きゅうせいいえん・きゅうせいいねんまくびょうへん(えーじーえむえる)
急性胃炎・急性胃粘膜病変 (AGML)
胃の粘膜のびらんや潰瘍が原因で、急激な腹痛・吐血・下血を起こす状態。多くは薬剤性、アルコールやストレスなどで起こる
8人の医師がチェック 122回の改訂 最終更新: 2020.09.07

急性胃炎・急性胃粘膜病変(AGML)の原因とは

AGMLの原因にはストレスやNSAIDsなどがあります。ヘリコバクター・ピロリ菌などの感染症が原因となることもありますが、AGMLが人から人へ感染することはありません。

1. AGMLの原因は何か

胃は強力な酸である胃酸を分泌する臓器ですが、自らを消化してしまわないように胃粘膜を保護する働きが備わっています。この胃酸(攻撃因子)と胃粘膜保護(防御因子)のバランスが崩れると胃酸によって胃粘膜に傷がついてしまいます。

AGMLの原因には、攻撃因子を過剰に強めてしまうものや防御因子の働きを弱めてしまうものが含まれます。具体的には以下のようなものがあります。

  • ストレス
  • 薬剤
  • アルコール
  • 食事
  • 感染症
  • 医療行為
  • 全身疾患

AGMLの人のうち原因が明らかになるのは40-60%程度と言われており、約半数の人では原因がはっきりしないことがあります。それぞれの原因について解説します。

2. ストレス

ストレスはAGMLの原因のうち約15-35%を占めると言われています。

ストレスには精神的ストレスと肉体的ストレスがあり、いずれもAGMLの原因となります。人間はストレスがかかると自律神経交感神経副交感神経)のバランスが崩れ、身体のさまざまな部分に影響が出るようになります。なかでも胃腸は自律神経障害の影響を受けやすい臓器と言われています。

ストレスによって交感神経の働きが強まると胃粘膜の血管の収縮が起こります。血管が収縮すると血液の流れが悪くなり、胃粘膜が傷つきやすくなったり、できた傷が治りにくくなったりします(防御因子の障害)。逆に副交感神経の働きが強まると胃酸分泌を促進するホルモンが多く作られ、胃酸が過剰な状態になります(攻撃因子の増強)。

3. 薬剤

薬剤はAGMLの原因のうち約15-35%を占めると言われています。

AGMLを起こす薬剤で代表的なのは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)です。NSAIDsはシクロオキシゲナーゼという酵素を阻害する働きがあり、その結果としてプロスタグランジンという胃粘膜を保護する作用のある物質が作られなくなります。つまり、胃の防御因子が少なくなることで胃粘膜が傷つきやすくなるのです。NSAIDsは胃潰瘍の原因としても有名です。代表的なNSAIDsにはロキソニン®などがあります。

NSAIDs以外にも、副腎皮質ホルモン抗菌薬、抗悪性腫瘍薬(抗がん剤)、経口糖尿病薬などがAGMLの原因になると言われています。

4. アルコール・食事

アルコールは胃粘膜を直接傷つけます。また、胃の動きが悪くなるので胃内容物が停滞し、その結果アルコールと胃粘膜の接触時間が長くなり胃粘膜障害を悪化させます。アルコールの摂取量が多い場合や、空腹のまま度数の高い酒を飲むなど胃内のアルコール濃度が高くなる場合に、AGMLが起こりやすいと言われています。

食事では、にんにく、辛味の強い食品、食物アレルギーの原因食品などを摂取したときに胃粘膜の障害が起こることがあります。

5. 感染症

AGMLを起こす感染症として有名なのはヘリコバクター・ピロリ菌です。ピロリ菌萎縮性胃炎胃潰瘍胃がんの原因になることが知られている細菌です。詳しくはヘリコバクター・ピロリ感染症のページも参考にしてください。

サイトメガロウイルスなどのウイルス感染症もAGMLの原因となります。また、寄生虫感染の一種であるアニサキス症はイカやサバの生食で発生し、胃粘膜病変を引き起こします。

6. 医療行為

検査や治療、手術などの医療行為によってAGMLが発生することがあります。

肝細胞がんに対する肝動脈塞栓療法では、肝動脈をつめるための塞栓物質が胃に向かう動脈に入ってしまうことがあり、胃粘膜の血流が悪くなることでAGMLが起こります。

食道静脈瘤では出血予防や止血治療として食道静脈瘤硬化療法が行われます。内視鏡を使って静脈瘤に針を刺し、接着剤のような塞栓物質を静脈瘤の中に注入する治療ですが、塞栓物質が広い範囲に広がりすぎると胃の血流が悪くなり粘膜障害が起こります。

7. 全身性疾患

肝硬変や慢性腎不全では胃粘膜の血流障害が起こりやすく、また傷の治りが悪いことからAGMLが起こりやすいと言われています。

また、外傷(大けが)や熱傷(大やけど)の人では自律神経を介したストレス反応によって胃粘膜障害が起こりやすいことが知られています。

参考文献

・小俣政男, 千葉勉/監修, 「専門医のための消化器病学第2版」, 医学書院, 2013
・Jensen PJ, Feldman M, Acute hemorrhagic erosive gastropathy and reactive gastropathy. UpToDate (2020.5.2最終更新)
・Feldman M, Jensen PJ, Gastritis: Etiology and diagnosis. UpToDate(2020.5.2最終更新)
・gastropedia:急性胃粘膜病変(2020.7.31閲覧)