サービスを利用したときの利用者負担額 

医療費が助成されるかはっきりしないときもあると思います。そのときには担当する部署に前もって助成されるかどうかを尋ねておくとよいでしょう。

自己負担額

自己負担額額の限度額は世帯の市町村住民税により限度額が決まっています。詳細な限度額は市町村に問い合わせるまたは難病情報センターのウェブサイトなども参考にしてください。

申請から交付までの時間

医療費助成を申請してから交付までには約3ヵ月程度かかります。審査に時間がかかった場合はさらに延びることがあります。申請から交付までの期間にかかった医療費は払い戻しを受けることが可能です。

認定の有効期限

医療費助成の認定には有効期限があり、申請した日から原則1年となっています。その後も治療の継続が必要な場合には更新の手続きが必要になります。

参照:難病情報センター