きゅうせいいえん・きゅうせいいねんまくびょうへん(えーじーえむえる)
急性胃炎・急性胃粘膜病変 (AGML)
胃の粘膜のびらんや潰瘍が原因で、急激な腹痛・吐血・下血を起こす状態。多くは薬剤性、アルコールやストレスなどで起こる
8人の医師がチェック 122回の改訂 最終更新: 2020.09.07

急性胃炎・急性胃粘膜病変(AGML)で行われる検査とは

AGMLの検査ではまず問診と身体診察を行い、AGMLに特徴的な原因や症状がないかを調べます。画像検査では上部消化管内視鏡検査胃カメラ)が最も重要で、胃や十二指腸にびらん潰瘍、出血がないかどうかを調べます。また、腹痛を引き起こす他の病気が隠れていないかを調べるために腹部超音波検査CT検査などの画像検査を行う場合もあります。

1. 問診

問診では受診のきっかけになった症状を中心に、これまでにかかった病気や普段から飲んでいる薬の内容などについて詳しく聞かれます。

症状について

どのような症状がいつから起こったかを質問されます。痛みについては以下のようなポイントについて聞かれることが多いです。

  • いつから症状が始まったか
  • 痛みの場所はどこか
  • 痛みの強さはどのくらいか
  • どのような痛みか(キリキリ痛む、ずーんと重い痛み、など自分の言葉で表現してください)
  • ずっと同じくらいの痛みが続いているか、痛みに波があるか
  • 食事によって痛みが悪くなるか
  • 痛みを和らげる姿勢があるか

症状の特徴や経過はとても大切な情報なので、できるだけ詳しく伝えるようにしてみてください。

これまでにかかった病気について(既往歴)

今までに経験した病気について、何歳のころにどのような病気にかかったか、どのような治療を行ったかを質問されます。特に胃炎や胃・十二指腸潰瘍の経験がある人は、それらが再発している可能性もありますのでお医者さんに伝えるようにしてください。

普段から飲んでいる薬について

内服薬がAGMLの原因になることがあるため、飲んでいる薬の内容について詳しく質問されます。お薬手帳など薬の名前がわかるものを持って診察にのぞむと情報が伝えやすくなります。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)副腎皮質ホルモン抗菌薬、抗悪性腫瘍薬(抗がん剤)、経口糖尿病薬などがAGMLの原因になると言われています。

飲酒や喫煙について

飲酒量が多い人やアルコール度数の高いお酒を飲む人は、アルコールがAGMLの原因となることがあります。普段から飲んでいるお酒の種類、量、週に何日飲酒するかなどを質問されます。

また喫煙は胃潰瘍などの原因になることがあるため、一日の喫煙量やこれまでの喫煙期間などについて聞かれます。

2. 身体診察

身体診察では腹部を中心とした聴診・打診・触診を行います。

痛みがある場所を中心に、手で押さえた時に痛みが強くなるか(圧痛)、押さえた手を離したときに痛みが強くなるか(反跳痛)、手で押さえたときにおなかの筋肉が緊張するか(筋性防御)、押さえたときに痛みが他の場所に広がるか(放散痛)などをチェックします。

3. 画像検査

画像検査では上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)で胃粘膜の状態を調べます。胃や十二指腸にAGMLに特徴的なサインが見られた場合にはAGMLと確定診断することができるので、とても重要な検査です。またAGML以外の病気が隠れていないかを調べるために、腹部超音波検査やCT検査などを行う場合もあります。

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)

先端にカメラのついた細い管(内視鏡)を口や鼻から挿入して、食道、胃、十二指腸の状態を観察する検査です。

AGMLでは胃に炎症があることを示す粘膜のむくみ浮腫)や赤み(発赤)が見られます。また炎症が強いと胃粘膜に浅い傷ができる「びらん」や、粘膜が深く削れる「胃潰瘍」が観察されます。AGMLでは発赤やびらん、潰瘍が入り混じって見られることが多く、これらは多発することが多いです。

びらんや潰瘍から出血が見られることがあり、胃内に赤色や黒色の血液がたまっていることもあります。内視鏡検査中も勢いよく出血が続いている場合には、血を止めるための道具や薬物を使った止血治療を併せて行います。

また、胃がんを疑うような病気が見られた場合には、細胞をつまみとって顕微鏡で観察する「病理検査」を行うことがあります。

腹部超音波検査

腹部超音波検査(腹部エコー検査)は超音波を使っておなかの表面から身体の中を観察する検査です。おなかにゼリーを塗り、超音波が出るプローブという機械をおなかに押し当てて検査を行います。肝臓や胆嚢、膵臓、腎臓、脾臓などの臓器を観察することができ、AGML以外に腹痛を起こすような病気が隠れていないかを調べることができます。

CT検査

CT検査は放射線を使って身体の断面像を作り、身体の内部の病気を調べるための画像検査です。おなかの中の臓器について細かく調べることができ、AGML以外に腹痛を起こすような病気が隠れていないかを調べることができます。おなかの臓器をさらに詳しく調べたい場合には、造影剤という薬を注射してから撮影を行う「造影CT検査」を行うことがあります。造影剤を使うとCT画像のコントラストがはっきりついて見えるようになり、より精密な診断が可能になります。(ただし、造影剤にアレルギーがある人、腎臓の機能が低下している人、喘息がある人などでは造影剤が使用できません。)

参考文献

・小俣政男, 千葉勉/監修, 「専門医のための消化器病学第2版」, 医学書院, 2013
・Jensen PJ, Feldman M, Acute hemorrhagic erosive gastropathy and reactive gastropathy. UpToDate (2020.5.2最終更新)
・Feldman M, Jensen PJ, Gastritis: Etiology and diagnosis. UpToDate(2020.5.2最終更新)
・gastropedia:急性胃粘膜病変(2020.7.31閲覧)