すいじんしょう、すいにょうかんしょう
水腎症、水尿管症
尿管が何らかの原因で詰まって尿がうまく流れなくなり、溜った尿の影響で尿管や腎臓(腎盂)が拡がった状態
11人の医師がチェック 93回の改訂 最終更新: 2022.02.07

水腎症とはどんな病気なのか

水腎症は尿の流れが悪くなり、腎盂尿管が広がってしまった状態です。このページでは水腎症の概要として、症状・原因・検査・治療について説明します。

1. 水腎症とは?

水腎症(英語名:hydronephrosis)は尿の流れが悪くなったために、腎盂や尿管が拡張した状態のことです。これだけではどのような状態かわかりにくいので、尿が作られる過程と尿の通り道、そして、水腎症がどのようにして起こるかを順に説明します。

尿が作られる過程とその通り道

尿は腎臓で作られます。腎臓は左右に1つずつ、身体の背中側にあり、血液から老廃物や余分な水分を濾し取って尿を作っています。腎臓で作られた尿は腎盂という場所に集まり、細い管状の尿管を通って、袋のような形をした膀胱に流れていきます。ある程度の量の尿が膀胱にたまると尿意を感じるようになります。排尿の準備が整って脳から排尿の指令が出されると、膀胱が縮み、尿は尿道を通って身体の外に放出されます。

尿路,腎臓,膀胱

水腎症はどのようにして起こるのか

先に説明した尿が流れる道筋を整理すると以下のようになります。

【尿が流れる道筋】
腎盂→尿管→膀胱→尿道

この道筋のどこかの流れが悪くなると、流れがせき止められて尿がたまり腎盂や尿管が拡張が起こります。このようにして水腎症ができます。尿の流れを妨げる原因は結石やがん、先天異常などさまざまです。原因についてはこの後の「水腎症の原因」で詳しく説明します。

2. 水腎症の症状について

ゆっくりと進行する水腎症では無症状のこともあります。一方で、急に進行する水腎症では「背中や腰の痛み」や「尿量の減少」といった症状が現れます。また、水腎症の影響で、腎盂腎炎という感染症を起こしたり腎臓がダメージを受けることがあります。

腎盂腎炎が起こったときの症状

腎盂腎炎では発熱や背部痛といった症状が現れます。重症化すると、敗血症という重い状態に陥ることがあるので、腎盂腎炎の治療はすみやかに始めなければなりません。水腎症を指摘されている人に発熱や背部痛が現れたときには、腎盂腎炎の可能性を念頭において受診を検討してください。

■腎臓の機能が低下したときの症状

また、水腎症によって腎臓がダメージを受けて機能が低下すると、身体のむくみや息苦しさといった症状が現れます。腎臓のダメージが重くなると命に危険が及ぶこともあるのですみやかに治療をしなければなりません。腎臓の機能の低下を示す症状が現れた時には受診をしてください。 症状についてさらに詳しい説明は「水腎症の症状」を参考にしてください。

3. 水腎症の原因について

水腎症とは尿の流れが滞ることによって起こりますが、その原因はさまざまです。

また、子どもと大人では水腎症の原因に違いがあります。子どもの水腎症は先天異常によって起こることが多い一方で、大人の水腎症は先に述べたようにがんや結石などが原因になることが多いです。

原因についてさらに詳しい説明は「水腎症の原因」を参考にしてください。

4. 水腎症の検査について

水腎症が疑われる人には、次のような診察や検査が行われ、原因やその程度が詳しく調べられます。

【水腎症の診察や検査】

  • 問診
  • 身体診察
  • 尿検査
  • 血液検査
  • 画像検査
    • 超音波検査
    • CT検査
    • MRI検査
  • 内視鏡検査

上に挙げた全ての検査が行われるわけではなく、必要と考えられる検査がこの中かから選ばれます。それぞれの検査についてさらに詳しい説明は「水腎症の検査」を参考にしてください。

5. 水腎症の治療について

繰り返しになりますが、尿は腎臓で作られて、腎盂、尿管、膀胱、尿道の順に流れていきます。この尿の道筋のどこかの流れが悪くなると、水腎症が発生します。尿の停滞を起こしている場所ごとに治療の方法が異なります。水腎症の治療法を尿管、膀胱、尿道の3つの場所に分けて説明をします。

尿管に水腎症の原因がある場合の治療

尿管は腎臓と膀胱をつなぐ細い管状の臓器です。中に結石や腫瘍ができると、管の中が狭くなったり閉塞したりするので、尿の流れがせき止められて水腎症が起こります。 尿管に水腎症の原因がある場合は尿管ステントか腎ろうによる治療が行われます。

尿管ステントはチューブ状の器具で、尿管に入れることで狭くなった尿管を中から広げて尿の通り道を作ることができます。

腎ろうは、尿管の上流にあたる腎盂に向かって背中から入れる管のことで、腎盂に過剰に溜まった尿を身体の外に出すことができます。尿管ステントも腎ろうも有効ですが、患者さんの身体の状況や尿管の狭さの程度から、どちらかの方法が選ばれます。

2つの治療の違いについては「水腎症の治療」を参考にしてください。

膀胱に水腎症の原因がある場合の治療

膀胱は尿を一時的にためておく袋状の臓器です。尿が膀胱にある程度溜まると、尿意を感じて排尿が行われます。排尿は膀胱が縮む(収縮する)ことによって起こります。膀胱がうまく縮まなくなると、膀胱から尿が流れにくくなります。行き場をなくした尿が膀胱に過剰に溜まると、膀胱の上流にあたる尿管や腎盂の流れを悪くして、水腎症が起こります。

水腎症の原因が膀胱にある場合は、尿の出口(尿道口)から膀胱に管を入れて、管ごしに尿を出すことで改善します。管を使った治療には、「しばらく管を入れたままにしておく方法」と「4時間から6時間ごとに管を入れる方法(間欠的自己導尿)」があります。自分で管を入れるには少し慣れが必要です。まずは管を入れたままにして、状態が落ち着いた後に間欠的自己導尿を習得することが多いです。

尿道に水腎症の原因がある場合の治療

膀胱から先の尿道が狭くなったり閉塞した場合も、水腎症の原因になります。狭くなる原因は尿道の腫瘍や、尿道を取り囲む前立腺の腫瘍(前立腺肥大症)などです。

尿道に原因がある場合は、尿の出口(尿道口)から膀胱まで管を挿入するのが難しいことがあり、その際にはお腹から膀胱に直接管を入れる穴をつくります。この管を入れるための穴を「膀胱ろう」といいます。

6. 水腎症について知っておきたいこと

ここまで、水腎症の概要について説明してきましたが、細かな注意点や疑問についてまだ知りたいことがあるかも知れません。「水腎症の人が気をつける生活の注意点」や「妊娠と水腎症の関係」、「水腎症を放置するとどうなるのか」といった内容については「こちらのページ」で説明してあるので、参考にしてください。

【参考文献】

・「標準泌尿器科学」(赤座英之/監 並木幹夫、堀江重郎/編)、医学書院、2014
・「泌尿器科診療ガイド」(勝岡洋治/編)、金芳堂、2011