水腎症について知っておきたいこと:日常生活の注意点とQ&A
水腎症と上手に付き合っていくために、毎日の生活で気をつけてほしいことがあります。ここでは日常生活の注意点に加えて、水腎症の人が抱きやすい疑問についても説明します。
1. 水腎症の人が日常生活で注意すること
水腎症があっても特に日常生活に支障はないこともありますが、腎臓の機能に低下したり、尿路に
水腎症の人が発熱したら尿路感染の可能性を考える
水腎症がある人は腎盂腎炎という感染症を起こしやすいです。腎盂腎炎は重症化することがあるので、すみやかな治療が必要です。発熱や腰背部痛など腎盂腎炎が疑わしい症状が現れた場合は、医療機関を受診してください。なお、腎盂腎炎の詳しい説明は「このページ」を参考にしてください。
腎臓の機能が低下している人が気をつけること
水腎症の人の中には腎臓の機能が低下している人がいます。一度低下した腎臓の機能を治療によって回復させることは難しいです。しかし、それ以上腎臓の機能が低下しないような工夫をすることで腎臓の機能を保つことができます。
具体的には、次のようなことに注意をしてください。
- 禁煙
- 食事療法
- 塩分の制限
- タンパク質の制限
- 適切なカロリーの摂取
禁煙や食事療法は腎臓の機能を保つことにつながると考えられています。とはいえ、禁煙も食事療法も自分1人で行うのは簡単ではありません。禁煙外来や管理栄養士への相談などを組み合わせると、上手に行えることがあるので、検討してみてください。
尿管ステントや腎ろうが入っている人が気をつけること
水腎症の治療で
なお、尿管ステントや腎ろうの詳細については「水腎症の治療」を参考にしてください。
■尿管ステントが入っている人が気をつけること
尿管ステントは細長い管の形をしたものです。狭くなった尿管にステントを入れると、尿管が広がり、ステントの中を通って尿が出てきます。尿管ステントは尿の流れをよくするのに有効です。しかし、入れてから時間が経つと、ステントの中が詰まって水腎症が再発してしまうことがあります。また、尿管ステントが入っている状態で、水腎症が再発すると、腎盂腎炎が起こりやすくなります。
水腎症の再発と腎盂腎炎を避けるためには、尿管ステントの詰まりに早く気づくことが重要です。そのためには、おおまかな1日の尿量や排尿回数、飲水量を記録しておくと良いです。飲水量はいつもと変わらないのに、尿量や排尿回数が減っている場合はステントに詰まりが起こっている可能性があります。加えて、背中や腰にかけての張りや痛みがあると尿管ステントの閉塞がより強く疑われるので、かかりつけの医療機関を受診してください。
■腎ろうが入っている人が気をつけること
腎ろうが入っている人には2つの注意点があります。
1つ目は腎ろうに詰まりがないかを確認することです。尿管ステントとは違い、腎ろうでは管を通って出てきた尿は袋に集められます。溜まった尿の量を調べることで、腎ろうに詰まりがないかどうかを知ることができます。腎ろうが詰まっていると、尿管ステントと同様に、腎盂腎炎を起こしやすくなるので、早めに交換する必要があります。いつもと同じ量の飲食をしているのに尿量が減ってきたら、医療機関を受診してください。
2つ目は腎ろうが抜けてしまったときの対応です。腎ろうでは管が身体の外に出ているため、引っかかって抜けてしまうことがあります。腎ろうが抜けてしまった場合、穴が塞がってしまうのを避けるために、可能な範囲で管を穴に入れて、すぐにかかりつけの医療機関を受診してください。抜けてすぐに処置ができれば、簡単に腎ろうを入れ直すことが可能です。
2. 水腎症についてのQ&A
水腎症についてよくある質問についてまとめます。具体的には、「妊婦と水腎症との関係」や「治療薬の有無」、「放置をするとどうなるのか」といった内容です。
妊婦は水腎症になりやすいのか
妊婦は水腎症になりやすいと考えられています。赤ちゃんの成長とともに子宮が大きくなると、子宮の背中側にある尿管が圧迫を受けて尿の流れが悪くなることが原因です。
妊婦では水腎症が右側に起こりやすいと言われていますが、その理由などの詳しいことはわかってはいません。妊娠中に背中や腰の痛みが強い場合は水腎症を起こしている可能性があるので、かかりつけの産婦人科で相談してください。
水腎症に治療薬はあるのか
特殊な状況を除いて、水腎症は薬では治療できません。尿管の周りが
水腎症を放置するとどうなるのか
水腎症になると腎臓がダメージを受けます。ダメージは時間とともに大きくなるので、放置をすると腎臓の機能がほとんどなくなる事態も考えられます。腎臓の機能がなくなってしまう前に水腎症を治療し、できるだけ腎臓の機能を保てるようにしてください。
腎臓の機能を保つには生活習慣の改善が効果的です。具体的には以下のものです。
- 禁煙
- 食事療法
- 塩分の制限
- タンパク質の制限
- 適切なカロリー摂取
禁煙や食事療法を実践するのは簡単ではありません。禁煙や食事療法をお医者さんから勧められた際には、禁煙外来や管理栄養士への相談などを取り入れると、上手に行うことができるので、検討してみてください。
【参考文献】
・「標準泌尿器科学」(赤座英之/監 並木幹夫、堀江重郎/編)、医学書院、2014
・「泌尿器科診療ガイド」(勝岡洋治/編)、金芳堂、2011