2015.08.25 | ニュース

尿にタンパクが出るIgA腎症の治療、効いた薬はどれ?

メタアナリシスにより検証

from The Cochrane database of systematic reviews

尿にタンパクが出るIgA腎症の治療、効いた薬はどれ?の写真

IgA腎症は10代と40代に多く、蛋白尿などの症状を起こして、重症では透析が必要になるまで腎臓の機能を悪化させることがあります。代表的な治療薬の効果について、これまでの研究報告をもとに検証が行われました。

◆過去の研究を検証

IgA腎症は、血尿や蛋白尿以外に自覚症状がないまま、健康診断などで発見されることが多いと言われています。免疫の異常が原因に関わっているとされ、異常な免疫を抑えるステロイド薬、腎臓を守る作用があるレニン・アンジオテンシン系阻害薬(ACE阻害薬など)が治療薬としてよく使われます。ほかに食事療法や扁桃摘出手術が行われることもあります。

研究班は、IgA腎症の治療薬の効果を調べた過去の研究を集め、内容を詳しく調べたうえ、結果のデータを統合しました。

 

◆ステロイド、レニン・アンジオテンシン系阻害薬で効果あり

条件を満たした32件の研究のデータのうちで、ステロイド薬、レニン・アンジオテンシン系阻害薬の効果について以下のことがわかりました。

計1,781人の参加者を対象とする、32件の研究を採用した。

ステロイドは、無治療または偽薬に比べて、末期腎不全への進行(6件の研究、計341人の参加者について、リスク比0.44、95%信頼区間0.25-0.80)、血清クレアチニンの倍増(6件の研究、計341人の参加者について、リスク比0.45、95%信頼区間0.29-0.69)のリスクを減少させ、尿中タンパク質排出量を減少させ(6件の研究、計263人の参加者について、平均差-0.49g/24h、95%信頼区間-0.72から-0.25)、糸球体濾過量は維持させた(4件の研究、計138人の参加者について、平均差17.87ml/min/1.73m2、95%信頼区間4.93-30.82)。ステロイドをレニン・アンジオテンシン系阻害薬と組み合わせることで、レニン・アンジオテンシン系阻害薬またはステロイド単独に比べて、末期腎不全への進行のリスクを減少させ(2件の研究、計160人の参加者について、リスク比0.16、95%信頼区間0.04-0.59)、尿中タンパク質排出量を減少させた(1件の研究、38人の参加者について、平均差-0.20g/24h、95%信頼区間-0.26から-0.14)。

ステロイド薬によって

  • 透析や腎臓移植が必要な末期腎不全を防ぐ
  • 腎機能の悪化を抑える
  • 蛋白尿の程度を抑える

という効果があると見られました。さらにステロイド薬とレニン・アンジオテンシン系阻害薬を併用したときに、ステロイド薬単独よりも

  • 透析や腎臓移植が必要な末期腎不全を防ぐ
  • 蛋白尿の程度を抑える

という効果が高いと見られました。

ほかの治療薬についても情報が得られましたが、研究班は結論として「副腎皮質ステロイド療法が腎臓病の進行のリスクと、透析または腎移植が必要になるリスクを減少させるかもしれないが、IgA腎症の最適な管理法は不確かなままである」とまとめています。

 

IgA腎症は若い人にも起こります。進行した場合、透析は患者にとってかなりの負担になります。ここで検討された薬物治療を含め、より早い段階で効果的に治療する方法が探られています。

 

【2017/10/23訂正】

題名および本文に「ネフローゼ症候群」の言及がありましたが、IgA腎症の経過としては典型的でないと考えたため削除しました。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Immunosuppressive agents for treating IgA nephropathy.

Cochrane Database Syst Rev. 2015 Aug 3 [Epub ahead of print]

[PMID: 26235292]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る