腎臓の悪化を防げるか?IgA腎症に対するステロイドの効果
IgA(アイジーエー)腎症は長年のうちに腎臓の機能を悪化させ、透析などが必要になることもあります。治療としてステロイド薬の効果を調べた試験から、打ち切りのため結論が出せないという結果が報告されました。
IgA腎症に対するメチルプレドニゾロンの効果と安全性
多国籍の研究班が、IgA腎症の患者に対して、
この試験は、IgA腎症がある患者(3か月以上のレニン-アンジオテンシン系阻害薬治療のあと
対象者はランダムに2グループに分けられました。
- メチルプレドニゾロン(1日あたり0.6-0.8mg/kg、最大48mg)を飲むグループ
- 偽薬を飲むグループ
メチルプレドニゾロンは体重に応じた用量を2か月間飲み、その後4か月から6か月かけて徐々に減らし終了することとされました。
効果判定のため、以下のいずれかひとつ以上に当てはまる悪化があった人の数を比較することと決められました。
- eGFR(
腎機能 の指標)が40%以上減少した 透析 や腎移植が必要な末期腎不全になった- 腎臓の病気により死亡した
感染症による死亡などで打ち切り
計画された参加者数が集まる前に、メチルプレドニゾロンを使用したグループのほうが深刻な有害事象(副作用やその他の原因による悪い出来事)が多く現れたため、新たな参加者の募集は打ち切られました。それまでに262人が参加していました。
データを解析した時点で、参加してからの期間は5.7か月から45.3か月でした。226人はすでにメチルプレドニゾロンの使用を終えていました。
深刻な有害事象はメチルプレドニゾロンのグループで20人(14.7%)、偽薬のグループで4人(3.2%)に発生しました。うち重症の
悪化(eGFRが40%減少、末期腎不全、腎臓の病気による死亡)があった人はメチルプレドニゾロンのグループで8人(5.9%)、偽薬のグループで20人(15.9%)であり、メチルプレドニゾロンのグループのほうが悪化が少ない結果でした。
うち、腎臓の病気により死亡した人はいませんでした。末期腎不全になった人はメチルプレドニゾロンのグループで4人、偽薬のグループで10人でした。
研究班は「腎臓に利益がある可能性があると見て矛盾のない結果だったが、試験が打ち切られたため、治療の利益について決定的な結論は出せない」と述べています。
IgA腎症にメチルプレドニゾロンは有効か?
IgA腎症に対するメチルプレドニゾロンの研究を紹介しました。
一般に、メチルプレドニゾロンやその他の
この報告が掲載された『JAMA』の同じ号にある編集部記事は、この試験などから出されている安全性情報を視野に入れれば、「既存のIgA腎症の治療
IgA腎症の最適な治療法については現在でもこうした議論が続いています。
執筆者
Effect of Oral Methylprednisolone on Clinical Outcomes in Patients With IgA Nephropathy: The TESTING Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2017 Aug 1.
[PMID: 28763548]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。