すいじんしょう、すいにょうかんしょう
水腎症、水尿管症
尿管が何らかの原因で詰まって尿がうまく流れなくなり、尿管や腎臓に尿が溜まり拡がった状態
11人の医師がチェック 91回の改訂 最終更新: 2019.01.30

水腎症の治療について:尿管ステント・腎ろう・尿道カテーテル・手術など

水腎症はそのままにしておくと腎臓の機能が低下していくので、治療が必要です。水腎症は尿の流れが悪くなって起こりますが、尿の流れが悪くなる場所はいくつかあり、それぞれで治療法が異なります。ここでは水腎症の原因になる場所とそれぞれの治療について説明します。

1. 水腎症の原因になる場所と治療について

水腎症は尿の流れが悪くなることで起こるので、尿の流れを良くする治療を行います。尿の流れが滞る場所はいくつかあり、場所によって治療法が異なります。

まず、尿の流れについて簡単に整理します。

尿路

腎臓で作られた尿はその後、「ろうと」のような形をした腎盂という場所に集まり、尿管という細い管を通って膀胱に流れます。膀胱にある程度の尿が溜められると、尿道を通って尿が身体の外に出されます。尿の流れが滞りやすいのは、腎臓と膀胱の間をつなぐ「尿管」と尿が溜められる「膀胱」、膀胱から身体の外に出ていくときに通る「尿道」の3箇所です。

水腎症の原因が尿管にある場合の治療:尿管ステント・腎ろう・手術

水腎症の原因が尿管にある場合、主な治療の方法は次の3つです。

  • 尿管ステント
  • 腎ろう
  • 手術

尿の流れを良くするという目的は共通していますが、内容は全く異なるものです。それぞれの方法について説明していきます。

尿管ステント,腎ろう,尿道カテーテル

■尿管ステント

ステントとは体内に入れる細長いチューブです。ステントを入れると、狭くなった尿管が広がって尿の流れが良くなります。尿管ステントは膀胱鏡という内視鏡の一種を使って挿入します。具体的には尿道口(尿が出る所)から膀胱鏡を挿入して、尿管口(膀胱と尿管がつながっている所)にたどり着いたら、そこから尿管ステントを入れます。尿管ステントは30cmほどの長さがありますが、身体の中に収めておくことができるので、身体の外からみて尿管ステントが入っていることはわかりません。また、入れた後には背中の張りや排尿時の違和感がありますが、日常生活への支障は比較的少ないです。

尿管が狭くなる原因となっている病気を治療した後は、ステントを抜いても問題ありません。しかし、治療後でも尿管が十分に広がりきらない人は1ヶ月から6ヶ月間隔で定期的にステントを交換しなければなりません。

尿管ステントが挿入されている人に注意して欲しいことがいくつかあるので、「水腎症について知っておきたいこと」を参考にしてください。

■腎ろう

背中から腎盂に管を入れる方法です。まず、イメージした絵をみてください。

腎ろう

腎ろうでは皮膚を大きく切らずとも管を入れることができます。具体的には、超音波検査で腎臓を見ながら、背中から太い針を刺して、管を挿入します。尿管ステントとは違って身体の外に管が出ているので、体外に尿を溜めておく袋をつけておき、溜まった尿は自分で処理する必要があります。また、管や袋が皮膚にあたって痛みがあったり、就寝中は寝返りをうつたびに気になったりすることがあります。

見た目にも排泄にもほとんど影響しない尿路ステントに比べると、腎ろうの日常生活への影響は大きいです。しかし、尿管ステントより太い管を入れることができるので、管が詰まる恐れが少なく、確実に尿を身体の外に出せる点が腎ろうのメリットです。

■手術

腎盂尿管移行部狭窄症や下大静脈後尿管など、尿管のつくりにもともと異常がある病気が原因で水腎症になっている人には手術を行うことが多いです。病気に応じて手術の方法は異なるので、詳しい内容はここでは割愛しますが、狭くなった尿管を切り取ってつなげなおしたり、尿管と膀胱のつなぎ目を正常に近い形にしたりします。

水腎症の原因が膀胱にある場合の治療:尿道カテーテル

神経因性膀胱という病気が原因で、水腎症が起こることがあります。

膀胱は袋状の臓器で、中にある程度尿がたまると、尿が溜まったことを脳が感知して、尿意を覚えます。ところが神経因性膀胱では膀胱に尿が溜まったのを感じにくくなり、重症の場合はまったく尿意を感じなくなります。尿意を感じないため、膀胱には容量をオーバーした尿が溜まって、尿の渋滞が起こってしまいます。また、神経因性膀胱では尿を押し出す力も弱っていることが多いので、膀胱に尿が溜まりがちになります。

膀胱で尿が渋滞すると、膀胱の上流である尿管や腎盂でも渋滞が起こって、尿管や腎盂が拡張して水腎症の状態になります。こうした、膀胱での尿の渋滞が原因の水腎症では膀胱に管を入れて尿を排出します。具体的には、尿道口から膀胱に向かって尿道カテーテルという管を入れます。尿道カテーテルは最初は入れたままにしておきます。水腎症が改善して状態が落ち着いた後は入れっぱなしにするのではなく、排尿のたびに尿道カテーテルを挿入する方法(間歇的自己導尿)を練習し、4時間から6時間ごとに自分で管を入れて排尿をします。

水腎症の原因が尿道にある場合の治療:膀胱ろう

尿道に腫瘍が出来たり、尿道を囲う前立腺が腫瘍や炎症によって大きくなると、尿道が狭くなって水腎症が起こることがあります。膀胱に原因がある場合と違って、尿道が狭くなっている場合は、管を尿道口(尿の出口)から入れることが難しいです。尿道から管を入れられない場合は、お腹から膀胱に直接管を入れて膀胱に溜まった尿を体の外に出します。具体的には、腎ろうと同じく超音波検査をしながら、膀胱に向かって太い針を刺して、管を挿入します。

2. 水腎症の治療ガイドラインはあるのか

水腎症だけに特化した治療ガイドラインはありません。しかし、特定の原因に絞るとガイドラインが2つあります。ガイドラインが作成されている病気はいずれも子どもに多く見つかる病気です。

1つは腎盂尿管移行部狭窄症という病気です。腎盂尿管移行部狭窄症は腎盂と尿管のつなぎ目のことで、先天的に狭窄しやすいことが知られています。近年、超音波検査が普及しているので、赤ちゃんがお腹の中にいるうちに見つかることは珍しくはありません。腎盂尿管移行部狭窄症の治療では、手術によって狭くなった尿管を切り取って、正常な太さの部分をつなぎ合わせます。ガイドラインはこちらを参考にしてください。

もう1つの病気は膀胱尿管逆流症です。正常な場合、腎臓で作られた尿は膀胱に到達した後はほとんど尿管に逆流しません。しかし、腎臓と尿管のつなぎ目に異常があるため、尿が逆流して尿管の中に尿が過剰にある状態になり、水腎症が起こります。膀胱尿管逆流症がある人は泌尿器科または形成外科、小児科が協力して診療が行われます。ガイドラインは「こちらのページ」を参考にしてください。

2つのガイドラインについて説明しました。他の病気を原因とする水腎症には今のところ診療ガイドラインがありません。患者さんや水腎症の状態をみて、最も成功率が高い治療法が選ばれます。